マンガでわかるブロックチェーン
第4回ブロックチェーンの活用例、トレーサビリティってなに?
2019年2月27日 06:30
[企画・原作:森 一弥]
[作画:佐倉 イサミ]
主人公・仲元サラが派遣会社を通じてやってきたのはブロックチェーンを主な事業とする会社。ITにも疎く、ブロックチェーンの「ぶ」の字も分からないサラは、果たしてこの会社で生き残れるのか!?話題のブロックチェーン技術を漫画で解説します。
なお、本記事はアステリア株式会社のオウンドメディア「in.LIVE」にて掲載されたものを再編集したものです。
「日本だとまだイメージつきにくい言葉だけどね。」
「ブロックチェーンで言うトークンは、『価値を持った』数字情報のことよ。だから必ずしもお金じゃなくてもいいの。さっき頼んだサラダが一つのトークンでもいいし、それぞれの原材料を一つのトークンとしてもいいわよね。」
「例えば、今私達が食べているサラダのきゅうり一本が1トークン?みたいな感じですか?」
「一本単位なのか、一箱単位なのかは設計次第だけど、だいたいそんな感じ。」
「わざわざ『トークン』と考えなきゃいけないのは理由があるんですか?」
「そうね、例えば農家さんがきゅうり一箱をレストランに納品すると、農家さんの手元からはきゅうりが一箱なくなるでしょ?」
「そうですね。」
「これまでのコンピューターシステムだと、それを情報として残そうと思うと、農家さんのきゅうりを一箱マイナスにして、レストランのきゅうりを一箱プラスする方法で表現していたの。」
「それだと問題があるんですか?」
「そうね。直接は関係していないふたつの数字を増やしたり減らしたりして表現しているでしょ? ふた手間かかっているわよね。なにか途中で不具合があると辻褄が合わなくなるし、辻褄が合うようにプログラムに気を使う必要もあるわね。」
「でも、ブロックチェーンで『トークン』を使って表現すると、農家さんからレストランに『送付』するって表現だけでOKになるわ。」
「なるほどー。つまり『トークン』を使って表現することで、やり取りの履歴が簡単で間違えにくくなるってことですね?」
「そう。あとはトークンを使うと、料理を食べた人がその料理を評価することもできるわね。」
「評価をトークンで?」
「分かりやすい例だと、星の数をトークンにしてしまうとか。」
「星5個なら5トークンね。」
「ああ、なるほど。でもわざわざトークンで評価する意味って…?」
「本当に注文して食べた人だけにお店がトークンを配って、そのトークンを使って評価するようにしてしまうことで、嘘の口コミを投稿したりする ”サクラ”みたいなのもある程度防げるわね。」
「そっかあ確かに!」
「じゃあ、ごちそうさまの気持ちもトークンで送れますか?」
「もちろん。直接メッセージを送ることもできるわよ。」
「え!?数字の情報以外も送れるってことですか?」
「あまり長文は送れないけど、簡単なメッセージなら送れるわ。採用するブロックチェーンにもよるけどね。アイデア次第でいろいろできるわ。ハッシュって知っている?」
「あ!ハッシュですね! 知ってます!どんなデータも同じ長さの文字になるやつですよね!(むふー)」
「あら。しっかり勉強しているのね! ハッシュを使って元のデータの証拠を残すとか、画像や動画のリンクを入れるとかすれば、いろんな使いみちができてくるはずよ。」
「ブロックチェーンって、仮想通貨とかお金を扱うものだって思ってましたけど、いろんなものを工夫して送り合ったり、情報として残しておくことができるんですねー!」
「そうね。こうしてトークンを使えば、生産者から消費者まで、ぐるっとトークンで経済が回るでしょ?そういうのを『トークンエコノミー』って言ったりもするのよ。」
「はえ〜っ トークンエコノミー…。」
「ブロックチェーンって小さな世界を作れちゃう感じがします〜〜〜。」
「トークンエコノミーはまだまだこれからなところもあるけれど、トレーサビリティは今回の農作物の流通に関すること以外でも色々な人やモノが行き交うところで使われる技術だし、ブロックチェーンの活躍が注目されているところでもあるわね。」
「とはいえ何事も自分で『体験』することが一番大切だと思うの。勉強ばかりでは何も身につかないわ! 今は美味しい料理を頂いちゃいましょ!」
「やったぁ!」
~帰り道にて~
「ふぅー…お腹いっぱいっ! トー君にもお土産包んでもらっちゃったしねっ!」
「ふむ。食べすぎじゃな。」
「でも、今日は楽しかったな。ブロックチェーンの仮想通貨以外の使いみちも教えてもらったし。」
「トークンを使ったトレーサビリティに、更に発展したトークンエコノミーじゃな。」
「なんかトー君がトークンって言っていると変な感じだね。。」
「お主以外にわしのことをトー君と呼ぶものも居ないがな。」
「そっか。でも今日のお話を聞いて、ブロックチェーンをいろんなところで使うと社会の仕組みが変わっていきそうな気もしたよ。」
「そうじゃな。未来を担っているテクノロジーの1つであることは間違いなかろう。」
「うん。もっと勉強していろいろ知りたいな!」
「ふむ。勉強もいいが、実践も大事じゃぞ。あの娘も言っておったろう。精進せよ。」
次回「———問おう、貴方が私のマスターか? 〜マスターとトランザクション」につづく!
今回の補習授業|ポイントと用語解説
漫画の原作者である、アステリア株式会社 ブロックチェーン推進室長の森が、今回のお話の概要や会話に登場したキーワードについて簡単に解説します!
- トレーサビリティ
流通の過程を追跡できるようにした仕組みのこと。薬などであれば特定のロット番号の製品に不具合があれば追跡する必要があるし、食品でも同様になにかの事故があった際には必要となる場合がある。また宅急便の追跡システムなど利便性の面からも求められる技術である。ブロックチェーンを利用することで運用、保守、コスト面での優位性があると考えられるため、ブロックチェーンの活用例として注目されている。 - トークン/デジタル・アセット
何らかの「価値」を表す数値情報。コインや仮想通貨もアセットの一種である。コンサートチケットのようなものや、株式のようなものもアセットとして表現される。利用することで手元からなくなる投票権といった権利を表現したもの、スタンプラリーのスタンプやゲームのレアカードなど受け取る価値を表すものなど、発想次第で使い方はいろいろ考えられる。 なお、どうやらしゃべる猫のことではないようだ。 - トークンエコノミー
現金化の必要がなく、トークンのやり取りで回る経済のこと。現在では完全なトークンエコノミーは難しいかもしれないが、今回のマンガのように生産者から消費者への一方通行ではなくフィードバックという形でトークンが返されることでトークンエコノミーの入り口くらいには立てているのではないだろうか。
企画・原作:森 一弥
アステリア(旧インフォテリア)株式会社 ブロックチェーン事業推進室 室長 ストラテジスト。2012年よりインフォテリア勤務。2017年3月までは主力製品「ASTERIA WARP」のシニアプロダクトマネージャーとしてデータ連携製品の普及に務め、特に新技術との連携に力を入れる。 2017年4月より新設されたブロックチェーン事業推進室にて実証実験やコンサルティングなどを実施。またブロックチェーン推進協会(BCCC)では技術応用部会を立ち上げ、技術者へブロックチェーンアプリケーションの作り方を啓蒙している。