5分でわかるブロックチェーン講座

第9回

マウントゴックス事件が収束へ向かう一方、DeFiエコシステムは拡大の一途を辿る

(Image: Shutterstock.com)

暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報にわかりやすく解説を加えてお届けします。

1.マウントゴックス事件が収束へ

2014年に経営破綻した暗号資産取引所マウントゴックス(Mt.Gox)が、流出したビットコインの補填に向けた最終段階に入っていることが明らかとなった。債権者は、資金の返還を暗号資産ないし法定通貨のいずれかで選択できるという。

暗号資産の場合、ビットコイン(BTC)に加えてビットコインキャッシュ(BCH)も付与される。なお、ハードフォークによって誕生したBCH以外の暗号資産に関しては、取引所によって売却される方針だ。

Mt.Goxは、2018年時点で既に顧客への補填額を確保している。当時は補填額を確保するために大量のBTCを一度に売却してしまった結果、価格の暴落を引き起こした。しかし、今回の件による新たな売却は発生しないという。

債権者は、保有していた金額の約25%のみを補填額として受け取る見込みだ。しかしながら、2014年当時よりBTCの価格は数倍にも上昇しているため、結果的に元の保有額よりも多くの資金を手にすることになる。

今回の補填は、3つの段階で実施されるという。1段階目は、Mt.Gox事件によって大量のBTCを失った人が対象となる(「大量」の定義は明確にされていない)。2段階目では、最大2000ドル相当のBTCを失った人が対象だ。そして3段階目で、少額を失った残りの人が対象にされる。

参照ソース

  • マウントゴックス、損失額償還で最終段階 ビットコインなど手配・一部の仮想通貨を売却へ
    [CoinPost]
  • Bitcoin exchange Mt. Gox’s latest update sets out plan ahead
    [Decrypt]

2.IOSCOがステーブルコインに関する考察レポートを公開

投資家保護を目的として、証券市場の透明性や公平性の維持及び発展に取り組んでいる証券監督者国際機構(IOSCO)が、ステーブルコインに関する考察レポートを公開した。IOSCOは、世界各国・地域の証券監督当局や証券取引所などによって構成されている国際機関であり、日本の金融庁や米国の証券取引委員会(SEC)も参加する。

具体的な名称こそ公表していないものの、Facebook主導のLibraや中国のDCEPなどの取り組みを意識してのものと考えられる。レポートでは、法定通貨担保型のステーブルコインを民間企業が発行する取り組みなどについて、法的な観点から考察された。

昨今、ブロックチェーンを基盤とするステーブルコインに取り組むプロジェクトが増え続けている。そのため、IOSCOに限らずSECなどの組織でも、ステーブルコインの法的な扱いについて議論されている状態だ。

IOSCOは、ステーブルコインに対する規制の整備は困難を極めるとした上で、ブロックチェーンによって分散性が高まるほど規制もより一層複雑になっていくと見解を示している。

参照ソース

  • ステーブルコインの規制問題 日本金融庁も参画する国際監督機構が考察レポート
    [CoinPost]
  • Global Stablecoin Initiatives Public Report
    [IOSCO]

3.暗号資産ウォレットとDeFiエコシステムが繋がる

今週(3月24日から3月30日までの1週間)も、暗号資産・ブロックチェーン業界の中心にあったのはDeFiだ。ここでは2つの新たな取り組みを紹介する。

大手暗号資産取引所を運営するCoinbaseは、Coinbase WalletにDeFiサービスを統合すると発表した。

これまでは、ウォレットユーザーはDeFiサービスを利用する際に、一度アプリから離れ外部へアクセスしなければならなかった。今回の統合により、ユーザーはアプリ内で完結して各種DeFiサービスを利用することができるようになる。例えば、Coinbase Walletから暗号資産を貸し出せたり、貸し出した際に発生する金利をその場で確認できたりといった具合だ。

なおCoinbaseは今回の取り組みに際して、「現状のDeFi市場は非常に不安定であり、多くのリスクを抱えている」と注意喚起している。

続いては、分散型取引所(DEX)Kyber Swapについてだ。シンガポールを拠点とするKyber Networkが提供するKyber Swapは、暗号資産ウォレットTorusとの統合を発表した。Torusの特徴は、Gmailアカウントを入力するだけイーサリアム(ETH)を送金することができる点だ。

これまでのKyber Swapでは、利用する際にETH用のウォレットを用意しなければならなかった。今回の統合により、GmailやSNSのアカウントでTorusのウォレットを作成し、そのままKyber Swapを利用することができるようになる。

ブロックチェーンが金融業界にもたらす革命は、既存の金融機関が金融「機能」として分散化される点にある。これがDeFiの最大の特徴であり、途上国に新たな金融アクセスを届けるだけにとどまらない。金融機関が機能として分散することで、より簡易的かつ汎用性の高い金融サービスが誕生することが予想できるだろう。

参照ソース

  • Coinbase WalletがDeFiアプリと連携したことを発表
    [あたらしい経済]
  • Coinbase Wallet to let users lend out crypto and track interest earned across multiple DeFi platforms
    [TheBlock]
  • KyberSwapが仮想通貨ウォレットと提携、SNSから利用可能
    [CoinPost]

編集部からのお知らせ: 仮想通貨 Watchが2020年3月末に休刊することに伴い、週間連載「5分で分かるブロックチェーン講座」は第10回(4月第1週掲載予定)より姉妹紙「INTERNET Watch」での掲載となります。引き続きよろしくお願いいたします。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。暗号資産・ブロックチェーン業界で活躍するライターの育成サービス「PoLライターコース」を運営中。世界中の著名プロジェクトとパートナーシップを締結し、海外動向のリサーチ事業も展開している。Twitter:@tomohiro_tagami / @PoL_techtec