イベントレポート

「スマートコントラクトでIoTデバイスを制御」ブロック生成1秒未満のジャスミーIoT基盤

ブロックチェーン上の個人情報の開示・開示取下等をユーザー自身で管理できる機能搭載

ジャスミーのIoTプラットフォームのイメージ図

 ジャスミー株式会社(以下、ジャスミー)は3月29日、記者発表会を開き同社が開発する「Jasmy IoTプラットフォーム」(以下、IoT基盤)の概要と、IoT基盤を活用する合弁会社「Jasmy Initiative」の発足について説明した。IoT基盤は、ブロックチェーン技術を活用し、IoT機器ネットワークのセキュリティ、マネジメント、エコシステムという3つの要素を利用各社へ提供する。IoTシステムの構築にかかるコストを削減することができるという。

 ジャスミー・取締役副社長CTOの吉田雅信氏が同社のIoT基盤について説明した。IoT基盤は、同社が提携するニュージーランドCentrality Limitedと共に開発した、独自のプライベート型ブロックチェーンを利用する。IoTに特化したコンセンサス(合意形成)アルゴリズムを採用しており、ブロックの生成間隔は1秒未満と極めて短い。ジャスミーはIoT基盤で提供するブロックチェーン網を総称して「Jasmy.NET」と命名している。

ジャスミー株式会社・取締役副社長CTOの吉田雅信氏

 Jasmy.NETへ接続したIoT機器の動作は、ブロックチェーン上のスマートコントラクトで制御するという。映像や音声などのメタデータはブロックチェーン外の分散ストレージで処理する。IoTデバイスおよび、IoTデバイスに接続するアプリはそれぞれJasmy.NETへP2P通信で接続され、セキュリティが保たれるという。

 デバイスのIoT基盤への接続には、同社が開発した4GLTE、Wi-Fiなど複数の接続規格に対応する4cm角の電子基板(シングルボードコンピュータ)または、スマートウォッチ型のウェアラブルデバイスを使用する。これらを取り付けるだけで、既存のデバイスもJasmy.NETに接続することができ、簡単にIoT化することが可能とのこと。

機器をIoT化するジャスミーシングルボードコンピュータとスマートウォッチの仕様

 また、NFCや顔認証の仕組みなどを用いて、Jasmy.NETに接続する機器や人物を特定する「KYC」(Know Your Customer)および「KYM」(Know Your Machine)の仕組みと認証データの分散台帳への記録を組み合わせる。機器の不正利用などに対する安全性を高めるという。

ジャスミーのブロックチェーン「Jasmy.NET」が持つ7つの要素

 会場では、IoT基盤利用の例として、インターホンをJasmy.NETに接続し、スマートフォンを利用して遠隔で応答を行うデモンストレーションも実施された。インターホンの呼び出しから1秒程度で端末側に来客の通知が表れ、アプリを介して開錠や無視といった指示を行えることが確認できた。

Jasmy.NETを利用したインターホン遠隔制御のデモンストレーション。右側はインターホンの応答(開錠/無視)決定画面。左側はブロックの生成状況を示し、秒単位で新規ブロックが生成されている。

 IoT基盤は、Jasmy.NETの他、に2つのコアサービスを持つ。「セキュアナレッジコミュニケーター」(SKC)は、ブロックチェーン上の個人情報をユーザーの意思で、サービス会社に開示したり開示を取り下げたりする機能を持つ。「スマートガーディアン」(SG)は、IoTデバイスのJasmy.NETへの登録と管理を行うものだ。SKCについては、カスタマーサポートのチャット窓口などで実証実験を実施中だという。

 ジャスミーのIoT基盤は接続するデバイスに対して、マルウェアなどの脅威から保護するセキュリティ、機器紛失時の遠隔停止などのデバイスマネジメントをもたらすという。さらに、デバイスを通じて収集したデータの価値化に至るまでをサポートし、エコシステムの構築を行う。従来のIoTシステム構築において最もコストがかかる部分を包括的にサポートする仕組みとなる。

 従来、IoTデバイスおよびそのエコシステムの開発には膨大なコストが必要であり、中小企業には参入が難しい分野であると、吉田氏は言う。IoT基盤では、DAppsで機器の動作を作って、電子基板を取り付けるだけでIoTデバイスを作ることが可能になる。ジャスミーはIoT基盤を通じて、その参入障壁を取り払い、ベンチャー企業から個人レベルまでの開発を促し、イノベーションの促進を目指すと語った。

ジャスミー株式会社・取締役副社長CTOの吉田雅信氏

 ジャスミーはIoT基盤を活用するため、コンソーシアム「Jasmy Initiative」を4月に設立する。参加各社と各種実証実験を行い、商用サービスの提供を目指すという。早ければ2019年夏頃に商用化の見込みもあるとのこと。同コンソーシアムには、SKCの実証実験の取り組みで協力関係にあるトランスコスモス株式会社、VAIO株式会社をはじめ、具体的な企業名は明かされなかったが計10社が加盟する。加盟企業は随時募集中とのこと。

 発表会の後半では、吉田氏に加えて、同社代表取締役社長の佐藤一雅氏、タレントの池澤あやか氏、サイバー大学客員講師の伊本貴士氏を交えたトークセッションが行われた。セッションの中で佐藤氏は、IoT基盤に接続するデバイスが収集したデータを生かす仕組みとして、「データレイク」を開発中であると語った。ユーザーの個人情報を取り除いた上で、参画企業にとって有益な統計情報を閲覧できるものになるとのこと。

トークセッションの様子(写真左から、ジャスミー株式会社・代表取締役社長の佐藤一雅氏、タレントの池澤あやか氏、サイバー大学客員講師の伊本貴士氏、ジャスミー株式会社・取締役副社長CTOの吉田雅信氏)

 また、IoTシステム開発の裾野を広げるために、個人から参加できるようなハッカソンの開催も検討中だという。氏は、ジャスミーのIoT基盤はシステムの作りやすさと、ユーザーへの提供のしやすさを参画企業に提供すると強調し、「参画企業それぞれがユーザーと向き合って、ジャスミーのIoT基盤を利用して新たなビジネスを生み出すことを期待している」と語った。

ジャスミー株式会社・代表取締役社長の佐藤一雅氏

日下 弘樹