トピック
GMOコイン代表取締役社長の石村氏、取締役の津国氏に聞く「仮想通貨交換業者の将来像」
裾野が広がる仮想通貨取引においてはユーザーニーズに合わせていくことが大切
- 提供:
- GMOコイン株式会社
2019年4月2日 12:00
仮想通貨交換業を営む「GMOコイン」は、人気ブロックチェーンゲーム「くりぷ豚」とコラボキャンペーンを行ったり、J2クラブのFC琉球のオフィシャルトップパートナーになるなど、その活動はユニークだ。
今回、代表取締役社長の石村富隆氏、システム担当取締役の津国貴洋氏に直接お話を伺う機会をいただいたので、気になるGMOコインの今後の展開などについてインタビューを行った。まずは、GMOコインが仮想通貨とブロックチェーンの現状をどのように見ているのか、率直な意見を伺うことにした。
──最初に仮想通貨とブロックチェーンの現状について、率直なご感想を石村氏に伺います。
仮想通貨交換業者として仮想通貨の取引については日本国内を対象に行っていますが、取引をしているユーザーの裾野は広がりつつあり、株式取引やFXといった金融商品に比べ、さまざまな人が参加しているという印象です。ただ、一方で仮想通貨やブロックチェーンについては、用途として具体的なユースケースがなかなか出てこないのが気にはなっています。そろそろ、これだというユースケースが登場してもいい頃だと思っています。
仮想通貨交換業者としては、我々のお客様や投資家の方に向けて、BitcoinやEthereumなどの仮想通貨を安定的に取引できる環境を提供することが第一ですが、海外の仮想通貨交換業者と比較すると、取扱銘柄が少なく、新たなユースケースといった機会を提供しきれていない部分が多々あると思っています。業界の自主規制団体(JVCEA:一般社団法人日本仮想通貨交換業協会)も設立され、審査基準や新たな仮想通貨の取扱についてのルールも確立されつつあるので、業界の一員として、今後は新たな取引機会を提供することができればいいなと思っています。
新たな取引機会については、具体的な計画があるわけではありませんが、まずはビジネスフォーカスとしては仮想通貨の取引ボリュームを増やすことに注力し、そこをしっかりと踏まえた上で、将来的に新しい取引機会、ユースケースにつながるようにいろいろと考えながらやっています。新しい仮想通貨の取扱いやICOなど、現在、自主規制団体でもルール作りが進められているので、近い将来、何かしら具体的な内容は見えてくるのではないでしょうか。
──よくいわれる仮想通貨を用いた新しい金融商品について取引の可能性はありますか?
GMOコインとしては、今のところは、仮想通貨交換業者としてのライセンスでできることをやりたいと思っています。仮想通貨業界は変化も激しいことと、GMOコインはGMOインターネットグループの一員として仮想通貨交換業を担っているので、この枠組みの中で最大限の努力をしていくことが基本方針です。
現在の取引におけるGMOコインのセキュリティについて
ここで将来的な話からGMOコインの現在の取り組みについて、特にセキュリティ面における取り組みについて伺う。
──仮想通貨を安心して取引できるためのGMOコインの取り組みについて伺います。
これは仮想通貨交換業者のすべてにいわれていることだと思いますが、まずはセキュリティの部分ですよね。もちろん物理的なシステムのセキュリティ面もそうですが、社内の体制などガバナンスの面においてもしっかりと固めていく必要があると思っています。我々は、仮想通貨交換業者としてお客様の資産をお預かりしているので、そこを第一に考えています。
──セキュリティに関しては、取締役でありシステム部担当の津国氏はどのようにお考えですか?
セキュリティについては、どれだけやったかはユーザーからは見えにくい部分ですが、まずは「何も起きない」のが当たり前の世界だと考えています。しかし、これを実現するのは、小さな対策の積み重ねをコツコツと行ってきたことの結果としてです。同業他社さんなど世の中で起きている事例に対して、自社のシステムはどうなのかを分析しながら、弱点となる部分を地道に対処していくところですね。何かやったからこれでもう安心ということではないので、そういったところを継続的に進めながら、ふと気づけば特に何事もなく取引ができているということを常に目指すことなのかなと思っています。
──具体的にどのような対策を取っているのか可能な範囲で教えていただけますか?
セキュリティでいうと、入口対策、内部対策、出口対策に分けて対策しています。外部からのアタックについては、WAF(Web Application Firewall)やIPS(Intrusion Prevention System:不正侵入防御システム)など、一般的なセキュリティ製品を導入しつつ、侵入そのものを難しくします。
万が一侵入された場合、潜伏して情報を抜き取られる期間というのは数か月にも及ぶという事例もあるので、侵入されていることに気づけるよう常にログを監視することも大事です。通常のネットワークのトラフィックであったりログの異常値をフィルタリングし、何か変わったことがないかに気づけることですね。ここは、機械的にこうなったら異常だと設定するのは簡単ですが、こちらの想定通りの異常行動をしてくれるわけではないので、そこは経験を積み重ねながら、担当者の「気づき」を磨いていくということも重要になります。
出口対策では、外部との通信部分にホワイトリストを入れて、そこは業務上必要だと認識している先に対してはアクセスを許可します。アタックをしてくるような攻撃者のサイトは業務上必要だとはなり得ず、当然ホワイトリストには載っていないので、最後に情報を盗もうとする段階で不正アクセスとして遮断できるよう対策しています。
さらにネットワークに脆弱性がないかを診断してもらう、外部のペネトレーションテストを受けるといった診断を行います。診断の結果から必要なことがあれば、その対策もしています。
また、セキュリティ製品に頼るだけではなく、定期的な研修や教育を通じて社内全体のセキュリティ意識を高めていくような努力も続けています。
──御社はGMOクリック証券にて金融取引の経験を積まれた方も多くいらっしゃると伺っていますが、セキュリティについてはそのあたりのノウハウも生かされているのでしょうか?
はい、私自身もGMOクリック証券出身です。GMOクリック証券で同じようにシステムリスク管理の業務を行っていました。リスク管理なので、システムの至るところにリスクがあり、リスクが顕在化した場合にどういうところに影響が出るのかを分析し、それに対して必要な対策を立てて優先度を付けていきましょうという取り組みは、GMOクリック証券で何年も行ってきました。リスクの特定や評価をすでに金融事業者としてやっているので、顧客に対する資産の預かりであったり、セキュリティであったり、また何かことが起きた場合の対策として最低限継続しなければならない業務や、投資家の保護の観点など、これまでの経験やノウハウは生かされていると思います。
これを一から始めるのと、すでに経験があるのとでは違いはあると思います。もっともやり方についてはマニュアル化をすれば誰でも簡単にできますが、何をどう対処していくか、またそれに優先順位を付けるといったことは、これまでの経験や価値観といったノウハウが生きてくるものだと思います。
──システムは御社が開発しているんですか?
そうです。システムは内部で作っています。
セキュリティ面については、とある担当者しか理解できないシステムになってしまうと、本当に何が安全なのかが別の人から見えにくくなってしまいます。その担当者が完全な答えをもって作業をしているのであればそれでいいのでしょうが、たとえばある条件が重なったときどうなるかとか、こういう場合はどうなるのか、という他人の目から見た疑問や指摘に対して答えがすぐ出せるよう、担当者以外にも分かるような状況で作っています。
新規口座開設数の増加について
ここで再び、石村氏に伺う。仮想通貨の相場が2017年の高騰から考えると、ここに来て落ち着いてきた感があるが、その中で新規口座開設の伸び率は今でも証券やFXよりも高いと伺っている。
──新規口座開設の伸び率がFXや株式取引よりも高いことについて理由はどのようにお考えですか? また、市場や顧客の動向についても伺います。
まず株や為替のような金融商品の投資家と比べると、仮想通貨の取引を行っている人の裾野は広いと思います。それを踏まえると、仮想通貨の取引はさまざまなニーズがあるのかなと思っています。我々のお客様に対して行ったアンケート調査でも、仮想通貨の時価総額への興味や仮想通貨の取引高の多いもの以外にも、ものすごくマイナーなものでも一定のニーズがあって、それらを応援したいという意見や、好きでやっているという感想を多数聞きます。いろいろなトークンに対する期待値はさまざまです。現状、我々はそのすべてのニーズに応えきれていませんが、先ほどもお話したように、今後はルールに則ってそういったことにも応えられるような体制や仕組みを作っていく必要があると思っています。
──それにはICOやステーブルコインのようなものもあると考えてもいいのでしょうか?
そうですね。具体的な話があるということではないですが、チャレンジはしていきたいですね。
──また、ここに来て他の金融業者がみなし仮想通貨交換業者を買収したりなど参入する動きも見えてきていますが、それについてはどうお考えですか?
裾野を広げるという意味では、大歓迎です。仮想通貨の取引を小さくやっていても仕方がないので、大手の会社さんが参入されるのはウェルカムですね。それぞれの業者さんのお客様が仮想通貨について知る機会が増えるということですから、業界にとってもいいことですね。現状は、仮想通貨に対してはネガティブに思っている方もいるのは事実ですから、そういう面でも協力し合ってネガティブなイメージを払拭していきたいですね。
──サッカークラブのFC琉球のオフィシャルトップパートナーになるなどの活動もされていますが、裾野を広げるというのはそういった活動にもつながっていくということでしょうか?
FC琉球さんは2019シーズンからJ2リーグに昇格しました。我々はJ3リーグの頃からスポンサーをさせていただいています。サッカーのクラブチーム運営においては、資金繰りなどは他の企業と同様、非常に重要で、FC琉球さんも資金調達の面でいろいろと研究をされていて、仮想通貨を使った資金調達ができるかもしれないという意見をお持ちの中で、そういう意味では我々も仮想通貨でそういうことができますよというアドバイスではなく、FC琉球さんと同じ視点でそういうことができるかもしれないという立場でまずはスポンサーとして参加し、いろいろやってみましょうということでお話させていただいています。
そうこうしているうちにFC琉球さんがJ2リーグに昇格され、引き続きスポンサーさせていただいています。この活動でFC琉球さんのサポーターのみなさんに仮想通貨を知ってもらう機会が増えればいいなと、つまりユースケースにつながればいいと思い、活動させていただいています。
──そういった意味では、先日のブロックチェーンゲーム「くりぷ豚」とのキャンペーンの取り組みも同様な活動ということでしょうか?
そうですね。仮想通貨のユースケースを増やすという意味では、裾野を広げるためにゲームユーザーの方に知ってもらおうという狙いはあります。仮想通貨という言葉はよく使われますし、みんな知っている言葉ですが、ではどう使うの? といわれると、なかなかその使い道は見えてきませんよね。技術的にも難しい面が多々あるので、しっかりとプロダクトとして出せているところも少ないので、そこは互いに協力し合う必要があるだろうと考えています。仮想通貨ってこういうふうに使えるんだねと思ってもらえることが大事だと思っていますので、「くりぷ豚」のようにEthereumを使ってゲームをするようなものはユースケースとしても最高ですので、協力させていただいています。
やはりBitcoinの価格が上がった下がったという話だけでは長続きしないじゃないですか。当初、仮想通貨が期待されていたような決済部分といいますか、しっかりと使われるということ対しても、我々は協力というと変ですが、できるだけそこにも加わっていきたいと思っています。
──今後もそのような活動は増えていくのでしょうか?
そうですね、ユースケースについては、いろいろ作っていきたいですね。GMOインターネットグループ全体でいえば、ステーブルコインを流通させようという取り組みであったり、その延長線上に仮想通貨による決済をしっかりとやっていくことなども考えられます。グループでいえば、マイニングがあり、仮想通貨交換所があり、それに決済が加わることで、仮想通貨の三本柱が確立されると理解しています。
GMOインターネットグループとして、すでにマイニングをやった、仮想通貨交換所もやった、あとは決済、まだグループのどこでどうやるかは未定ですが、これを大きなパートとしてやっていくことは必然ですね。そうしないと仮想通貨の事業としては完結しないと考えています。
GMOコインの立場はそこで、仮想通貨を流通させることに注力をして、仮想通貨の裾野を広げていくことを使命として力になっていきたいと考えています。
──現状、御社が扱っていない海外の仮想通貨についてはどう思いますか?
国内のお客様に対して我々が提供する上では、我々の中で審査し、チェックをして、内容についてもしっかりと把握をした上で、信頼と安心ができる仮想通貨があれば、それらは提供をしたいとは思います。とにかく何でもかんでもというような状況はあり得ないと思いますね。それは仮想通貨交換業者としてもそうですし、業界としても同じだと思いますし、しっかりとやっていかなければならないことだと思います。
──取り扱う仮想通貨に関しては増やしたいという意向ですか?
他の業者さんはわかりませんが、我々は、そう思っています。今後、やはり増えていかないとユースケースを作り出してゆくこと、お客様のニーズに応えていくことは難しいんじゃないかとも思います。普通に取引をしているお客様の行動を見ていると、やはり海外でも取引をされている方も一定程度いるのではないかと考えています。まず国内で扱っている仮想通貨から海外の交換所でしか手に入れられないような仮想通貨と交換し、それでいろいろやっている方もいらっしゃるのではないかと考えています。海外の仮想通貨交換所で口座を開設するというのは、誰でも簡単にできることではないですからね。それをサポートすること、国内でできたほうが便利ですよね。海外の仮想通貨交換所との取引が必要だから、それを今はやっていないという人もいて、一定のニーズはあると思います。
──レバレッジ取引など、現物取引以外の取引のニーズはやはり多いですか?
そうですね。これはGMOクリック証券の影響もあるかもしれませんが、レバレッジ取引のお客様は一定程度いらっしゃいます。仮想通貨のレバレッジ取引は、ツールなども為替のFXによく似ているので、元々、為替のFXをやられているお客様が仮想通貨のレバレッジ取引を行っているということも考えられますね。為替のFXのボラティリティ(価格の変動性)がないときは仮想通貨のレバレッジ取引をするみたいなやり方をされている人もいらっしゃるようですね。
──そういう意味で取引ツールについては、FXツールに近いというのも重要な要素になるのでしようか?
はい、我々のツールやアプリについてそう考えています。特にPC向けのツールはレバレッジ取引に特化した高機能ツールになっています。GMOクリック証券でFXをやっている方も、違和感なく移行ができると思いますね。結構、直感的に扱えるものになっていると思います。現状は、どちらかというとWebよりもアプリにより力を入れていたので、次はWebもさらに改善していきたいと思っています。
それと我々はこれまでAPIの提供を行っていなかったので、APIの提供についても将来的に実現していきたいです。今後、さまざまなお客様に向けて取引しやすい環境を整備しているところです。お客様のニーズに合わせてツールは提供していきたいですね。
──ありがとうございました。