5分でわかるブロックチェーン講座

第1回

中央銀行デジタル通貨発行の取り組み加速。Libra協会からVodafone脱退

(Image: Shutterstock.com)

暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報にわかりやすく解説を加えてお届けします。

1. ダボス会議2020開催。暗号資産・ブロックチェーン関連の重要トピック

スイスのダボスにおける世界経済フォーラム(WEF)の年次総会、通称「ダボス会議」が、1月21日から24日にかけて開催された。今週(1月21日から27日までの1週間)の暗号資産・ブロックチェーン業界はダボス会議に関連するニュースで溢れていたが、中でも特に重要なトピックを紹介する。

まずは、中央銀行の発行するデジタル通貨(CBDC)に対する、WEFのフレームワークの発表だ。2019年の6月に、Facebook主導のステーブルコインLibraの全貌が明らかとなって以降、中国をはじめとする各国のデジタル通貨に関する取り組みが加熱している。このような風潮の中でWEFは、各国がCBDCを発行すべきか否かの判断を行うために使用するフレームワークを発表した。今後は、このフレームワークがCBDCを発行する際の一つの指針となるだろう。また、フレームワークとは別に、WEFはデジタル通貨の統制を整備するための国際的な組織を合わせて発表している。

次に、Bakktによる消費者向けの新サービスを紹介する。先物取引や顧客の資産を預かるカストディサービスを機関投資家向けに提供してきたBakktは、米国メディアThe Blockがダボス会議で主催したイベント内で、消費者向けの新たな取り組みを発表した。今回の新サービスでは、暗号資産だけでなくデジタル証券やポイントなどにも対応する予定であり、広範囲な総合金融サービスを目指す方針を明らかにしている。

最後に、Ripple社のIPOについても触れておく。長年、時価総額で上位に名を連ねてきた暗号資産XRPを管理するRipple社。そのCEOであるBrad Garlinghouse氏が、ダボス会議でのインタビューにおいて1年以内のIPOを示唆した。これには、世界中の有識者より賛否両論が集まっている。Ripple社のIPOは、市場経済にとってどのような影響を与えるのか、今後の要注目トピックだといえるだろう。

参照ソース

  • ダボス会議2020:デジタル通貨・仮想通貨などに関する重要発言まとめ[CoinPost
  • WEFが中央銀行向けデジタル通貨設計フレームワーク提供[仮想通貨 Watch
  • Davos 2020: The five stories that matter for crypto[Decrypt
  • Governing the Coin: World Economic Forum Announces Global Consortium for Digital Currency Governance[WEF

2. 「CBDC」グローバルな統一通貨の実現に向けた各国の取り組み

今回の1週間における重要トピック、2つ目は中央銀行の発行するデジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)についてだ。CBDCは、先述のダボス会議でも大きく話題となったが、Libra構想の発表以降、その取り組みは加速し続けている。そして今回、ダボス会議の開催に際して、日本銀行を含む6つの中央銀行と国際決済銀行が共同で、デジタル通貨の研究を行う新組織を設立すると発表した。新組織には、カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、スウェーデン・リクスバンク、スイス国民銀行、国際決済銀行が加盟する。

これまでに、グローバルな統一通貨を志向する取り組みは、Libraをはじめとするステーブルコインが話題の中心にあった。しかし、今回のCBDCの発表は各国の中央銀行による取り組みであり、正真正銘のグローバルな統一通貨を予見させる。その取り組みに日本銀行が加わっていることは、我々日本人としてはポジティブに捉えて良いのではないだろうか。

一方で、CBDCの取り組みが、「米国vs中国vsその他」という構図になっていることを忘れてはならない。米国に対抗する形で、中国はDCEP(Digital Currency Electronic Payment)と呼ばれるデジタル通貨構想を既に実行に移している。そして、いわば「その他の国々」である日本やカナダ、欧州諸国が手を組む。こういった構図になっているのだ。真にグローバルな統一通貨を発行するのであれば、この三者いずれもが手を組む道は避けては通れないだろう。

参照ソース

  • 主要中央銀行による中央銀行デジタル通貨(CBDC)の活用可能性を評価するためのグループの設立[日本銀行
  • 日欧英中銀などが中央銀行デジタル通貨発行の可能性を検証[仮想通貨 Watch
  • 日銀など中央銀行6行がデジタル通貨で連携した背景──米中“以外”が手を組む[CoinDesk Japan
  • Central Bank group to assess potential cases for central bank digital currencies[Messari
  • Central Bank group to assess potential cases for central bank digital currencies[BANK OF ENGLAND

3. Libra協会からVodafoneが脱退

最後のトピックは、ここまでに何度も言及してきたLibraについてだ。2019年6月に名だたる企業が加盟を表明した上で、その全貌が明らかとなり世間の話題をさらったLibraプロジェクト。しかし、各国からの法規制における指摘を受け、VisaやMastercard、PayPal、eBay、Stripe、Booking Holdings、Mercado Pagoといった企業が既に脱退している。

そして去る1月21日、新たにVodafoneがLibraプロジェクトからの脱退を正式に発表した。これにより、発足当初集まった28の加盟企業・団体は、20にまで減少している。なお、Vodafoneは、Libraプロジェクトに割いていた社内のリソースを、デジタル決済サービスM-Pesaに向けるという。

米国メディアCoinDeskによると、Libraプロジェクトへの参画を希望する企業・団体は1500を超えるという。そのため、Libraを運営するLibra協会は、2020年中に新メンバーを入会させる方針だ。

参照ソース

  • [更新]ボーダフォン、リブラ協会から離脱──アフリカでの「Mペサ」拡大に注力[CoinDesk Japan
  • ボーダフォン、フェイスブック主導の「リブラ」プロジェクト離脱[Bloomberg
  • Vodafone becomes latest company to quit the Libra Association[TheBlock

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。暗号資産・ブロックチェーン業界で活躍するライターの育成サービス「PoLライターコース」を運営中。世界中の著名プロジェクトとパートナーシップを締結し、海外動向のリサーチ事業も展開している。Twitter:@tomohiro_tagami / @PoL_techtec