5分でわかるブロックチェーン講座

第2回

国内大手企業がブロックチェーンの取り組み加速。スイスで新たなIPO誕生

(Image: Shutterstock.com)

暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報にわかりやすく解説を加えてお届けします。

1.ステーキング関連のトピックが増加

2020年に入ってから日本でも話題になることが多くなったステーキングが、今週(1月28日から2月3日までの1週間)も多くの国内外メディアを賑わせた。

まずは、Proof of Stake Alliance(POSA)について紹介する。最もメジャーなコンセンサスアルゴリズムであるProof of Work(PoW)は、マイニングによる非効率な電力消費が問題だ。そのため、近年はProof of Stake(PoS)に注目が集まっている。

POSAは、立法および規制当局に対するPoSの理解を促すために設立された組織だ。2019年8月に、Polychain CapitalやWeb3 Foundation、Solanaといった12の企業および団体によって設立されている。今回の1週間では、新たにCoinbase CustodyとBison Trailsの2団体が加わった。

PoSでは、自身の保有する暗号資産をネットワークに預け入れることで、ブロックチェーンのエコシステムに貢献することができる。そして、その報酬として暗号資産を受け取る。この一連の流れをステーキングという。従って、ステーキングの普及にはPoSの発展が欠かせないのだ。POSAは、PoSにおける規制、とりわけステーキングによって得た報酬に対する税制の整備に奔走している。

今回の1週間におけるステーキング関連の注目トピックとしては、世界最大規模の暗号資産取引所であるBinanceについても動きがあった。Binanceは、米国拠点のBinance USを通して、新たにCosmos(ATOM)とAlgorand(ALGO)をステーキング対象に追加した。これにより、計17銘柄がステーキングの対象となっている。ステーキングに取り組んでいる取引所は、他にもCoinbaseやKrakenなどが挙げられる。しかし、取り扱い銘柄数としてはBinanceの一強状態が続いている。

参照ソース

  • 国内外で注目の仮想通貨ステーキングサービス、米国PoS協会がメンバー拡大中[CoinPost
  • バイナンスUS、アルゴランドとコスモスでのステーキング報酬サービスを提供[CoinDesk Japan
  • Coinbase Custody and Bison Trails Join Proof of Stake Alliance[PoS Alliance
  • Coinbase Custody, Bison Trails join new blockchain lobbying group POSA[Decrypt

2.日本の大手企業、ブロックチェーン活用を本格化

続いて、日本の大手企業による新たな取り組みについて触れていく。今回の1週間では、暗号資産業界ではお馴染みのSBIグループやLINEをはじめとして、野村総合研究所、三井住友、ロート製薬がメディアを賑わせた。

SBIホールディングスは、2020年3月31日時点の株主に対して、株主優待として最大8000円分の暗号資産XRPを付与する方針を発表した。以前より子会社のモーニングスターで実施していた取り組みを、親会社でも実施していく構えだ。なお、株主優待に暗号資産を活用する取り組みは、コインチェックを運営するマネックスグループでも実施されている。これにより、暗号資産の更なる広がりが期待できるだろう。

SBIグループに関連することとして、三井住友フィナンシャルグループからも大きな発表が出された。三井住友フィナンシャルグループは、SBIの子会社であるSBI R3 Japanへの出資を通して、貿易金融や個人間送金の分野で、ブロックチェーン活用を推進していく姿勢を見せている。

暗号資産取引所BITMAXを運営するLINEは、自社の独自通貨LINKを日本国内で取り扱う方針であることを明らかにした。LINKの発行元は、グループ傘下でシンガポール拠点のLINE TECH PLUSであり、2020年2月3日時点では、日本国内での取り扱いは行われていない。

日本の大手調査会社である野村総合研究所は、インテリジェンスユニットと共に暗号資産を対象とした投資評価のためのデータベースサービスを、開発および提供開始すると発表した。サービス名は「NRI/IU暗号資産インデックスファミリー」。国内外の機関投資家や金融ベンダー、暗号資産取引所が顧客対象となる。

最後に、ロート製薬によるコンソーシアムチェーンの取り組みを紹介する。ロート製薬は、ユニメディアと共に情報管理およびセキュリティ強化を目的とした共同研究を開始すると発表した。ロート製薬では、近年DXへの取り組みに力を入れており、その一環としてブロックチェーンの活用を進めていく姿勢だ。

参照ソース

  • 株主優待の実施に関するお知らせ[SBIホールディングス
  • 三井住友とSBI、ブロックチェーン協業 貿易金融など[日本経済新聞
  • 野村総研、仮想通貨の投資指標を機関投資家向けに提供[仮想通貨 Watch
  • 野村総合研究所、暗号資産を投資評価する際のベンチマークとなる「NRI/IU暗号資産インデックスファミリー」の提供を開始[野村総合研究所
  • Nomura Research Institute to launch crypto asset index[Finextra
  • LINE、独自仮想通貨LINKを4月以降に国内展開[仮想通貨 Watch
  • ロート製薬、ブロックチェーン実用化に着手[仮想通貨 Watch

3.スイスは更なるブロックチェーン推進国へ

スイスにおける今回の1週間は、ブロックチェーンに関する話題で持ちきりだったに違いない。

まずは、ブロックチェーンを活用した新たなIPOについて取り上げる。スイスのOverfutureは、自社の株式をトークン化(暗号資産化)した状態でIPOを実施する方針を発表した。EURO DAXX(欧州デジタル資産取引所)が提供するイーサリアムのスマートコントラクトを使用し、合法でIPOを実施するという。

今回の取り組みでは、Overfutureの株式譲渡がトークン化された状態で行われる。そのため、トークンの保有者がOverfutureの株主となり、ブロックチェーンで管理される登記簿に記録されるという。Overfutureは、ブロックチェーンを活用することで、IPOに伴う従来の不要なコストを削減することを目指している。

また、スイスの著名リゾート地ツェルマットでも、先進的な取り組みが行われた。ツェルマットは自治体として、住民に対してビットコインによる納税を認めたのである。スイスでは、既にツークがビットコイン納税を認可しており、ツェルマットは2つ目の都市となった。暗号資産に明るいスイスからは、引き続き先進的な取り組みが出てきそうだ。

参照ソース

  • スイス初:トークン化した株式でIPOを実施へ イーサリアムブロックチェーンを利用[CoinPost
  • スイスのリゾート地ツェルマット、仮想通貨ビットコインでの納税開始【ニュース】[Cointelegraph Japan
  • Swiss Company Gets Green Light to Incorporate for a Blockchain IPO[Messari

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。暗号資産・ブロックチェーン業界で活躍するライターの育成サービス「PoLライターコース」を運営中。世界中の著名プロジェクトとパートナーシップを締結し、海外動向のリサーチ事業も展開している。Twitter:@tomohiro_tagami / @PoL_techtec