イベントレポート
「極めてハードルは高い。しかし発展途上の技術領域でのキャリア形成には、それ以上の価値がある」
仮想通貨業界特化の求人メディアwithBマネージャー東口氏が転職事情を語る
2019年3月21日 06:00
仮想通貨・ブロックチェーン業界に特化した人材紹介業を営む株式会社withBは3月19日、同社の求人メディア「withB」のオープンを記念して、説明会を開催した。同セミナーでは、ブロックチェーン業界への転職を志す方向けに、同社マネージャーの東口航大氏が登壇し、業界の転職市場について、職種別の要求スキルや需要などを解説した。本稿では、氏の語る業界の転職事情をお伝えする。
withB社は業界特化型エージェントとして、業界特化型のジョブフェアを定期開催している。独自の業界ネットワークとノウハウにより、厳選した企業の求人情報が掲載可能だという。掲載には審査があるが、求人掲載費は完全無料のため大手企業からベンチャー企業まで幅広い業界企業の求人情報を掲載している。利用者は同社の専任エージェントによる審査を受けることとなるが、その情報を元に同社に登録された各企業の選考へ短時間でエントリーすることができるという。
同社は3月14日、求人メディア「withB」をオープンした。bitFlyer、コインチェック、Zコーポレーション、VALU、ビットポイントジャパンなど19企業の求人約100件を掲載している。
東口氏は「仮想通貨・ブロックチェーン業界で出されているポジションや業界で求められる人物像」という主題で講演を行った。結論を先に述べると、仮想通貨・ブロックチェーン業界への転職は、総じて求められるスキルや経験は非常に高い。それに応じて金銭的に多額の報酬も期待できるが、発展途上の領域で築く「キャリアの価値」という観点でも要求されるハードル以上にリターンの見込める分野であると氏は主張した。
国内の仮想通貨・ブロックチェーン業界の募集枠の大きさという観点では、エンジニアと金融経験者が二大勢力であるという。昨今の仮想通貨への規制事情から、業界における金融経験者の需要は非常に大きく、各仮想通貨交換所を中心に、金融経験数年から数十年のベテランまで各種のポストが募集を受け付けている。エンジニアも広く募集があるが、他業界含めてサーバーサイドエンジニアが不足しており、ブロックチェーン業界も同様であるという。
まずはエンジニアの職種。フロントエンド、サーバーサイド、インフラという他業種でもよく見かける3種に加えて、仮想通貨・ブロックチェーン業界では基盤技術開発、スマートコントラクト、仮想通貨という3種があり、合わせて6つの職種に大別されるという。東口氏が語るそれぞれの特長を簡単にまとめる。
- フロントエンド
募集の枠自体が少ないため、要求が高い。コーディングは当然としてUXへの精通なども。 - モバイル
iOSならSwift、AndroidならKotlinの経験が必須のことが多い。 - サーバーサイド
使用言語はRuby、Java、Goの順に需要が高い。 - インフラ
クラウドの知見、大規模アクセスに耐え、年中無停止のサービスを運用した経験が必須。 - 基盤技術開発
コンピュータサイエンス(CS)の学位、博士号に匹敵する知識が必須。オラクルなどのデータベース自体を設計した経験などがあれば生かせる。このポストは給料的に上限が設定されてないことが多い。 - スマートコントラクト
事前に習得していればなお良いが、経験必須ではない。十分なプログラミング経験は必須。 - 仮想通貨
仮想通貨交換所などが募集するウォレット開発やノード運用などを行うエンジニア。各交換所でも限られたエンジニアが担当する領域で、間口が狭く、仮想通貨のプロトコルへの理解が必要。
次に金融系の人材募集について、withBで転職活動を行う利用者の中で最も大きな割合を占めているのがこの分野だという。フィンテックや資金決済法といった分野に関わった経験があれば、激しく需要があるとのこと。募集職種は国際標準ガバナンスの3線モデルに基づいて分かれる。簡単に説明すると、0~1線はカスタマーサポートと営業部門、2線はコンプライアンスなど管理部門、3線は内部監査部門となる。
- 0~1線
カスタマーサポートまで含めると最も需要が高い職種。仮想通貨交換所のKYCなどを取り扱うため、金融機関でカスタマーサポートや口座開設の業務経験が1年程度あれば歓迎される。 - 2~3線
制度作りなどが要求されるため、金融のマネージャークラスで十数年の経験が必要となる。ITへの知見を持ちシステムに通じていれば需要が極めて高い。
その他の職種としては、上記に比べると需要は大きくないとした上で、デザイナー、経理、カスタマーサポート、セールス、総務などのポジションが紹介された。いずれも金融などでの業務経験があれば評価されるなどの解説がなされた。業界特有の職種としては、秘書・通訳の需要も常にあるという。英語が情報のベースとなることも多く、アジア圏でのビジネス展開なども見据えた際に必須の人材となるからだ。
東口氏が語る人事のポストには意外性があった。「その他の職種」の一部については、詳細な数字は掲載不可とされたが年収上限も語られた。筆者の感覚となるが人事のポストでは、実態として他業界における相場の1.5倍はあるような報酬が提示されているようだ。氏が募集の一例を口にした際には会場が少しざわついていた。各所で人材難が嘆かれる業界だけに、やはり能力のあるリクルーターが必要となるのだろう。特にダイレクトリクルーティングの経験などが評価されると語られた。
以上、東口氏による「仮想通貨・ブロックチェーン業界で出されているポジションや業界で求められる人物像」の講演をまとめた。筆者も各種セミナーに足を運ぶが、この業界の著名人は口を揃えて人材がほしいと言う。今回の講演を聴いてハードルが高すぎることも人材難の一因だと確信したが、その実態が求職者にまで知られていないという側面もあるのではないだろうか。同社の活動によって業界の人材不足が解消され、仮想通貨・ブロックチェーン技術の発展につながることを期待したい。