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証券業界横断プロジェクト「第2フェーズ」開始で証券業務ブロックチェーン技術実用化へ

大和証券グループが業界25社と共同で第1フェーズ検討プロジェクト引き継ぎ

 株式会社大和証券グループ本社は9月12日、金融機関17社と共同で昨年行った「証券ポストトレード業務におけるブロックチェーン/分散型台帳(DLT)技術適用に関する検討プロジェクト」を引き継ぐ新たなプロジェクトの開始を発表した。2017年の検討プロジェクトを「第1フェーズ」と定義し、「第2フェーズ」となる本プロジェクトで、日本株を対象にポストトレード業務の約定照合分野におけるルール・規格の標準化やDLT実用化を目指す。また、参加企業を金融機関17社から、機関投資家やシステム会社も含めた25社へと拡大し、プロジェクト実施期間の予定を2018年9月から2019年1月までとしている。

プロジェクトの背景

 プロジェクトは、株式会社日本取引所グループによる「ブロックチェーン/DLT技術に関する業界連携型の技術検証」の枠組みを活用して、大和証券グループが主体となり、国内証券市場の更なる効率化とコスト低減を目的に、他の金融機関と共同で行っている。第1フェーズでは、国内証券市場において機関投資家と証券会社間の約定照合業務におけるDLTの適用可能性について考察してきた。

 第1フェーズの過程で、各社が抱える課題を持ち寄って議論を繰り返した結果、約定照合業務におけるルールや規格、業務フロー等の目指すべき具体案が見つかったという。また、議論のほかにも大和証券グループの大和総研が開発したプロトタイプアプリを用いた検証により、本プロジェクトでのDLTはコンソーシアム型が約定照合業務の求める要件を満たし得るという結論が導かれたという。従来技術とDLTの比較についても、DLTが新たな解決策を提示し得るという結論に至ったなど、第1フェーズでの成果を「約定照合業務におけるブロックチェーン(DLT)適用検討 ワーキング・ペーパー」にまとめ、公表している。

 ワーキング・ペーパーによると、国内における証券の売買成立後に数量や手数料などを確認する約定照合業務は、さまざまなサービスプロバイダーが提供するシステムによって自動化が推進されてきたため、機関投資家、証券会社、信託銀行、サービスプロバイダー等のそれぞれが利用するシステム間の計算方式などに互換性がないという。また、業務上の各種ルールは標準化されておらず煩雑化しているとのこと。国内証券市場の効率化を進めるためには、これらの計算方式や各種コードなどの規格統一が必要であると、プロジェクト参加企業の共通認識があったという。

約定照合業務におけるルール・規格の違い(「約定照合業務におけるブロックチェーン(DLT)適用検討ワーキング・ペーパー」より引用)

 規格統一にあたっては、特定の中央機関がシステムを一元的に提供すればこれらの課題は解決できると考えられるが、しかしシステムを一元化した場合、業務の機密性、安全性、コスト等を考慮したうえで、普遍的に使える仕様の策定、公平中立な第三者機関による信頼された運営が必要となる。また、中央機関の業務範囲によってマルチアセット対応やグローバル対応における制約が生まれる可能性も否定できないという。

 こうした課題に対しDLTは、中央機関による集中管理を前提としない分散型で新たな解決策を実現し得るのではないか。DLT上に業界標準仕様を反映したスマートコントラクトを開発し、サービスプロバイダー各社の製品をこの仕様に対応させることで、業界参加者の構成を変えずに、規格統一を実現できる可能性があるのではないかという結論に至ったという。

ブロックチェーン/DLT技術の実用化へ向けて

 この第1フェーズの状況を踏まえ、第2フェーズでは更に踏み込んだ協議を行っていくという。第2フェーズでは、大和証券グループ本社が4月に設立したFintertech株式会社も参加し、グループの金融専門知識、リサーチ・コンサルティング能力、ブロックチェーン/DLTに関する知見を集結させていく。また、様々な立場の実務者による検討会を通じて、ルールや規格の標準化、システム要件、運営ルール等の意見をとりまとめて、DLT技術の実用化を目標に証券業界を横断しての合意形成を目指すとのこと。

  • 本プロジェクト参加予定企業一覧(五十音順、大和証券グループを除く)
    HSBC証券会社
    株式会社エックスネット
    株式会社オージス総研
    岡三証券株式会社
    株式会社QUICK
    ゴールドマン・サックス証券株式会社
    株式会社証券保管振替機構
    DTCC Japan KK
    東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社
    トムソン・ロイター・ジャパン株式会社
    内藤証券株式会社
    日興アセットマネジメント株式会社
    ニッセイアセットマネジメント株式会社
    日本マスタートラスト信託銀行株式会社
    野村證券株式会社
    株式会社野村総合研究所
    BNPパリバ証券株式会社
    丸三証券株式会社
    みずほ証券株式会社
    三井住友アセットマネジメント株式会社
    三井住友信託銀行株式会社
    三菱UFJ国際投信株式会社
    三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
    メリルリンチ日本証券株式会社

お詫びと訂正: 記事初出時、「株式会社野村総研総合研究所」と記載しておりましたが、正しくは「株式会社野村総合研究所」となります。お詫びして訂正させていただきます。