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金融庁、金融サービス変革期として仮想通貨やブロックチェーンについても言及

金融レポートと行政方針を統合した金融庁の実践と今後の方針に関するレポート

 金融庁は9月26日、毎事務年度ごとに公表していた従来の「金融レポート」と「金融行政方針」を統合した「変革期における金融サービスの向上にむけて~金融行政のこれまでの実践と今後の方針(平成30事務年度)~」を発表した。本レポートでは、金融庁が今後いかなる方針で金融行政を行っていくのかということのほか、方針に基づき実施した行政の進捗状況や実績についての分析や問題提起も報告する。仮想通貨に関するものが複数あるほか、ITの進化やFinTechの登場によるデジタライゼーション対する金融庁の考え方などが含まれる。本稿ではそれらに関連する内容を抜粋して紹介する。

(「変革期における金融サービスの向上にむけて」より引用、以下同)

 金融庁の事務年度とは、毎年7月1日から翌年6月30日までを指す。金融庁は、平成27事務年度より金融行政が何を目指すかを明確にするために「金融行政方針」として公表してきた。また行政方針の進捗状況や実績を分析や問題提起とあわせて「金融レポート」として発表している。これらをPDCAサイクルに基づく業務運営の観点から、レポート内容を翌事務年度の金融行政方針に反映させてきた。ちなみにPDCAサイクルとは、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の1つである。

 本事務年度においては、PDCAサイクルを強化する観点から従来の「金融レポート」と「金融行政方針」を統合し、「変革期における金融サービスの向上にむけて~金融行政のこれまでの実践と今後の方針(平成30事務年度)~」として公表することとしている。

変革期における金融サービスの向上にむけて

 金融庁は、デジタライゼーションの加速、人口減少および高齢化の進展、低金利環境の長期化等により、金融を巡る環境は大きく変化する「変革期」であると現状を分析している。変革期においては、金融行政の目的である「企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大」を達成していくためには、こうした変化を活かし、変化に適切に対応していくことにより、金融サービスを向上させていかなければならないという。

 現状、我が国の金融システムは総じて安定しており、頑健性を備えているが、金融システムの安定には国際的な金融システムの安定が欠かせないとも金融庁はいう。また、デジタライゼーションや高齢化の進展に伴う経済・金融システムの持続可能性は、世界共通の課題としても認識されてきているが、我が国はこうした世界共通の課題の解決に積極的に貢献していく必要があるという見解を示している。

 金融庁は、金融行政の目標を達成していくため、「金融育成庁」として、この変革期において金融サービスの向上が着実に実現されるよう、しっかりと課題に対して取り組んでいくことを本レポートでは掲げている。

デジタライゼーションの加速的な進展への対応

 ブロックチェーン技術の台頭やFinTechの登場などデジタライゼーションの進展により、新しいプレイヤーが金融分野に進出するとともに、革新的なサービスが生まれ、利用者利便を飛躍的に向上させていくことが期待されているという。

 金融庁は、こうした環境変化を踏まえた金融サービスの向上に向けて「金融デジタライゼーション戦略」をとりまとめている。その戦略の中で、FinTechを推進していくため、「FinTech Innovation Hub」を設置するなど、規制・監督と一線を画して、ベンチャー企業等と議論・交流し、FinTechのトレンド・方向性を探り、得た知見をFinTech関連事業の健全な発展につなげるとしている。

 また、環境変化に伴い金融機関の行為・規律に関する課題も多く噴出しているが、顧客の信頼感・安心感の確保が重要であるという。近年、仮想通貨(暗号資産)の登場により、仮想通貨にかかる価格の乱高下や新たな取引(証拠金取引やICO等)の登場、顧客からの預り資産の外部流出事案の発生等、仮想通貨を取り巻く内外の環境は急速に変化しているが、こうした中、イノベーションに配意しつつ、利用者保護の確保に向けて、仮想通貨交換業の適正化を図っていくことが大事であると、仮想通貨に関して分析をする。

世界共通の課題の解決への貢献

 デジタライゼーションが進展する中、金融庁は、2019年G20議長国として、規制の影響評価、金融市場の分断回避、仮想通貨のルール形成等の金融システム上の課題に加え、高齢化社会における金融包摂等、世界共通課題についての議論を主導し、解決に取り組んでいくことを宣言している。また、マネー・ローンダリングやテロ資金供与対策については、我が国が規制で先行する仮想通貨に関し、G20や金融活動作業部会(FATF)の議論を引き続き主導していくことも明言している。

 デジタライゼーションに対するこれまでの実績として、インターネットを活用した金融取引の進展を踏まえ、一般社会人や学生を対象とした金融取引等の基礎的知識に関するガイドブック「基礎から学べる金融ガイド」を作成している。ガイドブックにより、フィッシング詐欺を含むインターネット取引にかかるトラブルや、セキュリティ対策の重要性について注意喚起を行ってきた。また、仮想通貨のリスクについても国民への周知について、利用者向けリーフレットや関係省庁との連名による注意喚起文を金融庁Webサイトに掲載するほか、メディアを通して注意喚起を行ったことを報告している。

 今後の方針として、スマートフォンを用いた家計管理や決済サービス等、インターネットを通じた金融サービスの活用や、仮想通貨取引の登場とリスク、個人情報や購買履歴等の活動データが金融商品を含む商品・サービスの勧誘にどのように利活用されるかなど、利用者が金融取引を行う上で理解しておくべき情報・金融リテラシーの向上に向けて、教材・ノウハウの収集に取り組むという。

 また、金融庁は、デジタライゼーションの基盤となるブロックチェーン、AI、ビッグデータ技術等の推進も行っている。しかし、金融行政上の課題として、さまざまな技術革新が金融サービスにもたらす影響(機会・リスク)を的確に把握し、デジタライゼーションを利用者利便・利用者保護の両面から適切に推進していくため、要素技術の進展について金融庁としても的確に把握し、その適切な活用を促すことが重要であると述べている。

 これらについて昨事務年度の実績として、昨年7月よりブロックチェーン技術を用いた金融取引に関する調査研究を実施したことを報告。当該調査研究の結果等も踏まえつつ、国内外の金融当局および中央銀行や国内外の学会関係者が参加する「ブロックチェーン・ラウンドテーブル」を本年3月に東京にて開催し、ブロックチェーンに関する技術リスクなどに焦点を当てた議論を行ってきた。本事務年度の方針として、ブロックチェーン技術に関する国際共同研究ブロックチェーン技術の活用可能性や課題について、国際的な共同研究を引き続き実施するとともに、「ブロックチェーン・ラウンドテーブル」についても来年3月末を目途に開催する予定であるとのこと。

市場監視体制の強化のための取組み

 目まぐるしく変化する市場環境や新たなリスクに対応するため、自主規制機関や関連業界団体、関係省庁との協働も強化しながら、ミクロ・マクロ双方の視点からタイムリーな市場監視の強化のための取組みを推進していくと、金融庁はいう。

 本事務年度の方針として、内外環境を踏まえた情報力・事案発掘力を強化していくとのこと。問題の早期発見につなげるため、マクロ的な視点に基づき潜在的リスクに着目した情報収集・分析にも取り組んでいく。最近では、上場会社が仮想通貨関連業務に進出するなど、新たな動向が見られることから、今後とも仮想通貨交換所と連携しつつ、注視していく。

 さらに、デジタライゼーションの進展や新しい商品・取引の出現等市場で起こっていることを常に注意深く監視し、市場監視の空白を作らないよう、マクロ的な視点に基づく分析結果とミクロ情報とのより有機的な結合・活用、現在の監視手法や着眼に改善すべき点があれば見直していくとともに、市場の公正性・透明性の確保や投資者保護などの観点から必要がある場合には、対外的に情報発信するなど、適切に対応する方針を掲げている。

仮想通貨に関する実績と方針

 金融庁は、金融行政上の課題として仮想通貨と法定通貨等の交換業者に対して登録制を導入したことも報告している。

 登録制を導入後も、仮想通貨の価格の乱高下や新たな取引の登場、顧客からの預り資産の外部流出事案の発生等、仮想通貨を取り巻く内外の環境は急速に変化しているが、規制については、イノベーションに配意しつつ、利用者保護の確保に向けて、仮想通貨交換業の適正化を図っていくことがより重要となっていると分析をする。

 金融庁としては、仮想通貨交換業者の登録審査・モニタリングや自主規制団体の認定審査等を通じた、業者における実効性のある態勢整備と適切な業務運営の確保のほか、国際的な連携、必要な制度的対応の検討等に取り組んでいく必要があると述べている。

 仮想通貨については、現在1500以上の種類が存在するとの指摘がある一方で、Bitcoinがその時価総額全体に占める割合は本年9月25日時点で約53%に達している。こういった主要な仮想通貨の価格は、投機的取引等の影響を受け、昨年秋から年末にかけて急騰し、その結果、仮想通貨の時価総額(当時)は70兆円規模になった。本年に入り、その価格は下落したものの、依然として価格の乱高下が続いていることも告げている。

 仮想通貨に関しては、マネロン・テロ資金供与対策に関する国際的要請がなされたことや、国内で当時世界最大規模の仮想通貨交換業者が破綻したことを受け、資金決済法が改正された。その結果、昨年4月より、仮想通貨と法定通貨等の交換業者に対し、登録制が導入され、本人確認義務等の導入や説明義務等の一定の利用者保護規定の整備が整備されたきた実績を持つ。

 さらに金融庁では、仮想通貨にかかる取引が高度で複雑なシステムによりグローバルに展開される等の特性を踏まえ、昨年8月、金融庁内にシステムやマネロン・テロ資金供与対策の専門官等で構成される「仮想通貨モニタリングチーム」を設置し、仮想通貨交換業者の登録審査・モニタリングや、仮想通貨に関する情報の収集・分析等を行っている。

 また、登録審査に当たっては、仮想通貨交換業者のリスク特性を踏まえ、内部管理規程についての書面での審査に加え、業者を実地訪問して規程の運用状況を確認する等の審査を行い、現在までに16社を登録したことを報告している。

 本年1月にみなし業者1社において過去最大規模の顧客からの預り資産の外部流出事案が発生したことなどを踏まえ、仮想通貨交換業者(以下、みなし業者を含む)の内部管理態勢の整備状況等を検証するために、すべてのみなし業者および複数の登録業者に対し、立入検査を順次実施した。この結果、問題が判明した業者(みなし業者10社、登録業者7社)に対し、行政処分を行っている。本年8月には、これまで実施した仮想通貨交換業者の検査・モニタリングで把握した実態等について、中間的なとりまとめを公表した。

 主にみなし業者においては、多額の利用者財産を預かっているという認識に欠け、技術には詳しいものの金融業に対する知識を欠いた経営者が多く、加えて役職員にも金融業としてのリスク管理の知識を有する人材が不足しており、各社においてビジネス展開を拡大する中、内部管理態勢の整備が追いついていない実態が把握された。

 日本仮想通貨交換業協会がまとめた「仮想通貨交換業者における年齢層別顧客分布状況」によれば、現物取引・証拠金取引等ともに20代から40代が取引参加者の大部分を占めているという(現物取引においては全体の約90%、証拠金取引等においては約80%)。また、仮想通貨の取引増加に比例し、業者に関する問合せ等、利用者からの相談も増加してきていることが報告されている。こうした状況を踏まえ、仮想通貨の価格変動リスク等について、消費者庁・警察庁と連携し、これまで複数回にわたって利用者に対する注意喚起を実施している。

年齢層別顧客分布状況
仮想通貨に関する相談受付状況

 また、無登録営業の疑いがある業者に対しては、事業の詳細等を確認するために照会書を作成し、調査の結果、無登録業者であることが判明した場合には、利用者保護のため警告書を発出するとともに、その旨を金融庁Webサイトに公表して、利用者に対する注意喚起を実施してきた(これまで海外事業者2社)。

 本事務年度の方針としては、本年8月の中間とりまとめを踏まえて厳正に仮想通貨交換業者の登録審査・モニタリングを実施していくことも告げている。新規登録申請業者に対しては、業務運営体制の実効性についての審査を行うとともに、登録業者に対しては、タイムリーな情報収集・リスク把握およびこれに基づくリスクプロファイリングの精緻化・頻繁な更新を通じて、機動的な検査を実施する等、モニタリングの質の向上に努めるという。さらに、無登録業者への対応についても情報収集の強化及び対応の迅速化を図っていくことを宣言している。

自主規制団体について

 本年3月、登録業者16社において「日本仮想通貨交換業協会」が設立されたことも報告している。同協会より8月になされた自主規制団体の認定申請に対する審査を実施するとともに、自主規制機能の早期確立を促していく。

 具体的には、自主規制団体の認定申請について、組織体制や自主規制規則の策定のみならず、協会のガバナンスや会員への指導力等の実態面から、その実効性等について厳格に審査を実施する。また、認定した場合には、認定団体による自主規制機能の発揮状況等につき、モニタリングを実施していく。

国際的な議論・連携

 2019年G20議長国であることを踏まえた、我が国の具体的な対策に関しては、仮想通貨分野における我が国のこれまでの業者監督等における知見・経験等を活かし、FSB・FATF・IOSCO等での国際的な議論に積極的に参画していく。また、世界共通の課題解決に向けは、従来から提起してきた金融規制改革の影響評価、グローバル金融市場の分断回避、仮想通貨に関するルール形成といった新たな金融システム上の課題解決に加え、高齢化社会における金融包摂の実現等の幅広い課題の解決に金融がいかに貢献できるかといった点も含め、取り組んでいくとのこと。庁内においては体制を整備し、外国人有識者もアドバイザーとして活用しながら、国内外における議論を深めていく。加えて、課題解決に向けた国際的な議論を主導できるよう、国際会議議長職等の獲得を進めていく。

 さらに、本年3月に設置した「仮想通貨交換業等に関する研究会」において、国際的な議論の動向、問題事案の発生状況、仮想通貨が実際には投機の対象にもなっているとの指摘等も踏まえ、仮想通貨交換業を巡る問題、仮想通貨を用いた証拠金取引や資金調達的な取引について、必要な制度的対応を検討していくことを報告している。