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バルセロナのスパコン、イーサリアムのシャーディング実装に向けたシミュレーター検証を実施

ビーコンチェーンの検証終え進捗を報告

礼拝堂に鎮座するスーパーコンピューター「マレノストルム」(Image: MeinPhoto / Shutterstock.com)

 バルセロナ・スーパーコンピューティング・センター(以下、BSC)は4月14日、Ethereum 2.0における実装項目の一つ「Sharding」(シャーディング)に関するシミュレーションの進捗状況を発表した。現在はシャーディング実装の前段階である「Beacon Chain」(ビーコンチェーン)を実装したシミュレーターが完成し、模擬的なネットワークが想定通りの挙動を示していることを報告した。

 Ethereumはスケーラビリティ問題の解決策の一つとして、計画している最終段階のバージョンであるEthereum 2.0では、シャーディングという手法を採用する予定だ。シャーディングは、平たく言うとデータの分割である。トランザクションの処理をグループ分けし、複数のブロックチェーンに分散させることで、ネットワークの負荷を軽減する。これを、ビーコンチェーンとシャードチェーンという2つのブロックチェーンを連携することで実現する。

 BSCの研究チームは、スーパーコンピューター「Marenostrum 4 」(以下、マレノストルム)を活用したEthereumのシャーディングシミュレーションを提案していた。同プロジェクトは、2018年3月にEthereum財団が発表した補助金リストに受賞者として明記され、5万ドルの助成金が配当された。BSCチームは、財団の研究チームと協力して概念実証「shardSim」の研究を進めているという。

バルセロナ・スーパーコンピューティング・センターのマレノストルム(プレスリリースより引用、以下同)

 Ethereumは元来、ネットワークのアップデートに関して、本番利用の前にテストネットを立ち上げ、仕様の検証を行ってきた。シャーディングの検証もテストネットで行われるが、併せてスーパーコンピューターを利用することで、複雑なシミュレーションを迅速に実施できる。例えば、システムの限界点の計測や、テストネットでは時間がかかるファイナリティの検証などに適するとしている。

 BSCチームは現在、Ethereum 2.0の初期段階の仕様と同等のものを実装し、「ビーコンチェーン」を展開したシミュレーションが可能とのこと。シミュレーター上でノード数と接続性を変動させたところ、接続性を下げるとブロックの伝播遅延が増大し、アンクルブロック(ブロック生成が同時刻だった場合の枝分かれ)の発生率の増大が見られたとのこと。これは接続性の低いP2Pネットワークの振る舞いに合致するという。

P2Pネットワーク上のノード数増加に伴う接続(ピア)数の変動

 バルセロナのスーパーコンピューター「マレノストルム」は、2004年にスペイン政府とIBMが共同で建造した。現在、24コアのIntel Xeon Platinumプロセッサ2基を備えた3456個の処理ノードを搭載している。15万コア以上のCPUと390テラバイトのメモリにより、11.15PFLOPSの演算能力を実現しているという。

 BSCチームは今後、シャーディングの実装を進めると共に、数千ノードといった大規模シミュレーションや、他のブロックチェーン仕様のシミュレーションの実現を目指す。多様な環境でのネットワークの運用による信頼性の検証や、同環境でのブロックチェーンネットワークの比較を可能にするとのこと。