仮想通貨(暗号資産)ニュース
世界29か国の法律を解説する「仮想通貨規制レビュー 第2版」発行
PDF版を無償提供。米・英・仏・独・日など主要国やタックスヘイブンでの規制を網羅
2019年10月10日 06:00
グローバルビジネスには必要不可欠である国境を越えた法律を理解するために、世界の主要国における法律の分析と関連情報を提供するThe Law Reviewsは10月8日、主要国および地域の仮想通貨規制を解説する「THE VIRTUAL CURRENCY REGULATION REVIEW 第2版」を発表した。書籍は有料だが、PDF版は誰でも無料でダウンロードすることができる。
「THE VIRTUAL CURRENCY REGULATION REVIEW 第2版」(以下、仮想通貨規制レビュー)は、米国、日本、シンガポール、香港などの主要国のほか、ケイマン諸島、マルタなどのタックスヘイブンを含めた、世界29の国と地域における仮想通貨規制の最新動向を解説する。各国の章は、その国の法律に詳しいスペシャリストが執筆をする。日本のパートは、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の河合健弁護士と長瀨威志弁護士が担当している。
2019年に入って仮想通貨は、いくつかの大手グローバル銀行によるブロックチェーン技術を介して運用される中央銀行支援の通貨の発行や、FacebookのLibra(リブラ)のような銀行口座を持たない人々による送金や決済を可能にする法定通貨と連動(ペッグ)する独自の仮想通貨が開発されるなど、新たなグローバル化の動きが見られるようになった。仮想通貨に関する規制が一国の法律ではカバーしきれない状況が顕著に現れ始めている。
仮想通貨規制レビューの第2版は、最近の法律および規制の変更と展開、およびそれらの影響の実用的な分析を提供し、国ごとに仮想通貨の領域で予想される傾向を洞察している。レビューは、仮想通貨の規制について司法管轄区の包括的なガイドとすることを目的としたものではないが、各管轄区域について、読者が現在の法的および規制環境を理解するのに十分な概要を提供する。
その内容について少し触れてみる。
アルゼンチン
アルゼンチンは、ラテンアメリカでは仮想通貨導入においては地域のリーダーであり、最も早く仮想通貨を採用した国の1つ。国の経済の不安定性と外国為替の制限の結果、インフレから貯蓄を保護し、外貨の購入と外国への送金の禁止を仮想通貨によって克服しようとしている。
アルゼンチンでは仮想通貨は禁止されていないため合法だが、政府は、課税対象、マネーロンダリングの防止(AML)、およびテロへの融資に関連する規制を発行している。しかし、政府は仮想通貨の発行、交換、または一般的な使用に関して特定の規制を実施しておらず、アルゼンチン市場における仮想通貨の影響と、その動向を観察中である。
政府の計画は、AML法を改正し、仮想通貨との特定の取引を公的機関に報告するために必要な機関として株式市場、ウォレット、ブローカーを含めることにより、Bitcoin(ビットコイン)の取引を規制することだという。遵守すべき義務には、KYC手順、疑わしい取引の監視と報告、およびデューデリジェンス(リスク調査)の実施を担当するコンプライアンス担当者の任命が含まれている。
ケイマン諸島
ケイマン諸島は、仮想通貨への投資を増やし、この分野での投資機会を活用している投資ファンドの形成を選択する世界的な管轄区域である。
ケイマン諸島の証券制度は、他の国や地域よりもICOおよびSTOに有利であり、実際に、ICO、STO、およびプラットフォーム開発会社のトークン生成手段として人気を得ている。ケイマン諸島経済特区は、ケイマン諸島での物理的なプレゼンスを確立し、スタッフを雇用するための環境等を提供する。
また、ケイマン諸島には、ICO、STO、仮想通貨交換所、仮想通貨に投資する投資手段に関する既存または提案中の法律や特定の規制はない。そのため、仮想通貨の分野で発生する問題を考慮した法律がなく、既存の法律の適用を検討する必要があるという。
マルタ
マルタは、世界におけるブロックチェーンと仮想通貨のシーンで行われている主要な開発の最前線にある。2016年、マルタ政府はブロックチェーンタスクフォースを設立し、分散型台帳技術(DLT)の機会を実現し、必要な安全対策を設定することを目的とした全国ブロックチェーン戦略の作成と実装を支援した
この戦略により、2018年に発行されたセクターに関連する新しい法律が誕生。マルタの法律の第590章(VFA法)、仮想金融資産法、革新的な技術協定とサービス法、マルタ(ITASA)、およびマルタデジタルイノベーション機関法、マルタ法のキャップ591(MDIA法)だ。また、これらの法律を制定しただけでなく、さまざまな利害関係者と当局が、これらの新しい法律の適用と実施を支援するガイドラインをリリースし続けている。
マルタは、ゲーム業界およびゲーム法の規制における先駆者でもあり、ライセンシーが十分に規制された堅牢なフレームワークを作成した。
Malta Gaming Authority(MGA)は、マルタのゲームコンテキスト内での仮想通貨とその採用に関するポジションを発行し、MGAライセンシーが特定の暗号通貨を使用するためのサンドボックスを作成。マルタ金融サービス機構(MFSA)は、仮想金融資産(VFA)エージェント、ICOの発行者、および暗号サービスのプロバイダーの役割をカバーする3つのルールブックも発行している。
最後に
仮想通貨規制レビューは、イノベーションを促進することを目的とし、規制イニシアチブの主要国および地域ごとに法律を分析し解説する。レビューを行うことで、同時に仮想通貨での取引および取引に関する一般的なリスクを軽減し、また、特定地域や機関で発生した決済不能状態が世間に広まり混乱を招く可能性となるシステミックリスクの軽減なども目指している。
レビューはすべて英語だが、世界の仮想通貨に関する法律についてすべて網羅していると言っても過言ではない。ここまで一堂に会した資料は貴重ではないだろうか。ぜひ一読をお勧めする。
- アルゼンチン
- オーストラリア
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- マルタ
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【掲載されている世界29の国と地域】
The second edition of The Virtual Currency Regulation Review, edited by Michael S Sackheim and Nathan A Howell of@SidleyLawis now available to read or download from our website:https://t.co/TWf8rh2ehN#TheLawReviews#VirtualCurrency#CryptoCurrency#Blockchainpic.twitter.com/yNy1tlz4mK
— The Law Reviews (@the_law_reviews)October 8, 2019