仮想通貨(暗号資産)ニュース

仮想通貨はグローバル金融領域に移行、影響力を過小評価すべきではない

CoinShares「Crypto Trends Report 2019」による報告=ビットコイン研究所

(Image: Shutterstock.com)

英米を拠点とするアセットマネジメント(資産管理)会社CoinSharesは、暗号資産(仮想通貨)に関するトレンドを概観するレポート「Crypto Trends Report 2019」を公開した。レポートは、11月に開催された「Invest:NYC」向けに作成された資料だという。130ページを超える長文レポートは、仮想通貨のこれまでと将来的展望について、広きにわたり図説を中心に解説、報告をしている。

レポートは英文によるものだが、会員制オンラインサロンのビットコイン研究所が、有用な情報をかいつまみ記事として要約しているので紹介しておきたい。

ビットコインのこれまで

過去40年間の資産価格のバブル、CoinShares資料より引用、以下同

Bitcoin(ビットコイン)は、2017年から2018年にかけて大きなバブルを経験した。価格が20倍(資料のまま)になるなど比較的大きなバブルだったが一年足らずで崩壊、インターネットバブルや米国の不動産バブルと比較すると、その規模は小さいと分析されている。

現在のビットコインユーザー数は3500万人から1億4000万人の間だと推定されているが、これは世界の人口の0.5%から1.8%程度程。過去5年間、我々はビットコインが何であるか、それがどのように機能し、どのような影響があるのかを正確に把握するのに時間がかかったという。

インターネットの発展は、地元企業がグローバル企業になるのを助け、真のグローバル市場を開拓した。しかし、金融は複雑な規制や通貨発行の独占の影響で、歴史的にローカライズされたものになっていた。ビットコインとデジタル通貨は、このパラダイムに初めて挑戦し、金融と通貨の観点からグローバルでオープンな仕組みを実現させようとしており、この影響力は過小評価すべきではないと報告する。

仮想通貨の将来的可能性

世界中で認識されている政府の腐敗(破損)

世界的に見て、90%以上の人が政府が一定以上腐敗していると感じているという調査結果が報告されているが、同様に、Facebookのプライバシーの侵害、金融機関の不祥事の告発など、企業への信頼も低下してきているという。これらのトレンドは、政府や企業と独立したビットコインにとっては、ポジティブ材料といえるという。

10年間のビットコイン:新市場、新ユースケース

2013年から2017年は、「消費者(アーリーアダプター)向けのビットコイン」のステージ。仮想通貨交換所、ウォレット、ペイメントプロセッサーが登場する。

2017年から2022年は、「機関向けのビットコイン」のステージ。機関投資家向けの取引サービス、カストディソリューション、レンディング、デリバティブの登場。

そしてレポートは、2022年以降は、「ビットコインを利用したバンキング」ステージとした。金融から、保険領域、国際送金などでのユースケースが想定されるとした。

また、より新しいサービスについても触れている。

分散型金融サービス、通称DeFi

直近では、ブロックチェーン上で金融の仕組みを再現する分散型金融サービス通称DeFi(Decentralized Finance)プロジェクトが活発になってきており、DeFiのプロトコルレイヤーが出現し始めているが、規制や法律の壁が今後の成長や普及の壁になる可能性があるだろうと、仮想通貨の新しいサービスを分析している。

これからの企業の形

物理からデジタルへの価値シフト

2019年、世界の時価総額上位10社の企業は、物理的なインフラや資源に頼らず、情報収集から人々の行動を分析し収益モデルを構築した企業が占めている。資源やインフラを所有していたかつてのトップ企業から、GAFAを筆頭としたテクノロジー企業へ価値の顕著なシフトが見られる。これらの企業の特徴は、データを独占し寡占化が進む一方で、デジタル世界でのネットワークを活用して金融機能、ペイメントを強化する方向に進んでいるという(集権的、コントロール重視。ビットコインとは逆の方向性だが)。

デジタル化は、結果、人々ではなくプラットフォームを強化してきた。物理からデジタルへの進化は高度に集中化され、我々のデジタル世界は小さな企業グループによって管理されてきた。そういった新たな企業がデータを所有し、行動を収益化、費用をかけずに成長を追求することによって現在の地位を築きあげたという。

インターネットは既存企業を効率化すると同時に、SNSとデジタル広告など全く新しいサービス、ビジネスモデルを創り出した。レポートでは、暗号資産でも似たようなシフトが起きると考えられるが、今のところ集権的な既存モデルへの応用が先行していると分析をする。

現在すでに仮想通貨デリバティブ、レンディング市場は存在感を増しており、今後もそのトレンドは続くだろうが、一方で規制もさらに強化される可能性が高いとレポートは結論づけている。