仮想通貨(暗号資産)ニュース

ERC-20開発者「ブロックチェーンのインターネット」数年内に実現と予想

経済産業研究所が次世代産業へのブロックチェーン適用論じた議事録を公開

(Image: Shutterstock.com)

経済産業省が所管する経済産業研究所(RIETI)は1月27日、RIETI主催のシンポジウム「ネクスト・ブロックチェーン:次世代産業創成のエコシステム」について、議事概要を公開した。同会は、2019年10月7日開催された。国内外から業界の有識者を招き、次世代産業システムとしてのブロックチェーンのあり方を議論した。

シンポジウムでは、RIETIの矢野誠所長、LUKSO創業者Ethereum開発者メンバーでERC-20の開発者として著名なファビアン・フォーゲルステラー(Fabian Vogelsteller)氏、IoTにおけるブロックチェーンプロトコルTaraxa(タラクサ)の開発者スティーブン・プー(Steven Pu)氏による基調講演、「IoTとデータマーケットプレイス」をテーマとするパネルディスカッションが行われた。本稿では、シンポジウム議事概要からブロックチェーンに関する特筆すべき内容を要約する。

基調講演は、それぞれ持ち時間15分とした。初めにRIETIの矢野所長が、同研究所のブロックチェーンに関する研究成果を解説する。

デジタルデータは労働と資本に次ぐ第三の生産要素

矢野所長は、デジタルデータは労働と資本に次ぐ第三の生産要素として注目を浴びているという。GAFAが自社の保有するデータを産業的価値として反映させていることが企業価値になっている点を挙げ、ブロックチェーンは第三の生産要素であるデジタルデータの効率的かつ公正な利用を可能にするとした。

ブロックチェーンに期待するのは、分権的にデータを管理する方法で、費用を削減しながら、データを統合的に使うことができるようにすること。第5期科学技術基本計画では、フィジカル空間とサイバー空間の統合が推進されている。それによって快適で活力があり、質の高い生活ができるとあるが、それを実現させる技術として期待されるのがブロックチェーンだという。新しいデジタルの世界を、我々のより良い生活につなげていくために、技術的側面からブロックチェーンが大きな期待を持たれているものと矢野所長はいう。その実現には技術、社会制度、投資があればいいわけでなく、全体を支えるエコシステムが必要だと述べた。

ブロックチェーンのインターネット

ファビアン・フォーゲルステラー氏は、Ethereumについての講演を行った。

ブロックチェーンは、2009年にBitcoinから始まり、それによって仲介者なしに、世界でデジタルによる価値のやりとりができるようになったという。2015年、Ethereumの登場で、ブロックチェーン技術は向上し、価値交換だけでなく、スマートコントラクトが利用できるようになった。スマートコントラクトは、Composability(構成可能性)の技術である。ここに来てブロックチェーンはオープンな経済インフラの中で構成要素をつくり、相互に関係性を持つことができるようになったのだという。

フォーゲルステラー氏は、いくつものブロックチェーンが必要だと語る。現在のブロックチェーンは拡張性が不十分であり、その解決策として「ブロックチェーンのインターネット」という概念を提案する。それは1つのブロックチェーンを拡張するのではなく、1つの共通プロトコルをそれぞれのチェーンで共有する方法だ。

Ethereum Virtual Machine(EVM)、Ethereum Web Assembly(eWASM)などは、共通プロトコルに近いイメージだとした。今、ほとんどのスマートコントラクトがEVMで動作しているが、フォーゲルステラー氏は、「ブロックチェーンのインターネット」が今後数年以内に成立すると予想する。その際には、業界別、コミュニティ別に専用で使われるプロトコルが実現しているだろうとのこと。

ブロックチェーンとIoTデバイス

IoTにおけるブロックチェーンプロトコルTaraxaを開発するスティーブン・プー氏は、これからのIoTについて講演を行った。

日常生活やビジネスで多く使われるようになってきたIoTは、ブロックチェーンを使うことでIoTデバイスにIDを付与することができるようになるとプー氏は語る。ブロックチェーンによってIoTデバイスは、資産を所有することが可能になり、取引ができるようになるという。

ブロックチェーンによってデバイスの信用があがり、公正なビジネスモデルを可能にする。また、オープンスタンダードを通じコラボレーションの推進がなされる。ブロックチェーンがもたらすのは、データの民主化であり、それにより競合他社間の協力が可能になるわけだ。競合同士でも安全な方法で協力体制をとることができ、供給側、需要側双方にとってより良い環境作りが可能になるとした。

「ネクスト・ブロックチェーン:次世代産業創成のエコシステム」の議事概要では、これらの基調講演に続くパネルディスカッションの概要などもまとめられている。興味がある方はご一読いただきたい。また、基調講演、パネルディスカッションなど一部セッションの映像はRIETIの公式Youtubeチャンネルで公開されている。