マンガでわかるブロックチェーン

第8回

ブロックチェーンでお賽銭? 〜マイクロペイメント

[企画・原作:森 一弥]
[作画:佐倉 イサミ]

主人公・仲元サラが派遣会社を通じてやってきたのはブロックチェーンを主な事業とする会社。ITにも疎く、ブロックチェーンの「ぶ」の字も分からないサラは、果たしてこの会社で生き残れるのか!?話題のブロックチェーン技術を漫画で解説します。

なお、本記事はアステリア株式会社のオウンドメディア「in.LIVE」にて掲載されたものを再編集したものです。

「あれれ?でもIoT機器とかが秒単位で決済をしていったら、いくら仮想通貨の手数料が安くっても割に合わなくないですか?」

「そうだな。だから普通はメインのブロックチェーンの外側で行う「オフチェーン」って方法が取られる。」

「おふちぇーん!?」

「特定の期間内に細かい決済を何回もするなら、最後にまとめて全額払えば手数料は1回分で済むだろ?だから、利用者は最初にデポジットを払っておいて、その中でお買い物をする。取引自体は複数回発生していても、最後にまとめてお釣りをもらう。」
「最初と最後だけブロックチェーン側に記録して、それ以外の細かい支払いは他でやるわけ。」

「おおっ、たしかにそうすると手数料がお安くなりますね!」

「実際の仕組みはもっと複雑だけどね。具体的に裏側はどういうシステムになっているのか説明してみようか。」
「わかりやすく、1ページ毎に購入できるマンガがあるとしよう。普通の取引だと、1ページめくる毎に取引が発生して、100ページあるなら100回手数料取られるのはわかるよな。」

「そうですね。マンガの1冊の値段より手数料が多くなってしまうこともありそうです。」

「なので、まず購入者と、書店の両者の署名がないと送金できない口座を作る。」

「へー。そんな口座も作れるんですね。」

「そう。マルチシグっていうんだけどな。そのアドレスから、期間を決めて終了時に全額返金するようなトランザクションを作って、書店側に署名してもらって保存しておく。」

「保存しておく?」

「ブロックチェーンのネットワークには流さないで、つまりハンコもらった書類を提出しない用な感じで手元に持っておくってことかな。」

「そうすると、いつでも返金可能になるんですか?」

「そうだな。で、返金可能な状態であることを確認できてからマルチシグアドレスに100ページ分の料金を送金する。」

「なるほど。先に払っておいて、使わなかった分は返金できるようなシステムなんですね。」

「ついでに不正をしようとすると全額没収されるようなしくみにもなっている。」

「全額没収!?なんだか複雑な方法ですけど、ブロックチェーンに書き込まないで取引を手元に持っておくことで取引回数を減らすのはわかりました。」

「そうか。まぁ、今の例だと一方通行だけど、お互いにデポジットを出し合えば2者間での取引もオフチェーンで出来るし、もうちょっと複雑な方法で他人を経由することで安全に取引する方法も考えられている。ライトニングネットワークとかなんだけどね。」

「ほえー・・・」

「まぁ、仕組みが詳しく知りたければ自分で勉強してくれや。とにかくオフチェーンで手数料を安く、しかも早く取引を確定できるわけ。使う人達は意識する必要はないけどねー。IoT機器同士の取引で使われるんならなおさら開発者だけが知ってりゃ良いことなんだけど。」

「ううっ、私にはハードル高そう… かれんちゃん、がんばってくださいっ!」

「ぬぬっ!?むずかしそう…。」
「仕組みをすべて知っていなくても、プログラムから利用できるライブラリとかあれば…。」

「そういうのも出てくるかもな。いろんな技術がだんだんと一般化していくように、使いやすくはなっていくんじゃないかな。もしくは全く別の解決策かもしれないけどね。」

「ブロックチェーン関連はややこしい仕組みが多すぎる。もっと簡単ならいろいろIoTと組み合わせて自動化できるのに…。」

「でもいろいろ自動化されると仕事がなくなっちゃわないですか?」

「なくなる仕事もあれば、全く新しい仕事も生まれてくるくまねー。」

「そうよねー。現に数年前までブロックチェーンのお仕事なんてなかったわよねー。サラちゃんだってそうでしょ?」

「たしかに!」

次回「ブロックチェーンで町おこし!? 〜スマートシティ(前編)」につづく!

今回の補習授業|ポイントと用語解説

漫画の原作者である、アステリア株式会社 ブロックチェーン推進室長の森が、今回のお話の概要や会話に登場したキーワードについて簡単に解説します!

  • マイクロペイメント
    一般的には「少額決済」のこと。店舗などでのクレジット決済できないような金額のことを言うことが多いが、ブロックチェーンの話では、1円に満たない超少額決済のことを言う場合もある。
  • オフチェーン
    (主にパブリックの)ブロックチェーンの外側で行われる技術のこと。特定の仕組みのことを言っているわけではなく、ブロックチェーンに付随する仕組みを全般的にオフチェーンという。
  • サイドチェーン
    オフチェーン技術の一つ。メインになるブロックチェーンの外側にさらにプライベートのブロックチェーン技術を組み合わせて取引するような仕組み。

企画・原作:森 一弥

アステリア(旧インフォテリア)株式会社 ブロックチェーン事業推進室 室長 ストラテジスト。2012年よりインフォテリア勤務。2017年3月までは主力製品「ASTERIA WARP」のシニアプロダクトマネージャーとしてデータ連携製品の普及に務め、特に新技術との連携に力を入れる。 2017年4月より新設されたブロックチェーン事業推進室にて実証実験やコンサルティングなどを実施。またブロックチェーン推進協会(BCCC)では技術応用部会を立ち上げ、技術者へブロックチェーンアプリケーションの作り方を啓蒙している。

作画:佐倉 イサミ

7月5日、東京生まれ。「春風ふるさと観光協会」(KADOKAWA)、自転車女子×ごはんシリーズ(「ときめきごはん」少年画報社)など連載中。自転車ブログ「まるしばポタリング記