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2020年提出の確定申告、仮想通貨は「前回と同じ」がダメだったり損する場合も

現物とレバレッジの分割必須。クリプタクトの無料ツールで自動的にデータ作成可能

更新 2020年2月13日 12:00
初出日時 2020年2月5日 10:30

クリプタクト代表取締役の斎藤岳氏

今年も確定申告の時期が近づいてきた。国内の仮想通貨交換所を利用する方には、1月中に「年間取引報告書」が届いていることだろう。この仕組みが成立したのは、前回2018年度(2019年提出)の確定申告からだ。仮想通貨が税制に組み込まれてから、今回が3回目の確定申告となる。曖昧だったルールは年々明確化が進められている。

サラリーマンの場合、原則として給与以外の所得が20万円より大きい場合に確定申告が必要となる。このとき、仮想通貨取引を行っていた場合には申告が必要だ。2019年度の確定申告期間は2月17日から3月16日の間(※1)。仮想通貨に関しては損益計算が必要となり、各仮想通貨交換所が発行する「年間取引報告書」を用いて各自計算し、確定申告書類に記入して提出すればよい。

※1:確定申告は原則として2月16日から3月15日の期間と定められるが、2020年2月16日および3月15日が日曜日であるため1日ずれる。

文字にすると数行のことだが、これがなかなかに難しい。今回も、昨年2018年度から微妙なルールの変更や追加がある。その点を踏まえて、2019年度の確定申告で失敗しないための方法を、仮想通貨の投資支援プラットフォームを提供するクリプタクト代表取締役の斎藤岳氏に伺った。

2019年度の仮想通貨確定申告で気をつけること

――「仮想通貨の確定申告は大変」と聞きます。たとえば去年は何が難しかったのでしょうか。

斎藤氏:「大変」の意味が2つあります。

まずは仮想通貨の損益計算です。これに関しては国税庁がルールを定めています。しかし、ルールがすべての取引を網羅しているわけではなく、ルール外の取引もあります。そういったものを個人レベルで判断するのは、確定申告の経験がある人でも難しいです。交換所の方から年間取引報告書が出ていると思いますが、株のように証券会社がすべて提示できるというわけではないですね。

最終的には、自分で計算しなければいけない部分が出てきます。そういった取引について、1つひとつ当時の相場などを確認して手計算しなければならない。件数が多いともうお手上げですね。

そしてもう1つ、仮想通貨特有の問題ではありませんが、確定申告自体が大変です。一般の会社員の方なんかは、会社の方で年末調整をやってもらっているはずですから、確定申告の経験があまりないでしょう。国税庁が手順を示してくれていますが、知識が全くない状態から作るのはなかなか大変です。

――なるほど。それに加えて、毎年微妙にルールが変わってきていますよね。今年はどうでしょうか。

斎藤氏:現行のルールは2017年に国税庁から公布され、これを基にした確定申告は今年度で3回目になります。大きなところでは今回変更はありません。毎年、不足箇所が補われているという印象です。

注意点として、今年度から現物取引と信用取引・レバレッジ取引は別計算になることが正式に発表されています。前年度の確定申告では、これらの簿価(帳簿価額)を分けることについて、定められていませんでした。そのため、現物とレバレッジの取引を混合して計算する人と、別個に計算する人がいました。今年度からは、必ず現物とレバレッジの簿価は別計算としなければなりません。

――前回、現物とレバレッジの利益を混ぜて計算していた人は要注意ということですね。

斎藤氏:そうですね。もう1つ追加のルールがあります。取得時期が不明の仮想通貨などの購入価格に関して、その購入原価を売却時点の価格の5%として計算できるようになりました。たとえば、1円で入手した仮想通貨があったとして、それを100円で売ります。通常、利益は99円になりますが、今年度からの新ルールを適用することで、このときの購入原価を5円として計算してもよいのです。

ほかには、ハードフォークで付与された仮想通貨に適用することも考えられます。ただ、「ハードフォークで取得した通貨は購入原価を0円とする」旨のルールがあるため、解釈の違いには注意が必要です。

――新ルールは、知っていると少しだけ得になる可能性があるということですね。これらを踏まえて、ユーザーさんに気をつけてほしいポイントはありますか。

斎藤氏:そこまで大きなつまずきのポイントは出てこないという印象です。今回の変更点も、弊社が提供している確定申告用ツールではすでに対応済みで、特に何も悩む必要はありません。気をつけて欲しいのは独力で確定申告を行っている方ですね。

それから、仮想通貨での店頭購入なんかは、当然交換所から出る年間取引報告書には含まれません。交換所とひも付いていないウォレットから直接支払った場合などを含め、ご自身で確実に記録して確定申告に含めてください。こういった取引も、国税庁の方で追跡が可能なので申告漏れには要注意です。

――2019年から2020年にかけて、いくつかのステーキングサービスが国内で開始されました。ステーキング報酬の扱いはどうなりますか。

斎藤氏:国税庁はステーキング報酬についてまだ定義していません。ステーキング報酬は株でいうと配当になり、つまりは収入だと考えられます。マイニングと同様に、獲得時の時価を参照し所得として計算するべきでしょう。

1分ごとの時価で損益を自動計算する確定申告補助ツール

――ここまで、2019年度仮想通貨の確定申告はどうなるのかをご説明いただきました。ここからは2019年度確定申告に対応済みだという御社の確定申告補助ツールについて教えてください。どんな特長がありますか。

斎藤氏:弊社のプロダクトは「grid@cryptact」として、4つの機能を持つサービスを提供しています。その中で、一般ユーザーさんが確定申告に用いるのは「tax@cryptact」です。仮想通貨の損益計算を簡単に行えるオンラインサービスとして無償で提供しています。また、必要に応じて有償にて税理士さんを紹介し、書類作成を依頼することもできます。

tax@cryptact(クリプタクト)
https://entry.cryptact.com/

特長としては、確定申告が初めての人も使えるよう、分かりやすさを重視しています。国内の仮想通貨交換所から、2019年分の取引内容をまとめた年間取引報告書がユーザーの皆さんの元へ届いていると思います。複数の交換所を利用している人は、それぞれ別々のファイルが届いているはずです。「tax@cryptact」では、それらのファイルをアップロードいただければ、自動的に確定申告用の損益計算を行います。データに抜けがなければ、その数字を確定申告書類に記入いただくだけで問題ありません。

仮想通貨の損益計算の課題。利用する取引所が複数となると、手計算での損益計算は難しい。

斎藤氏:ご用意いただくデータも、国内はもちろん、海外交換所を含めて40(2020年2月時点、随時拡大中)の仮想通貨交換所に対応しています。それぞれWebサイトのどこからデータを取得すればいいかというところまで案内しているので初心者さんにも安心してご利用いただけます。また、対応する仮想通貨は2800種類で、それぞれ1分単位での相場データを用いて損益計算を行うので、確度は高いです。年間で最大200万件の取引まで含めることができ、プロのトレーダーの方のニーズにも対応しております。

――「データに抜けがある」というのはどういう状況ですか。

斎藤氏:要因としてよくあるのが、知人から直接仮想通貨を譲ってもらった場合ですね。こういうものは交換所の年間取引報告書には当然記載されません。あるいは、2018年に取引を行っていたのに、2019年分のデータしかアップロードしていないとか。

たとえば、ビットコインを知人から受け取ったデータを含めず、年間取引報告書のデータのみを入力した場合、どこかで計算のつじつまが合わなくなります。ビットコインを持っていないはずなのに売っているとか。こうした場合に、「tax@cryptact」ではエラーメッセージを表示し、それを解消するための案内を出しています。

tax@cryptact」では、計算のつじつまが合わない時に未分類取引があると警告される。提示された過不足額から、未入力データを探ることになる。ウィザードにはよくある未入力データの例が示される。

斎藤氏:こういった未分類取引は「未分類解消ウィザード」を用いて解消します。ウィザードには計算が合わない仮想通貨の銘柄と枚数、金額、日時を具体的に表示します。その数字を頼りに、未入力の項目をユーザーさん自身に思い出してもらうことになります。ウィザードにはよくある事例としていくつか表示されるので、それをヒントにデータを揃えてもらうという形です。これは、第三者が見て分かる範囲でおかしいという点を指摘する機能になります。つまり、データ不足を解消しないまま損益を提出すると、すぐに分かってしまいます。

――いくつかデータ不足となる要因があるみたいですが、特に多いのはどういうものですか。対処法などはありますか。

斎藤氏:計算が合わない2つの原因は、先にも述べた取引所以外での取引を忘れていること、もう1つは取引所の年間取引報告書のデータ自体が間違っていることですね。特に海外の仮想通貨交換所のデータは、突き合せてみると間違っていることが少なくないです。たとえば、交換所によってはキャンペーンで交換所から付与された仮想通貨がデータに入ってないなど、交換所のデータに全部載っているとは限らないわけですね。

もし、どうしてもどのように入手したか分からないという場合には、先に説明したように新しいルールがあります。売却時点での相場の5%を購入原価としてつじつまを合わせることもできます。

――落とし穴があるわけですね。

斎藤氏:そうです。何か入力を忘れているものがあれば確実にアラートが出るので、この機能によってデータ漏れに気づく人は多いです。データ漏れがあると、実際の利益もずれてきます。実際よりも利益が高く出ていることもあって、その場合は損をすることになりますから、ご自身のためにも損益計算は正確にやるべきです。

金額がそろったら、最後に「tax@cryptact」が表示する仮想通貨ごとの保有枚数と、12月31日時点でのウォレット内の仮想通貨残高を確認してください。そこが一致すれば損益計算は正しく行えているでしょう。あとは算出された数字を確定申告書類に入力して、一般的な確定申告同様に書類を完成させるだけです。

tax@cryptact」で実現損益を計算。データをアップロードするとすぐに結果が出る。

――ほとんど自動で計算してくれるなら、エクセルを使って手計算でやるのに比べるとかなり楽になりますね。

斎藤氏:手計算だと、購入時と売却時の時価を調べるのが非常に難しいです。その点、弊社のサービスでは、1分単位の相場を用いて正確に計算できるのでご安心いただけると思います。

ここまでデータ入力の不備に気をつけるよう申し上げましたが、これにも対策があります。弊社は「portfolio@cryptact」といって、仮想通貨のポートフォリオ管理ツールを無料で提供しています。これは確定申告用ではなく、普段から使っていただくサービスです。複数の交換所口座や持っているウォレットを登録することで、保有する資産総額をほぼリアルタイムに確認できるというものになります。このツールを使って日々データを確認していけば、確定申告の直前になってデータ不足に陥るということはまずないでしょう。また、含み損益のリアルタイム計算や、実現損益のシミュレーション機能もあるので、日々のトレードや年末の税金対策に活用いただけます。

「portfolio@cryptact」の画面。複数の仮想通貨交換所の口座、複数のウォレットを登録することで、自身の総資産状況をリアルタイムで管理できる。

2020年度の確定申告に向けて

――2019年度の確定申告の進め方についてご説明いただきました。2020年度の確定申告に向けてやるべきことは何でしょうか。

斎藤氏:2020年度には資金決済法と金商法の改正法が施行されますが、まず話題となるのはそこでしょうね。STOの定義などがなされていくのではないかと思いますが、主には商品の取り扱いに関するルールが先行されていくものと考えております。そのため、税金には直接的な影響はなさそうです。

税金に関しては、昨年に仮想通貨取引の収益を申告分離課税にするという動きが関係団体から出ましたが、成立しませんでした。社会的な意義を説明できないと難しいでしょう。法律を改めることでイノベーションの促進があるとか、明確な動機付けが必要だと思います。それを上手くできるかで変わってくるのではないでしょうか。私の個人的な意見ですが、少なくともデリバティブに関しては、金融商品と同じ申告分離課税を適用することは本来筋が通っていると思っています。しかし、そこも含めて、どのような社会的な意義をそこに見出せるか、そこを説明していくことが肝要だろうと業界全体で考えていると思います。

来年に向けて利用者の皆さんに気をつけてほしいことは、交換所のキャンペーンで付与された仮想通貨や、マイニング報酬の取り扱いです。来年に限った話ではありませんが、これらは、発生時点の時価で収入として扱われます。

たとえば、マイニングした時点で、その仮想通貨が1億円の評価だったとすると、マイニングにより1億円の雑所得が生じます。

その後、実際の売却時点で2000万円だっとすると、仮想通貨売却損として8000万円発生し、マイニングと売却が同じ期であれば合計して2000万円の雑所得となります。しかし、売却が期をまたいで発生すると大変です。

仮想通貨売却損の8000万円がマイニングによる雑所得の1億円と合算できず、マイニングによる雑所得の1億円を認識した上で、次の期に8000万円の損失が計上されることになります。仮想通貨取引は雑所得に分類され、損失計上できないため、シンプルに巨額の損失を抱えることになります。

今回はすでに年をまたいでしまいましたが、次回2020年12月までには、一度しっかり計算して、こういった含み損益がないか確認するべきでしょう。その際、「portfolio@cryptact」は非常に役に立ちます。

――今回の確定申告はきちんと行い、次回2020年度にも備えていきたいところです。ありがとうございました。

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株式会社クリプタクト

2018年1月設立。創業メンバーの3人はゴールドマン・サックスにて、ヘッジファンドの運用や金融システムの開発を経験。2019年10月にはジャフコ、マネーフォワードなどから計3.3億円の調達を実施。仮想通貨の自動損益計算サービス「Cryptact」などを提供。
公式サイト:https://www.cryptact.com/