イベントレポート
ブロックチェーンへの需要に応えクラウドサービスを拡充するAmazon
Mirai Salon #8- ブロックチェーンによる新規事業開発
2018年6月15日 06:30
6月6日に開催されたイベント「Mirai Salon #8- ブロックチェーンによる新規事業開発」(主催:アドライト、共催・協力:EGG JAPAN(三菱地所))では、スタートアップ企業のALIS、大企業の中部電力と富士通、クラウドサービス提供企業のアマゾンウェブサービスジャパンがブロックチェーンへの取り組みを報告した。新しい事業領域に挑戦する各社の取り組みを個別記事で紹介する。
クラウドサービスで業界一番手のAWS(Amazon Web Services)をブロックチェーン活用のサービス構築に用いる事例が次々に登場している。このようなブロックチェーン関連のシステム構築の需要増加に対応して、AWSのブロックチェーン関連サービスも登場してきた。最新事情をアマゾンウェブサービスジャパン・ソリューションアーキテクトの塚田 朗弘氏がイベント「Mirai Salon #8」に登壇して説明した。
塚田氏は、同社の基本姿勢は「ユースケースやワークロードを限定しないこと」とし、ブロックチェーンに関してもそれは同様とした。つまり、小規模なブロックチェーンの検証から本格的活用までを支援する。「例えばEthereumをマネージドサービスとして提供するよりも、あらゆる活用に対応できることを目指す」と説明する。続いてAWS上のブロックチェーン活用事例を5件紹介した。
(1)IntelとT-Mobile。Intelが主体となって開発したブロックチェーン技術「Hyperledger Sawtooth」を活用し、T-Mobileがディレクトリサービス基盤を構築した。
(2)英国の中央銀行であるイングランド銀行はブロックチェーンの検証プロジェクトを実施した。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が参加。
(3)米国の大手仮想通貨取引所CoinbaseはAWSユーザーである。ファイングレインの権限制御などに特徴がある。
(4)Ethereumに関わるシステム構築で有名なConsenSysは、EthereumとIPFS(InterPlanetary File System、P2Pファイルシステム)のホスティングサービス「INFURA」を構築するにあたり、AWSを活用した。Ethereumのブロックチェーンはデータ量が急増していることが課題となっている。そこでAWSのDynamic IOPSの機能を活用し、必要に応じて帯域を広げ、より短時間で同期できるようにした。
(5)ConsenSysとAmazonは正式なパートナーシップを結び、共同で新サービス「Kaleido」を提供開始した。ブロックチェーンのSaaSを提供する。
AWSのサービスに目を向けると、ブロックチェーン関連リソースとして「パートナーズポータル」と「ブロックチェーンテンプレート」の2種がある。
「パートナーズポータル」は2017年12月に発表。AWSのパートナー各社が提供するブロックチェーン関連プロジェクトのショーケースである。
「ブロックチェーンテンプレート」は2018年4月に発表。EthereumとHyperledger Fabricの2種類のブロックチェーン技術を「5分で立ち上げられる」スターターキットである。塚田氏は「ブロックチェーンのインフラのリファレンスモデルとしてすぐ使える『動く教科書』」と表現する。対応するブロックチェーン技術の種類は今後増やしていく方向だ。
AWSは様々なエンタープライズユーザー、スタートアップ企業のあらゆるユーズを吸収しつつ成長してきた。このプレゼンテーションからは、ブロックチェーン技術へのニーズが急速に高まっていることが感じられた。日本国内でもブロックチェーン関連の取り組みは増えているとのことだ。
今回は、4本の記事でイベント登壇の4社の声を紹介した。このほか、イベント会場の提供元である三菱地所からは事業開発拠点「EGG JAPAN」の説明があり、またイベントを主催したアドライトからはブロックチェーン業界を概観するプレゼンテーションがあった。アドライトは世界のブロックチェーン・スタートアップ約70社の事例を集め、報告書「世界のブロックチェーン活用事例レポート」を刊行している。
登壇した各社が発信した情報の受け止め方は、おそらく参加者の立場によって大きく異なっていただろう。筆者としては、ブロックチェーンへの期待の多様性を浮き彫りにしたイベントだったと感じた。