イベントレポート

BCCCがシンガポールの仮想通貨・ブロックチェーン業界団体ACCESSと協定締結、日本にて調印式を開催

BCCC 記者会見

 一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)は7月6日、シンガポールの仮想通貨・ブロックチェーン業界団体ACCESS(アクセス)との連携協定の締結を発表した。同日、両国のブロックチェーン技術の普及と啓発に向けて協定を結び、日本にて調印式を行った。

 シンガポールよりACCESS代表のAnson Zeal氏を招き開催された調印式では、調印の前にAnson Zeal氏とBCCC代表理事の平野 洋一郎氏により、両国における仮想通貨およびブロックチェーン技術に関する状況が報告された。

BCCC代表理事の平野 洋一郎氏

 最初にBCCCの平野氏は、今回の協定締結にいたる経緯を報告。

 ブロックチェーン業界においてはシンガポールが、今、非常に注目度が高いという平野氏。仮想通貨領域では、中国や韓国、日本も含めて世界的に政府の関与・規制が厳しくなってきているが、シンガポールは先進国でありながら、政府が仮想通貨をいかに受け入れるか、いかに社会のインフラとして利用していくかを、考えているという。そしてACCESSもまたシンガポールの金融当局と組み、ブロックチェーンの普及に努めているとのこと。

 日本は、仮想通貨交換所「Coincheck」のNEM大量盗難事件以後、政府の対応が大きく変わり、規制が厳しくなりつつあり、現在は、仮想通貨のみならずブロックチェーン技術に対しても厳しい目が向けられ、世間は慎重になっていると平野氏はいう。その影響から、ここ半年はブロックチェーンに関して、物事を決めていく進捗が遅れているそうだ。

 そんな中で、日本のブロックチェーン関連企業や、ブロックチェーン技術を使ったプロダクトにチャレンジをしたいという人たちは、今、シンガポールに新しい活路を見いだしているという。国を越えてシンガポールの企業と一緒にブロックチェーンの開発を行っていく企業が増えていることもあり、ここで両国のブロックチェーンに関する団体が組むことで、さらにそのネットワークが広がり、アイディアも広がって、より結果が出せるようになるだろうと考え、今回の協定締結にいたったと平野氏はいう。

 協定内容は、相互の市場におけるブロックチェーンに関する情報共有を促進すること。また互いの協会に参加する会員同士の交流や情報共有の機会を創出すること。シンガポールと日本のブロックチェーンコミュニティーの関係強化を図ることを、主たる目的として挙げている。

 具体的な活動内容としては、現在、政府も一緒に取り組んでいるという、非常に動きの速いシンガポールのブロックチェーン業界にBCCCの会員企業、メンバーとともに訪ね、ワーキンググループの交流を図っていくとのこと。またACCESSが開催するイベントにも参加し、さらに交流を促進していきたいとのこと。

ACCESS代表のAnson Zeal氏

 次に、ACCESS代表のAnson Zeal氏より、ACCESSの活動内容の紹介、シンガポールにおける仮想通貨およびブロックチェーン業界の状況が報告された。

 まず今回の協定締結は、ACCESSにとっても、ブロックチェーン技術の普及、啓発をしていく活動のマイルストーンとなったというAnson氏。今後は、その活動をグローバルに発展させていきたいという。シンガポールのみならず、各国の団体と情報共有をしていきたいとのこと。

 設立から4年を迎えたACCESSは、シンガポール国内におけるブロックチェーン技術の普及、啓発を行いながら、ブロックチェーンコミュニティーの教育などに努めているとのこと。現在、ACCESSの会員数は260を超え、そのうちの150が法人とのこと。ちなみにACCESSは、いかなる人や企業など誰でも参加することができるエコシステムを確立していくことを使命として、活動を行っているという。銀行や金融関係のみならず、保険会社やスタートアップ企業など、あらゆる分野においてブロックチェーンの活用および推進をしていくことを目指しているとのこと。

 なおACCESSは、マレーシアでもACCESS Malaysiaとして、同様な活動を行っているほか、シンガポールのフィンテック関連のアソシエーションとの情報共有や、政府機関、中央銀行のサポートも受けている関係にあるそうだ。ACCESSの活動内容で得た情報ついては、MAS(Monetary Authority of Singapore/シンガポール金融管理局)へフィードバックというかたちで情報提供も行っているとのこと。

 ここでシンガポールにおけるブロックチェーンの近況と、当局の規制に関する話題に移った。

 現在のシンガポールは、ICO(Initial Coin Offering)のトークンの発行数、出来高が世界一であるとのこと。これは世界的に政府の規制がかかりつつあるICOに対する各国の変化の影響から、シンガポールがそのようなポジションになったとAnson氏はいう。

 シンガポール当局が仮想通貨交換業者などに対して最初に規制を発表したのが、2014年3月だそうだ。発表では、仮想通貨を媒介する業者は、マネーロンダリングやテロリストの資金などに関わるような段階において、顧客やトークン所有者に対して必ず本人確認を行わなければならないということになっているとのこと。

 またICOのトークンを発行する側に対しては、何か悪い行いがされていないかなど、コミュニティーを監視し、きちんとルールにもとづいた取引が行われているか、しっかりとウオッチすることを規制に盛り込んでいるという。

 それから3年後となる2017年にも当局より規制に関するアナウンスが行われたが、基本的なスタンスは2014年と何も変わっていないという。内容は、証券、先物取引に関する法規に準拠するということで、特に大きく変わった点はないとのこと。

 また2017年11月に開催されたフィンテック関連のイベントでも、MASからICOの事例というユースケースに関する発表もあったが、これまでの規制に準拠するという、こちらもまた前回同様、リマインダー的な内容であったという。

 このようにシンガポールでは、フィンテックやブロックチェーン技術に関しては、いろいろな変化がある中で、中央銀行を含む当局は、ACCESのような業界団体を含めたさまざまな団体から意見を吸い上げて、多くのフィードバックを得ながら状況を把握するが、当局は基本的にはイノベーションを促進するという観点ですべてに対応していると、Anson氏はシンガポールの現況を報告した。

 以上、両国のブロックチェーンに関する報告が行われたところで、最後にこの協定を締結するにあたり、コーディネーターとして両国を結ぶ橋渡しとして尽力を尽くしてきたTimetech FoundationのCEOであるAndy Mankiewicz OBE氏が紹介された。Andy氏は、長きにわたり日本に住んでいた経験と、現在シンガポールにてAndy氏自身もブロックチェーンに関するプロダクトの開発を進めていることから、両国の協会を結びつけたいと常々考えていたとのこと。

 調印式はAndy氏も立ち会いのもと、ACCESS代表のAnson氏とBCCC代表理事の平野氏により、協定を締結するサインが交わされ、協定が締結された。

最後にAndy氏も立ち会いのもと、調印

高橋ピョン太