イベントレポート

ブロックチェーン活用の不動産デジタルプラットフォーム事業でGA technologies社が特許出願

不動産に関する契約や取引内容などをスマートコントラクトで管理・自動化

 AI活用の中古不動産流通ポータルサービスなどを運営する株式会社GA technologiesは9月25日、東京渋谷のブロックチェーン領域特化型のコワーキングスペース「Neutrino」にてブロックチェーン技術を活用した「不動産デジタルプラットフォーム」事業説明会を行った。不動産デジタルプラットフォーム事業創出のため、不動産取引に関する新しいビジネスモデル特許、ブロックチェーン技術に関する特許を出願したことを報告した。

株式会社GA technologiesの代表取締役社長・樋口龍氏が冒頭であいさつ

 GA technologies社は8月にブロックチェーン技術による新たな事業創出を構想・推進する社内の新組織としてBlockchain Strategy Center(以下、BSC)を発足した。本特許出願はその基盤となる技術とのこと。東京本社を始め、各地に支社や営業所を構える同社だが、BSC開設に伴い「Neutrino」内に拠点を構えることも同時に報告された。

 同社は不動産デジタルプラットフォームで、不動産に関する契約や取引内容などをブロックチェーンの「スマートコントラクト」機能を利用して管理を行い、改ざんしにくい安全性の高い仕組みを作るという。スマートフォンやパソコンなどITを利用し、賃貸契約の申し込みから、契約、入居審査、ガスや水道など居住後の生活に関するサービスまで含めたプラットフォームを構築していくという。その第1歩として、賃貸取引向けサービスを2019年春には実証実験を実施したいとのこと。まずは、賃貸領域からスタートし、将来的には、不動産の売買への転用も視野に入れているという。

 不動産デジタルプラットフォームを構築することで、貸主にもメリットが生まれるという。たとえばこれまでは入居者が退去する場合は、新たに入居者を募集するために不動産検索サービスなどに、また一から不動産情報を用意し登録をする必要があったが、ブロックチェーンのスマートコントラクトを利用することで、すべて自動で行うことができるようになるという。入居希望者が多数いる場合などは、オークションのような入札方式を採用するなど、さまざまな方法を導入できるようになるという。ちなみに後者は、今回「プログラム、情報処理方法、情報処理装置及び情報システムの構築方法」と称し、貸主が複数の入居希望者から自由に対象物件を貸し出す入居希望者を選択することが可能となる、不動産取引に関する新しいビジネスモデル特許として出願をしている。

同社アドバイザーを務める森・濱田松本法律事務所の増島雅和弁護士

 システムの構築には、アドバイザーとしてブロックチェーンと不動産契約などの法律に詳しい森・濱田松本法律事務所の弁護士・増島雅和氏が参加する。増島氏は「ブロックチェーンのメリットはコスト削減という一面もある。管理コストが下がり、情報を共有することでオペレーションによるミスが起こりづらくなる。将来的には同じ帳簿にアクセスできることで、エコシステムも生まれるだろう」とのこと。

 実は取引や契約によるトラブルは、どの業界よりも不動産業界が、一番苦情が多いという結果が出ているとGA technologies社のBSC総責任者・水上晃氏はいう。「言った、言わない」のトラブルが多い業界だが、不動産に関する契約内容をブロックチェーンで管理していくことで、それらを回避することができるだろうとこと。

株式会社GA technologiesのBSC総責任者・水上晃氏

 水上氏はブロックチェーンで「業界全体をフェアで安全なものにしたい」と話す。ブロックチェーン技術による契約内等の管理については、「情報処理方、情報処理装置、及びプログラム」と称し、賃貸物件に対する契約に関する情報をブロックチェーンに出力が可能となるブロックチェーン技術に関する特許として出願をしている。

 なお、不動産デジタルプラットフォームにて使用されるブロックチェーンは、パブリック型のブロックチェーンではなく、プライベートブロックチェーンを採用しているとのこと。ブロックチェーンのトランザクションの承認方式については、同社が行うコンソーシアム型で運用することを想定している。

左から樋口龍氏、増島雅和弁護士、水上晃氏

高橋ピョン太