イベントレポート

ブロックチェーンの基礎が学べるFLOCブロックチェーン大学校の基礎コースを体験

全8回の短期集中型のスクール受講体験レポート

基礎コースを受講した新宿本校

 株式会社FLOCが運営をするスクール事業「FLOCブロックチェーン大学校」は、ブロックチェーン分野におけるプロフェッショナルの育成と輩出を目的とした、即戦力が身につくと謳うブロックチェーン総合スクール。最短3か月で基礎から実践的なブロックチェーン関連技術まで学べる短期集中型のスクールで、ブロックチェーンの基礎が学べる「基礎コース」と、専門コースの「エンジニアコース」「ビジネスコース」の3コースが開講中だ。実際にどんなことが学べるのか、どんなレベルの人を対象としたスクールなのか、今回、「基礎コース」を受講することができたので、体験をレポートしていきたい。

 FLOCブロックチェーン大学校は、週末もしくは平日の夜を利用して開講される、昼間働いているビジネスマンでも楽に通うことができる受講形態のスクールだ。各回90分の授業を全8回(専門コースは全12回)受講する。今回体験した基礎コースは9月1日と8日の2日間、週末土曜日のみを使い、1日4回、2日で計8回すべての授業を受講することができる日程で開講された。ちなみに次に予定されている基礎コースは、毎週水曜日の夕方に2回ずつ、計4週に渡って開講されるスケジュールとなっている。このように授業の受け方は、開催される日程によってスケジュールが異なるので、受講者は自分の生活スタイルに合った日程を選べるのがポイントだ。

講師はビットバンク株式会社の代表取締役社長CEO・廣末紀之氏

 基礎コースの講師を務めるのは、金融庁に仮想通貨交換業者として登録済みの仮想通貨交換所「bitbank」を運営するビットバンク株式会社の代表取締役社長CEO・廣末紀之氏。現役の仮想通貨交換業者の社長がブロックチェーンの基礎について講義をしてくれるというのが、受講する前にちょっと楽しみにしていたポイントだ。知識としてのブロックチェーンと、実務を経験している方の実用面からの見たブロックチェーンについて知ることができるいい機会だと思った次第。

早速、第1回講義を受講

 初日は午前10時集合、第1回の講義は午前10時30分スタート。今回の授業はすべてFLOCブロックチェーン大学校の新宿本校で行われるが、FLOCブロックチェーン大学校は有楽町校があるほか、日程によっては他会場で行われる場合もあるので、スクール開催日程をチェックする際は、しっかりと開催場所についても確認しておくこと。

 受講の際の席は先着順で好きな席に座っていく。前の方で聞きたいという人は、早めに行くといいだろう。本日の予定は、全8回の授業のうち1回から4回までの講義を受講する。配布される教科書は、2回分の講義が1冊ずつにまとめられているので、本日は2冊の教科書が手渡された。ちなみに本稿は体験レポートではあるが、授業内容について詳細は書かないつもりだ。内容を明かしてしまっては、スクールを受講する意味がなくなってしまうので、ここではその雰囲気と、どんなふうにして知識を得ていくことができるかなど、受講をする上で気をつけるべきことなどをお伝えしたい。

 最初の講義は「ブロックチェーンの世界」をテーマに、ブロックチェーンとは何かから学ぶ。まったくブロックチェーンに対する知識がなくても、問題ない。とはいうものの、まったくコンピューターに触れたことがない人や、スマートフォンを使ったこともないという人は向いていないかもしれない。少なくともブロックチェーンという言葉を聞いたことがあって、仮想通貨って何だろう? ぐらいの好奇心は必要だろう。もっともブロックチェーン大学校を受講してみようと思う人なら、問題はないだろう。

 ブロックチェーンについて講師の廣末氏は、「ブロックチェーン革命」というキーワードから解説を始める。1990年代はインターネットの発展により「情報革命」が起こり、世界中の「情報」を瞬時にほぼコストをかけずに送れるようになったという。2015年以降になってブロックチェーンの登場で、今度は情報だけではなく「経済的な価値」を瞬時にほぼコストをかけずに送れるようになったという。これが「革命」のゆえんであると解説をする。

 Bitcoin=ブロックチェーンではないという解説も興味深い。ここで簡単にブロックチェーンの仕組みについてと、仮想通貨について、そして耐改ざん性について、ざっくりと解説を行った。ざっくりというのは、のちの講義でより細かい解説を行っていくので、ここでは多少の疑問もスルーをしながら、まずは解説を聞くというスタンスで講義を聞くのが良いと思えた。講義を聞いていると、疑問などはキーワードとして頭に残るので、あとで「あ、あのことか」と気づきが生まれ、自分の中にも納得感が生まれ、結果、学べるという印象だ。

 ブロックチェーンとBitcoinの関係は、たとえるならばブロックチェーンはOSで、Bitcoinを始めとする仮想通貨はその上で動くアプリケーションのようなものだという解説もまた、廣末氏らしい解説なのだろう。とにかく興味深く、印象に残ったキーワードだった。

 また、ブロックチェーンはBitcoinに代表されるパブリックチェーンのほかに、コンソーシアムチェーン、プライベートチェーンといった3つの型があるということを学ぶ。それぞれどんな特徴があるのかを知ることができる。

 ここで廣末氏は、ブロックチェーンの用途についてその事例をいくつか紹介する。事例として、仮想通貨によるショッピングや電子マネー、地域トークンの発行など価値の発行と流通から、権利証明の非中央集権化の実現として土地登記システムや電子カルテの事例など一通りを紹介。シェアリングエコノミーについての話も聞くことができた。が、しかし、一番印象的だったのは、スマートコントラクトによるプロセス・取引の全自動化・効率化の実現という事例で紹介された、次世代の冷蔵庫という話だ。

 廣末氏は仮想通貨の特徴の1つである、マイクロペイメントについて解説する。仮想通貨は、1円以下の決済が可能であるという点が優れているという。0.1円、0.2円という支払いも可能なのが仮想通貨だ。マイクロペイメントとIoTを利用することで、たとえば冷蔵庫のドアの開け閉めに課金をすることで、冷蔵庫は無料で配れるようになるだろうという。とある調査では、各家庭における冷蔵庫のドアの開け閉めは、1日当たり35回なんだとか。冷蔵庫が耐用年数10年だとして、その開け閉めの回数で冷蔵庫の価格を割れば、冷蔵庫のドアを1回開けるごとに0.8円、冷凍庫は8.0円というような決済をIoTとブロックチェーンで行えば、冷蔵庫は導入時0円になるという仕組みだ。これは、IoTだけではだめで、いわゆる現在の中央サーバー管理ではコストも高く、またマイクロペイントが行えないというのだ。

 こうしたブロックチェーンの市場規模は約67兆円ともいわれているというのが、本日、第1回の授業における得た知識だ。その仕組みは、受講してわかるのである。

お昼休憩のあとは第2回から第4回の集中講義

ビジネスマンにとっての集中講義はありがたい

 お昼の休憩は1時間。ここで外食をするも良し、何かを買ってきたり、持ってきた物を食べるも良し、休憩時間は自由に出入りが可能になっている。

 午後の授業は2回から4回まで、間の休憩はそれぞれ15分。17時30分まで集中して授業を行っていく。もしかしたら、頭にやさしい甘い飴でも用意しておいたほうがいいかもしれない。

 第2回の内容は「ブロックチェーンの基礎技術」について。ここではBitcoinについて詳しく学ぶ。ブロックチェーンはBitcoinの誕生とともに生まれたことから、ブロックチェーンについて学ぶには、最も技術が進んでいるBitcoinのブロックチェーンについて知ることが重要であるという。

 具体的な項目としては、「電子署名」「P2P」「Proof of Work」など、ブロックチェーンの仕組みについてしっかりと学ぶことになる。ここでまず、午前中の講義の中でスルーしていた疑問の多くが理解できることになる。なぜブロックチェーンは非中央集権型で動いているのか、管理者がいないのにゼロダウンタイムであること、ブロックチェーンが改ざんできない仕組みについても知ることができる。

 第3回の内容は「ブロックの構造を知る」。ここでついに2冊目の教科書へと移る。かなり勉強した実感がわいてくる。

 「ブロックの構造を知る」では、ブロックチェーンのブロック単体の構造について学ぶ。「ハッシュ関数」や「マークルツリー」「ナンス値」について、通常のブロックチェーンの解説ではキーワードとして聞くような仕組みについて、しっかりと学ぶことができる。今日1日の講義の中で、いよいよ本筋に触れるという内容なので、聞き逃すことなく集中したい。

 ここではブロックがブロックヘッダとトランザクションリストから成り立っていることが最終的に理解できた。ブロックがどうやってチェーンとしてつながっていくかが理解できるようになっている。トランザクションは、「アウトプット」「インプット」がセットになっており、パズルと解答のような関係であることというのが印象的だ。またBitcoinがどうやって二重払いができないようになっているかなど、ブロックチェーンの革新的な内容についても触れるため、よりブロックチェーン、Bitcoinについて、自分の頭の中でも整理できるのではないかと思う。

 このあと、実際にBitcoinとはどういうものか、どうやって送金をするのかなどを、実際にウォレットアプリを使って試すという講義も待っている。受講者は、昼休みや休憩時間を使って、各自アプリを自分のスマホにインストールしておくことが推奨される。もちろんその方法については教科書にも載っているのと、休み時間にスタッフに相談することもできるのだ。

 ということで、1日目のいよいよ最後の講義となる。第4回の内容は「暗号技術とウォレット」についてだ。第4回は、さらに詳しくブロックチェーン技術の中核部分に触れていく。

 第2回で出てきた「電子署名」「P2P」「Proof of Work」について、暗号技術の面から徹底的に学んでいく。鍵とアルゴリズムについて、暗号の歴史から知ることができるのがポイントだ。公開鍵暗号方式の仕組みなど、ブロックチェーンの根幹となる技術の初歩の初歩から知ることができた。また、仮想通貨の受け渡しについて必要なアドレスについても知ることができる。実用面の知識として、ウォレットの種類についても学び、ここではセキュリティ面に関する知識に触れ、仮想通貨を保有することなど、これでほぼブロックチェーンの概要、仮想通貨の仕組みについてマスターできたことになる。

 以上で、1日目の講義はすべて終了。最後は、質疑応答の時間となり、今日1日の疑問点を講師の廣末氏に聞くことができた。もちろん各授業の合間に廣末氏に質問をすることも可能なのはいうまでもない。

Bitcoinのテスト送金ができるウォレットアプリ

2日目はブロックチェーンの詳細を学ぶ

 そして1週間後、先週と同様に午前10時集合。2日目となる本日の講義は、第5回から第8回まで。今日の講義を受講することで、基礎コースのすべてが終了となる。2日目も、前回同様の進行スケジュールとあって、食事のタイミング、トイレのタイミングなど、なんとなく余裕を持って授業が受けられる気がする。

 今週も、新たに教科書の配布が行われる。本日の講義分、2冊の教科書を手渡された。

 第5回の内容は「P2Pの構造と技術」となる。始めに先週の復習として、ブロックチェーンのP2Pの仕組みについて、再度確認をする。Bitcoinの仕組みはこの10年間1度も止まったことがないなど、ブロックチェーンの可用性、分断耐性に優れている点など、その仕組みについて、第5回ではさらに詳しく学んだ。

 ブロックチェーンの問題点も学びつつ、ブロックチェーンの命題ともいえるスケーラビリティの問題を解決するために、ブロックチェーンはさまざまな取組みが行われていることもここで学んだ。また、P2Pはブロックチェーンによる取引記録だけではなく、データの保管場所としても大きな可能性を秘めているのではないかと、その発展系についても触れられた講義となった。

 2日目の講義は、前回学んだことをさらに詳しく、より具体的な技術の話へと踏み込む形での講義となる。ここで、本日はお昼タイム。

授業中も質問はOK

 午後は、第6回「ブロックチェーン上の合意形成」の仕組みについて学ぶ講義だ。P2Pという分散型のシステムにおけるファイナリティについてなど、もはや専門用語の代名詞といえるような用語が次々と出てくる。もっともこれまでしっかりと聞いていれば、何の抵抗もなく受講できるレベルになっているのではないだろうか。

 ここでは「ビザンチン将軍問題」というブロックチェーンによって初めてなし得たネットワークにおける大きな問題の解決について、みっちりと学ぶことができる。これがブロックチェーン革命の神髄ともいえる話なので、特にこの回はしっかりと聞いておきたい。

 またパブリックチェーンや他の異なるコンセンサスアルゴリズムについても詳しく学び、気がつけばどんな問題にどのブロックチェーンで対応していけばいいのかなど、目的やシステムの規模によって、それらをどう使い分ければいいのかまで知見が広がっていく。

 これで、本日の1冊目の教科書も終了。残すは、あと1冊。

教科書も4冊目

 第7回は、「ブロックチェーンの分岐とアルトコイン」について学ぶ。ここでは、Bitcoin以外の仮想通貨について、ハードフォーク、ソフトフォークといったことまで知ることができる。そして、新たなコイン「アルトコイン」について学び、それぞれの特徴を知る。

 アルトコインの話は、プラットフォームとしての仮想通貨の話についても学ぶことができる。スマートコントラクト、トークンエコノミーなど、Bitcoin以外の仮想通貨の世界を垣間見ることもできる。それらは単なる知識としてではなく、具体的な内容、技術的な違いなど、仮想通貨のあらゆる面、可能性についても触れられている。

 第7回で印象的なのは、各仮想通貨の特徴についてとても詳しく解説される点だろう。なぜその通貨が生まれることになったのか、そんなことまでわかってくる。またここでは、ICOについても詳しく解説が行われる。仮想通貨の可能性について、より深く知ることができる講義だろう。

 いよいよ最後の講義となる、第8回「ブロックチェーンで実現する未来」は、文字通りブロックチェーンの未来の姿が見えてくる講義だ。

 ブロックチェーンにおけるスマートコントラクトがもたらす契約の自動化は、当事者がいなくても条件が満たされることで自動的に実行されるトランザクションによって、社会の仕組みが大きく変わっていく可能性について学ぶことができる。ここで、おそらく自分ならではのアイデアとブロックチェーンが結びつかないかなど、ブロックチェーンの活用方法について、なんとなく自分なりに考えられるようになるのではないだろうか。

 ブロックチェーンの発展により実現される中央管理者のいない社会とはどういうものなのか。スマートコントラクトによって自律的に機能していく仕組みとはなど、あらゆる可能性について学び、そして自分でも見えてくる内容の講義になっている。

最後にまとめて質疑応答の時間もあり

 長いようで短い、2日間に渡る全8回の講義はすべて終了した。なんとなく知っていた仮想通貨やブロックチェーンの仕組みについて、なんだかとてもスッキリと頭の中で整理された感じを受ける。みんながみんな同じ感想ではないだろうが、なんとなくブロックチェーンを知っているという人は、受講してみるのもいいのではないだろうか。

 なかなか良い体験ができたブロックチェーン大学校であるという感想だが、とはいえこのレポートを読み、バーンと受講料を払って自分も受けてみようとはなかなか思えないだろう。まずは、無料体験コースを受けてみることをオススメする。こちらは100分程度の授業で、ブロックチェーンについてその学び方なども含めた講義を受講することができる。

高橋ピョン太