イベントレポート

先進企業家が語る「マネーの未来、ビジネスの未来」仮想通貨の未来に確信あり

まずは不安要素の解消が重要「Future of Money~マネーの未来を探る~」レポート第3弾

 11月18日、日経CNBC主催のイベント「Future of Money~マネーの未来を探る~」が株式会社ビットポイントジャパンの特別協賛のもとJPタワー ホール&カンファレンス(東京・丸の内)にて開催された。本稿は、「Future of Money~マネーの未来を探る~」イベントレポート第3弾となる。

 今回のレポートは、今注目の先進企業家たちに聞く「マネーの未来、ビジネスの未来」をテーマにした、トークショー。マネーの未来について、仮想通貨の行く末を含めた未来のビジネスについて語られた、その内容を報告する。

司会進行は日経CNBCキャスターの瀧口友里奈氏

 司会進行は、日経CNBCキャスターの瀧口友里奈氏が務める。登壇者は、C Channel株式会社・代表取締役社長の森川亮氏、株式会社ビットポイントジャパン・代表取締役社長の小田玄紀氏、株式会社One Tap BUY・代表取締役社長CEOの林和人氏が招かれた。

ますは自己紹介から

 司会の瀧口氏より、1人ずつ紹介があり、最初に自己紹介となった。

C Channel株式会社・代表取締役社長の森川亮氏

 LINEの元社長で現在はC Channel株式会社・代表取締役社長の森川亮氏は、3年前に女性向けのメディアを立ち上げたという。ファッション、コスメ、料理など月間再生回数6億回超の女性向け動画メディア「C CHANNEL」を展開し、人気女性メディアとして注目されている。森川氏は、その他、社外顧問等、対外的な活動も多いという。

株式会社ビットポイントジャパン・代表取締役社長の小田玄紀氏

 株式会社ビットポイントジャパン・代表取締役社長の小田玄紀氏は、今回のイベントを日経CNBCと共に開催する特別協賛企業の代表。本日のトークセッション2度目の登場となる。ちなみに小田氏は、仮想通貨交換所「BITPoint」を運営する会社の代表であり、このセッションはBITPoint口座開設者限定のトークショーとなっている。

株式会社One Tap BUY・代表取締役社長CEOの林和人氏

 株式会社One Tap BUY・代表取締役社長CEOの林和人氏は、30年間金融のど真ん中で会社を続けてきたが、海外赴任経験も長く、ブラックマンデーはロンドンで、リーマンショックは香港で経験したという。5年前に帰国し、今の会社を立ち上げ、1000円から、しかもスマホで株が買えるというスマートフォン向け証券会社を経営する。

FinTechによってマネーの世界はどう変化してきたか

 最初に司会進行役の瀧口氏から、2015年末頃より国内でFinTechが盛り上がり始め、それから3年ほどたつが、この3年間でマネー世界はどのように変化してきたか、それぞれの立場からその感触を伺いたいという質問が投げられた。

 その問いに対して、まずは林氏がコメントした。30年間金融の仕事をしてきて思うのは、基礎はまったく変わっていないと思う。ただ、この3年間でペイメントの技術、決済部分に関しては進化していると思うと述べた。世の中、新しい技術が出てくるが、その本質に大きな変化は見られないのではないかとのことだった。しかし、その技術を応用することでいろいろなビジネスチャンスに恵まれる、というのが今の社会だという。

 BITPointの創業が2016年であるように、この3年内に起業している小田氏の周りでは仮想通貨を取引できる環境が増え、マネーの世界は大きく変わったてきていると思うとのこと。ただし、FXや証券の取引と比べると仮想通貨の進化はこれからなので、より進化できように努めたいという。

 瀧口氏いわく、C CHANNELとマネーは少し遠いテーマにも思うが、静岡銀行の顧問に就任しFinTech周りの知見に期待される森川氏は、その立場としてどうこの3年を見てきたか改めて質問を投げかけた。

 森川氏は、FinTechはイメージが先行していて、実際はよく分からないと思っている人が多いのではないかという。基本的には、テクノロジーの進化と共に、今まであったものがより使いやすく便利になるということだと思っていると続ける。

 ビジネス面でいうと「信用とデータ」に代表されるという。世の中にはいろいろな仕組みがあるが、それぞれ分散されていて、特にそれがデジタル化されていないと、それはそれで有効だが、そこのデータが活用しきれていない状況を生み出すという。これがすべてデジタルでつながりデータが蓄えられて、ものすごく速いスピードでデータがやり取りされるようになると、そのデータを活用することによって、さらに信用が高まり、仕事の処理が速くなり、24時間対応ができるようになるなど、そういう要素がたくさん出てきて、ビジネスチャンスも増えるのではないかという。

仮想通貨にとって今は逆風?

 次に瀧口氏は、仮想通貨に関する質問を投げかけた。2014年にMt.GOX事件、2018年にCoincheck、Zaifの仮想通貨流出事件など、一見すると逆風が吹いている印象もあるが、仮想通貨に関しては、どう見ているのか? と尋ねる。

 小田氏は、その通りだという。ちょうど1年前は、Bitcoinを始め仮想通貨がすごく注目されてマスコミでは「仮想通貨はこれから可能性がある」と、各メディアがこぞって取り上げてくれたが、それが今は「仮想通貨は危ない」という報道が増えたという。一方で、仮想通貨交換業者としては、これから本当に可能性があると感じているというのだ。たとえば金融庁とは、仮想通貨市場の育成について議論を行う機会も増えたし、法の整備が行われつつあるという。市場の安定化に向けた動きも活発であると感じているいう。

 仮想通貨の登場によって中央集権型の仕組みから、非中央集権型の仕組みへと移行していくだろうといわれているが、その場合は何か起きたときに誰が責任を取ることになるのか? という疑問を瀧口氏はさらに投げかけた。

 最近、海外ではDEX(Decentralized Exchanges)と呼ばれる分散型取引所という発想があるという。これは仮想通貨交換所を介して仮想通貨の取引を行うのではなく、個人個人が管理の上、直接取引を行うことができる管理者が存在しない取引所であるという。元々仮想通貨は国や中央集権が管理しない通貨であるという部分に価値があるといわれていたが、現状は我々仮想通貨交換業者が管理者になり、仮想通貨を預かってサービスを行っている状況だと小田氏は説明する。Coincheckさんやテックビューロさんの事件のように、仮想通貨交換所において仮想通貨が流出した場合は、その会社が責任を取ることになるという。これについては、テクノロジーと法律の観点により今後は変わっていくのもしれないし(仕組み自体)、それによって国や中央集権との関係性も変わっていくのではないかという。

 仮想通貨の今後について問われると、森川氏は仮想通貨の世界はいずれ来るだろうという確信はここに登壇する人にはそれぞれあると思うが、仮想通貨に対する不安というものをどう解決していくのか、法の制度的にも技術的にもまだまだ必要だなと思うとのこと。一方、ポイントであったり、アーティストやタレントを支援するために投げ銭をするようなサービスであったり、なんとなく近しいサービスも出てきている中で、今まで仮想通貨は投機的な部分が強く、それをどこで活用するのかという面で実用例が少なかったが、最近、そういうコンテンツやポイントのようなものと連携した新たな利用方法が出てきているので、このあたりはより具体的に進むような気がしているという。

 さらに森川氏は、話を続ける。インターネットの世界は、元々UGC(User Generated Contents)といわれる、人が参加をしてコンテンツを作るといったことが広がり、それがブログという文字系から、Instagramのような写真に移り、今はYouTubeという動画になり、YouTuberというのが新しい職業になっているが、これらはほぼすべて広告として成り立っているという。それが、最近は中国を中心に流行っている投げ銭という、アイテムを購入してコンテンツを提供する(多くはライブ配信者)相手に贈るような仕組みがあって、これは広告モデルではなく、現金で買ったものを相手に贈って、相手側の収入になるような収益モデルになっているという。そこに、電子マネーやポイントが入ってくることによって、もう少しすそ野が広がってくるというイメージがあるという。

 それは、C CHANNELのサービスともつながるような話なのかという瀧口氏の問いに対して森川氏は、可能性はあるが現状は法の制度的にグレーな部分があり、法の整備が進まないとできない面も多々あるという。しかし、海外ではどんどんそういう事例は増えているとのこと。

 そういった法の制度について、国にはどういうことを期待しているかと瀧口氏は聞く。

 小田氏は、ICOが現在、法の観点からすると国内では事実上できないと判断されているという。ただし、それについてはすでに議論されICOの方向性が見えつつあるので、近い将来何らかの答えが出るのではないかと期待するという。そこでまた、仮想通貨を取り巻く環境は、いい意味で変わっていくと思っているのことだった。

 個人の投資をより促進させていくという面では、林氏はどんなことを国に期待しているかと尋ねると、林氏は、恐らく新しい事例が出てくると、国もそれに対応した新しい制度を作って促進していくと思うので、ICOについても実現化、具現化されていくと、仮想通貨もどんどん法定通貨に近づいていくと思うという。アイデア次第なのではないかとのこと。それによって仮想通貨にも本当の意味の価値が付き、価値が付くことで法定通貨に近づくのだという。ただし、仮想通貨が法定通貨を駆逐する世界ではなく、あくまでも法定通貨を支える立場として仮想通貨は存在するのではないかという意見が印象的だった。

あっというまの1時間

 ほぼ1時間のトークショーは、あっという間に時間が経過し、ここで瀧口氏が、この会場には投資や起業に興味のある方がたくさん参加されているお聞きしているので、ぜひお三方に起業もしくは投資についてアドバイスをいただき、トークショーを終了したいという最後の質問が投げられた。

 日本は歴史上安定してきた国なので、どちらかというと変化よりも好きだし慣れていると思うという森川氏。しかし、この時代は変化しないと生き残れない時代になってきたのではないかという。なので、もう少し変化を楽しむような生き方というのを志望するといいのではないかとのこと。起業もそうだし、投資もそうだが、どうしてもリスクばかり気にしてしまうが、今は、変わらないほうがリスクなのではないかという。より一歩踏み出すことが安全対策なのではないかと思うというコメントだった。

 同じことを小田氏に尋ねると、小田氏は森川氏の話と重複するが、まずはやってみることが大切であるという。Bitcoinに関しても、0.0001BTCから投資ができるという。日本円にして数十円から仮想通貨は買えるので、とにかく自分でやってみるということが重要だとのこと。数十円を高い安いといういろいろな意見はあると思うが、自分で体験してみて、こういうものなのかと実感することが大事であり、自分が当事者になることで勉強になることも多くあると思うと回答をする。

 林氏は、基礎を勉強していけば、その先ほとんど難しいことはないという。基礎と応用という言葉があるが、英語にすると「Foundation and Applications」になるが、わりと世の中アプリケーションばかりで、みなさんアプリケーションばかりやろうとするが、基礎を理解することが大切で、それさえ理解してしまえば、実は金融も同じであまり難しくなく、結局、最後は人間が何をやりたいのかとというところに帰結するという。基礎を理解していれば、おのずとチャンスは訪れるものだという。突拍子もないアプリケーションをやるよりは、基礎をしっかりじっくりやって行くことをおすすめするコメントをいただいた。

 投資も仮想通貨も、じっくりと構えてこれからの変化に対応していくことが未来に華咲くものへと進化していくのではないだろうか。

 なお、「Future of Money~マネーの未来を探る~」イベントレポートは、第1弾として「ロジャー・バー氏、スペシャルトークでBitcoin Cashへの思いや仮想通貨の展望を語る」を、第2弾として「藤巻参議院議員も参戦、株式・為替・金市場マーケットの達人が仮想通貨の可能性を探る」の記事を掲載しているので、そちらも併せて読んでいただきたい。

高橋ピョン太