イベントレポート

金融庁が前回に引き続き「ICOに係る規制のあり方」を討議、ICOの課題を明確化

海外では78%のICO関連プロジェクトが詐欺「仮想通貨交換業等に関する研究会」第10回会議

 金融庁は11月26日、霞ヶ関・中央合同庁舎第7号館にて「仮想通貨交換業等に関する研究会」の第10回会議を開催した。金融庁が事務局を務める本会議は、学識経験者と金融実務家などをメンバーに、仮想通貨交換業者などの業界団体、関係省庁をオブザーバーとし、仮想通貨交換業などをめぐる諸問題について制度的な対応を検討するため、定期的に開かれている。

 今月は実に3度目の開催となる異例の過密日程にて進行する研究会では、前回に引き続き「ICOに係る規制のあり方」ついて討議が行われた。また10回目という節目を迎え、これまでの論点整理が行われ、改めて資料としてまとめられた。

 最初にICOに対して金融規制を検討するにあたり、基本的な考え方を整理した。

ICOについて整理

 ICO(Initial Coin Offering)とは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から法定通貨や仮想通貨の調達を行うことの総称であると定義する。現状は、トークン設計の自由度が高く、さまざまな性格のトークンが存在していることを報告する。ICOのメリットとして、スタートアップ企業や中小企業が低コストかつグローバルに資金調達が可能であることを挙げ、ICOトークンを発行することで新たな流動性を生むなど、既存の資金調達手段にはない可能性を指摘する意見も多いということを明確にした。

 一方、ICOの実態として報告されているのが、まずICOが有効に活用された事例がほぼないという指摘や、ずさんな事業計画と詐欺的な事案も多く、既存の規制では利用者を保護することが不十分であることなどが挙げられている。海外の研究者などによる報告では、78%のICO関連プロジェクトが詐欺(scam)案件であるという指摘があることも紹介する。

 これらを踏まえた上で、ICOに関する投資に対して金融規制は必要なのか、必要とする場合はどのような規制が適切であるかを検討するために、再度、規制内容について整理する必要性を明確にした。

 投資に関する金融規制を要するトークンについては、法定通貨で購入されること、もしくは仮想通貨で購入するが実質的には法定通貨で購入されるものと同視されるものは対象となることを示唆している。開示規制に関しては、どのような内容を開示すべきか、ICO特有の開示項目はあるかなどの検討についても考えること。詐欺的な行為や内容があいまいな権利の発行や流通を防止するために、トークン発行事業者について、またその財務状況のスクリーニングや業規制についても考察をする。

 さらに、一般投資家への投資勧誘の制限や、金融商品でいうところの取引所(証券取引所など)のような流通の場に関する規制、相場操縦の禁止やインサイダー取引などの不公正取引規制、また、それ以外に検討すべき点はあるかなど、整理すべき項目として洗い出し、これらを討議していくこととして論点の整理が行われた。

最後に

 そして最後に、これまでの研究会で議論されてきたICO以外の論点を整理してまとめた資料について、当局より解説が行われた。資料は「仮想通貨交換業者を巡る課題の対応」や「仮想通貨の不公正な現物取引への対応」「ウォレット業務への対応」についてまとめている。今回の研究会では、改めてその内容を確認し、次回以降の研究会にて、いよいよ仮想通貨に関する新たな制度の確立に向け、より具体的な議論に入ることを宣言をした。ただしその制度については、仮想通貨の規制をより強固にするというものではなく、あくまでも仮想通貨を取り巻く課題の解決に向けて議論を行っていくことを目的としている。

 なお、今回の討議内容や資料の解説については、別稿にて報告する予定であるため、併せて一読いただきたい。

高橋ピョン太