イベントレポート

仮想通貨EOSのブロックチェーン・DAppsの特徴は高速トランザクションと手数料無料

HKEOSのHugo Campanella氏によるEOSエコシステムの解説

 ブロックチェーンプロジェクト紹介イベントの企画・運営を行うBLOCKCHAIN PROseedは3月4日、東京・丸の内vacansにてトークイベント「dApps Gameから見るパブリックチェーン業界 2019春版」を開催した。

 本稿では、イベントレポート第3弾として、HKEOSのプロジェクトを主導するUX/UIデザイナーのHugo Campanella(ユーゴ・カンパネラ)氏による仮想通貨EOSの解説「EOSエコシステムについて」のトークセッションについて報告する。

 なお、本イベントレポートは、第1弾「DAppsゲームの課金体験から理想のDAppsについて語るメディアアーティスト、絢斗優氏」、第2弾「DAppsゲーム『My Crypto Heroes』は、2年先のデジタルアセットの設計も済んでいる」でそれぞれトークイベント前半を報告しているので、そちらも併せて読んでいただきたい。

日本ではほとんど情報を聞かないEOS

司会進行役の藤本真衣氏

 イベントの司会進行役であり、また企画者でもある藤本真衣氏は、3人目の登壇者に仮想通貨EOSに詳しい人を選んだ。今回はDAppsゲームがテーマということで、世界的にも注目されているEOSについて話を聞きたいと思ったという。Ethereumは日本でも詳しい人がたくさんいるが、EOSの情報はほとんどないので、今日はEOSについてみんなで学んでみようと思い立ったという。Ethereumはホワイトリストに載っているので、国内の仮想通貨交換所でも取引されているが、EOSやTRONはDAppsゲームでよく使われているものの仮想通貨として国内では取り扱いがないことから、ほとんど知られていないのだという。

 ということで、EOSとEOSのDAppsエコシステムについて解説をするのは、ユーゴ・カンパネラ氏。ユーゴ氏は海外在住ということで、今回はビデオチャットによる登壇となった。通訳は、BLOCKCHAIN PROseedではおなじみだという土田氏が務める。

ビデオチャットで参加するHKEOSのHugo Campanella氏
通訳は、土田氏

 ユーゴ氏は、HKEOSの共同創業者。これまでUX/UIデザインナーやフロントエンドのデベロッパーをやってきたという。ヨーロッパや香港の会社で働いてきたそうだ。数年前からHKEOSで、EOS関連の開発を行っているという。ちなみにHKEOSは、香港を拠点とするEOSブロックプロデューサーかつDAppsインキュベーター。マルタの非公開有限会社で、グローバルなチームで活動を行っているそうだ。

 EOSのメインネットは去年の6月にリリースされたという。現在、EOS上で小さなゲームやアプリがたくさん動き始めているが、もっともっといろいろな人にEOSとDAppsを知ってもらえるよう、香港でミートアップのようなことも行っているとユーゴ氏はいう。

EOSの技術面

 始めに、EOSの技術面について簡単に説明する。EOSは、開発言語としてC++を使うことができるという。JavaScript APIやライブラリ(EOS.JS)を使用することができ、現在、GitHubにて1万件以上の活動があるとのこと。またTestnetも用意されており、開発コミュニティも広がりを見せているという。

 EOSはオープンソースのスマートコントラクトプラットフォームでDAppsを開発することができるブロックチェーンだという。最大の特徴はトランザクションが非常に速く、3996TPS(Transactions Per Second:1秒間に処理できるトランザクション件数)を記録したそうだ。取引手数料が無料で、ブロックを発行できる人が事前に指定されていることにより拡張性に優れているという。コンセンサスアルゴリズムにDPoS(Delegated Proof of Stake)を採用し、ブロックを発行するのに適した人を1人から3人ぐらいを投票で選ぶことができ、コミュニティに適した人がブロックを発行することができる仕組みになっているという。

 ブロックの発行者については常に投票が行われており、21人の発行者が選ばれ、63人のブロック発行予備軍のような人が選ばれているという。投票は、トークンホルダーが行っており、署名はEOSネットワークで行われ、それによってボーナスが発行されているそうだ。

DAppsのトップ5はEOS

 現在、世界中のDAppsについて「DAppRadar」でユーザー数によるソートをすると、トップ5はEOSのDAppsだと、ユーゴ氏はいう。それぞれ6000人ぐらいのDAU(1日のユニークアクティブユーザー数)を持っているそうだ。

 EOSのDAppsを見てみると、ギャンブルであったり、特定の運営主体が存在しない分散型仮想通貨交換所(DEX: Decentralized Exchange)、RPG、メッセージをやり取りするもの、ミニブログなど、いろいろなものがEOS上に存在しているという。すでに種類も豊富で、世界ではDAppsが流行っているという雰囲気がランキングから見て取れる。

 DApps開発の動きとして、EthereumからEOSのDAppsへ乗り換えるという例も少なくないようだ。そういう企業も増えているとユーゴ氏はいう。例として、ギャンブル系の「EOSBET」、ヘルスケア系のブロックチェーンサービス「Medipedia」、チケットサービスの「Tixico」といったDAppsを挙げている。乗り換える理由は、やはりトランザクションのスピード、手数料無料、オンチェーンでもプロダクトを素早く動かすことができるスケーラビリティが保証されている、この3つの点にあるという。

 EOSの全体像を、そのようにユーゴ氏は解説を行った。

会場からの質問

 EOSについてひと通りの解説が済むと、ユーゴ氏は会場から挙がった「EOSには課題はないのか?」という質問について答えた。

 EOSの課題・問題点は、トランザクション手数料がかからないということで、多くのトランザクションが発生し、ブロックチェーンのサイズそのものがすぐに大きくなってしまうことだという。現在、EOSそのものを作ったBlock.oneという会社がその問題に対してのソリューションをいろいろと開発中であるという。ユーゴ氏自身は、Block.oneを信頼しているので、将来的にはこの問題も解決するであろうとのことだった。

 続いて会場からの質問として、今回のイベントの最初のトークセッションで、EOSはEthereumのEVM(プログラムの実行環境)と互換性があるという話が出ていたが、現在、Ethereumもスケーラビリティの問題解決に取り組んでいると思うが、将来、EOSとEthereumの関係性、特に互換性の部分はどうなるのか? という質問が挙がった。

 それについてユーゴ氏は、将来的にEthereumのスケーラビリティが改善されたとしても、まだ手数料等の問題などが残されていたり、トランザクションスピードについてもEOSのインスタントトランザクションと比べると遅いことから、EOSに魅力を感じるエンジニアも多いだろうとのこと。現在はブロックチェーン同士で競争するというよりも、既存のペイメントプロバイダとの競争をしっかりと考えていくことが大事だと思っているという。EVMの互換性については、当初、Ethereumはたくさんのユーザーを獲得していたことから、最初はそれに対応したほうがいいということで導入されたのが大きな理由だという。互換性については、しばらくは保たれるが、将来については現段階で特に何か決まっている訳ではないようだ。

 最後にユーゴ氏は、仮想通貨とブロックチェーンの普及について尋ねられると、それについてはそれぞれ別に考える必要があるという。まずブロックチェーンの普及については、DAppsがその鍵を握っているだろうという。ブロックチェーンをうまく活用したアプリケーションがどんどん登場することで人気も出てくるだろうと考えているという。仮想通貨の普及に関しては、各国、地域ごとに法律や規制があるので、そちらがまず整わないと、なかなか普及は難しいだろうとした。

 ユーゴ氏によるEOSの解説で、なんとなく世界中でEOSが注目され始めている理由が見えたのではないだろうか。

質問に丁寧に答えるユーゴ氏

高橋ピョン太