イベントレポート

TwitterとSquareの創業者ジャック・ドーシー氏、ビックカメラでビットコイン使い買い物

記者発表でブロックチェーンの可能性に言及

TwitterとSquareの創業者、ジャック・ドーシー氏

 米Twitter社と決済スタートアップ米Square創業者のジャック・ドーシー氏は、記者会見の場でBitcoinに関する記者の質問に答え「我々はAI(人工知能)やブロックチェーン技術の検討を進めている。米国向けサービスではBitcoinを取り扱っている。"Cash"というアプリで扱うことができる。テクノロジーの実績は持っており、潜在的な可能性はある」と発言した。

 また、記者会見に先立ち、ジャック・ドーシー氏はビックカメラ店頭でBitcoin決済で商品を購入した様子をツイートした。


 ジャック・ドーシー氏は、米Squareが米国内で提供する送金アプリ「Cash App」を使ってBitcoin決済を行ったとツイートしている。ビックカメラでは2017年4月に有楽町店と新宿東口店の2店舗でBitcoin決済を試験導入し、同年7月には全店舗でBitcoin決済を受け付けるようにした。ビックカメラにBitcoin決済のシステムを提供しているのは仮想通貨交換所を運営するビットフライヤーである。

 ジャック・ドーシー氏の来日の目的の一つは、Squareの日本展開をアピールすることだった。Squareの日本法人であるSquare株式会社は2019年3月26日、日本国内メディア向けに決済端末「Square Reader」の新型と、POSレジ「Square Stand」を発表した。冒頭の発言は、この記者会見でのものだ。

 この日発表した決済端末「Square Reader」新型は、Bluetoothによりワイヤレスでスマートフォンやタブレットと接続、クレジットカードの非接触決済にも対応する。価格は7980円。従来型のSquare端末は、イヤホンジャックでiPhoneに接続する形態だったが、現行のiPhoneにイヤホンジャックはないのでワイヤレス接続機能はぜひ必要だった。

 発表会のデモでは、ジャック・ドーシー氏がApple Pay対応のiPhoneと新型「Square Reader」を使い、非接触決済をワイヤレスで実施する様子を見せた。Square Readerは、この新型からFeliCaによる非接触決済にも対応する(ただし発表会ではSuicaに対応するか否かについての言及はなかった)。

 また、POSレジ「Square Stand」は、会計機能を備えたiPadソフトウェアとiPadを取り付ける台を組みあわせた製品で、価格は3万2980円。今回発表の2製品とも日本国内の中小事業者向けに展開する。「中小事業者は変化に乗り遅れがち。我々は彼らを支援する」(同社)。

Squareと三井住友カードが提携。手にしているのは新型ワイヤレス決済端末「Square Reader」

 Square株式会社には以前から三井住友フィナンシャルグループの資本を受け入れ提携していたが、今回新たに三井住友カードとの提携を発表。三井住友カードでは100名以上のバックアップ部隊を編成して拡販に協力する。この2019年秋には、消費税増税に対応した政策として政府がキャッシュレス決済をポイント還元への補助金などで支援する方針で、キャッシュレス決済サービス各社は今の時期をキャッシュレス決済端末拡販のチャンスと見ている。

 ところで、冒頭の発言のようにジャック・ドーシー氏はBitcoinには可能性があると見ているものの、Square株式会社が日本国内でBitcoin決済サービスを展開する可能性があるかという質問に対しては、ジャック・ドーシー氏は「日本市場やそれ以外の市場向けに発表できるものは、今日はない」と答えた。

 この回答を見ると、POSレジなど日本で提供するSquare製品が近日中にBitcoin決済をサポートするシナリオはなさそうだ。この日の記者発表は、三井住友カードと同席する発表会だったこともあり、クレジットカード決済にフォーカスした内容ではあった。「日本のキャッシュレス決済のほとんどはクレジットカード決済」との発言もあった。この発言はスマートフォンとQRコードを組みあわせたキャッシュレス決済サービス提供各社への牽制と見ることもできるだろう。

 とはいえ、Square製品の特徴は、「ソフトウェアにより、機能がシームレスにフリー(無料)でアップデートできること」(同社)。米Squareは、米国で提供するアプリ「Cash App」ではBitcoinを取り扱えるようにし、またBitcoinのオープンソース開発者の雇用を表明するなど(関連記事)この分野の取り組みを進めている。同社のPOSレジにとって競合サービスとなるリクルートグループのiPad対応POSアプリ「Airレジ」は、仮想通貨交換所を運営するコインチェックと組み過去にBitcoin決済を取り入れた実績もある。将来、仮想通貨に関連してなんらかのソリューションが登場する可能性はあるだろう。今後の展開に注目したい。

星 暁雄

フリーランスITジャーナリスト。最近はブロックチェーン技術と暗号通貨/仮想通貨分野に物書きとして関心を持つ。書いてきた分野はUNIX、半導体、オブジェクト指向言語、Javaテクノロジー、エンタープライズシステム、Android、クラウドサービスなど。イノベーティブなテクノロジーの取材が好物。