イベントレポート
30分のワークショップで討論しトークン経済への理解を深める
BCCC 第4回トークンエコノミー部会
2019年4月18日 11:04
一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)は4月16日、第4回トークエコノミー部会を開催した。部会は、株式会社カイカ・ブロックチェーンプロジェクトマネージャーの奥達男氏が講師を務めた。奥氏による「トークンエコノミーの基本構造と利用価値」と題した講演と、参加者がグループに分かれてトークンエコノミーの考察と模擬開発のワークショップを行った。
トークンエコノミーを考えてみよう!~考えて、発表して、学ぶトークンで形成される経済圏~
セミナー冒頭では、カイカの奥氏が15分でトークンエコノミーの簡単な解説と、後のワークショップに向けた説明とアドバイスを行った。カイカは、フィスコ仮想通貨取引所を軸とした仮想通貨交換事業のサポート、ブロックチェーンの技術活用を軸としたブロックチェーン事業、トークンやブロックチェーンを利用したプラットフォーム事業を行っている。
仮想通貨、とりわけEthereumやNEMなどでは、ブロックチェーン上でトークンと呼ばれる特定の価値を、個人や企業が独自に発行することが可能だ。Bitcoin(BTC)やEthereum(ETH)といった仮想通貨も広義ではトークンの一種となるが、便宜上EthereumやNEMなどのブロックチェーン上で発行できるERC-20トークンやモザイクトークンを「トークン」と呼ぶ。
トークンエコノミーは、「資産価値を電子化して運用し、その価値を活用・拡張・運用していくことで豊かな経済圏を築いていくこと」と定義される。このトークンを用いた価値のエコシステムが「トークンエコノミー」であると奥氏は説明した。
トークンエコノミーの好例として奥氏は、自動車メーカーのフォードが交通渋滞の解消を目的として設計し、特許出願中のCMMP(Cooperatively Managed Merge and Pass)トークンを紹介した。協調型車間距離維持支援システムと呼ばれるこの仕組みは、「道を譲ること」をトークンで価値化し、交通渋滞を解消しようというもの。簡単な説明となるが、渋滞中に急いでいる人がトークンを支払って、急いでいない人から道の優先権を受け取る仕組みだ。
ここからは、後のワークショップに向けたトークンエコノミーの検討方法に関するアドバイスとなる。実際のトークンエコノミーの構築に関して、企業向けに多数の提案を行ってきたという奥氏は、その事例を元に、検討すべき4つの要素を取り上げた。まず問われるのはマネタイズと、どうやって利用者を拡大するかということである。また、ブロックチェーンを利用する意義、トークンの原資をどうするのかといったことも重要になるという。
最後に、奥氏は次のワークショップに向けて検討するべきトークンエコノミーの題材を提示した。奥氏自身検討しているがなかなか答えが出ないのが、「電車の通勤ラッシュ問題」だという。2020年の東京オリンピックに向けて、トークンエコノミーの側面から、電車の混雑を解消したいと述べ、ワークショップでも是非議題として検討してみてほしいと述べた。その他、G20や増税、改号など、時事ネタを検討に取り込むことも面白いとして、ワークショップの方針を示した。
30分でトークンエコノミーを模擬開発するワークショップ
奥氏の講演を元に、20人の参加者が4チームに分かれ、それぞれが独自のトークンエコノミーを検討した。各チームには業界の前線で活動するお歴々が進行役として加わり、討論の舵取りを行う。討論は30分間で、討論後に各チーム代表者が5分以内でプレゼンテーションを行う。なお、議論の簡略化のため、奥氏が講演で解説したトークエコノミーの要素の内、「マネタイズ」と「トークンの原資」、「利用者の拡大」については今回のワークショップ中では無視する。
討論後、各班の代表者がプレゼンテーションを行った。奥氏のネタ振りもあって、オリンピックにちなんだ案が複数出ていた。家の外壁を広告スペースとしてトークン化して貸し出す、企業のCSR活動活性化を狙うボランティア活動のトークン化などが提案された。
各班の発表は、奥氏が用意した「いいねトークン」を用いて、参加者による投票で評価された。見事優勝したのは唯一オリンピックに関係なかった「社員評価の可視化を行うトークン」を提案したグループ。
優勝グループが提案したトークンを用いたピアボーナスの仕組みは、国内でも少なくない企業が実験を行っていたり、すでに運用を開始していたりで新しさはない。他班との評価を分けたポイントは、短時間の討論の中でトークンの流通の仕組みまで考慮していたことが考えられる。
トークンエコノミーでは、「利用者がトークンを流通させる」というのが大原則だ。しかし、その検討段階においてはトークンを流通させない方が利用者にとってメリットになるケースが生じてくる。ピアボーナスにおいて、持っているトークンの量が単純に給与に反映されるという仕組みでは、トークンを送らない人が出てくるのだ。
同班は、給与に加算される金額を、受け取ったトークンの量に応じて増加し、手元に残ったトークンの量に応じて減少すると設定した。トークンを送る行為に対してインセンティブを与え、逆にトークンを送らない行為に対してはディスインセンティブを与えることで、トークンの流通を強制する仕組みと言える。
多くの班が凝ったトークン化対象を提案する一方で、優勝班はその先の検討で一歩リードしていた。新奇性こそ薄かったものの、言い換えれば現実的なトークン化対象であり、イメージしやすかったことも評価に繋がったのではないだろうか。
優勝グループには、この部会のためにデザインしたという独創的なTシャツが贈られた。各班の表彰と記念品の贈呈、記念撮影の後、第4回トークエコノミー部会は幕を閉じた。