イベントレポート

イード、mijinにより運用中のトークンエコノミー「GameDays」について公開後の状況報告

BCCC 第2回トークンエコノミー部会で詳細を解説、今後の展開についても明らかに

 一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)は11月27日、第2回トークンエコノミー部会を開催した。今回は、「メディアにおけるトークンエコノミーの導入-ゲームを遊ぶことが価値を持つ社会へ-」をテーマに株式会社イード・執行役員・メディア事業本部本部長の土本学氏を講師に招き、同社が運営するゲーム情報サイトにプライベートブロックチェーン「mijin」を使って導入したトークンエコノミーの取り組み「GameDays Project」について伺った。

 講師には土本氏のほかにも、同社ゲーム事業部長の宮崎紘輔氏とプラットフォーム開発本部の日高秀穂氏が一緒に登壇し、イードの取り組みについて全体像を土本氏が、現場の具体的な状況を宮崎氏が、システムに関する技術面については日高氏がそれぞれ解説を行った。

イードについて

株式会社イード・執行役員・メディア事業本部本部長の土本学氏

 土本氏はプロジェクトの解説に入る前に、まず自社紹介を行う。イードは、IT・ビジネスニュース「RBB TODAY」や総合自動車ニュースサイト「レスポンス」などネットメディアを中心とする20ジャンル51のメディアを運営するほか、ECをはじめとするソリューションを提供するインターネットカンパニーであるという。メディア事業では、100万人に読まれるより1人の人生を突き動かす「MoveDeeper」をコンセプトに掲げ、各領域で深く尊敬されるような存在を目指しているとのこと。

イードのメディア事業コンセプト

 「MoveDeeper」として、ユーザー(読者)を育てていくことをメディアの機能としてできないかということにチャレンジをしていると、土本氏は語る。そういった視点で、2月には「仮想通貨の先生」という仮想通貨に関するメディアを立ち上げたが、その流れから今回のトークンエコノミーにたどり着いたという。

 イードは、8月にブロックチェーンを活用したトークンエコノミープロジェクト構想「GameDays Project」を発表した。同社の運営するゲーム情報サイト「インサイド」「Game*Spark」を対象としたプロジェクトだが、その中核となるスマートフォン向けアプリ「GameDays」の配信を10月24日より開始し、同プロジェクトが正式にスタートしている。

 その「インサイド」および「Game*Spark」の両メディアを統括しているのが、ゲーム事業部長の宮崎氏である。「インサイド」はコンシューマーゲームやスマートフォン向けゲーム、PCゲーム、VR等々誰でも楽しめるゲーム情報を届ける総合ゲームメディアであり、「Game*Spark」は国内外のコアなゲーマーに向けた世界最速ゲーム情報メディアであると、両メディアの違いを語る、宮崎氏。両メディアの読者層は3割程度が両方を読んでいるが、7割はまったく違った読者であるという差別化が図られているという。

株式会社イード・ゲーム事業部長の宮崎紘輔氏(左)とプラットフォーム開発本部の日高秀穂氏(右)

 話が前後するが、イードで仮想通貨に関するメディアを立ち上げる際に、取材や勉強のために出向いていたブロックチェーン関連のイベント先で、ブロックチェーンは仮想通貨だけではなく他にもいろいろと応用ができることに気づかされ、土本氏はトークンエコノミーにも興味を持つようになったそうだ。そこからメディアとトークンエコノミーがつながらないものかと意識するようになり、考察を重ねたという。その後、土本氏と宮崎氏は、2月に名古屋で開催された「Blockchain for Enterprise 2018」に取材で参加した際に、そこでプライベートブロックチェーンの「mijin」に出会い、興味を持ち、その場で「mijin」を開発するテックビューロホールディングスに相談をしたという。

トークンエコノミー実装のきっかけ

 トークンエコノミーを実現させるためのブロックチェーンにめどが立ち、最終的にトークンと相性の良さそうなのはゲームだという結論から「インサイド」と「Game*Spark」をベースにトークンエコノミーについて考えてみることにつながったと土本氏はいう。

 そこから導き出されたのが「ゲームを遊ぶということに価値を見いだすコミュニティをドライブするトークン」という考え方だ。

 宮崎氏いわく、ゲーム好きの子供たちにとってゲームは、いつも新しい世界を我々に見せてくれたし、我々に挑戦という意味を教えてくれ、日常に輝きを与えてくれる存在だったのではないかという。しかし、子供の頃「ゲームは1日1時間」と制限をされたり、「ゲームばっかりやっていないで勉強をしなさい」と叱られた人も少なくないのではないかという。そんな思いから、ゲームが好きな人々にとって「ゲームを遊ぶことが価値になる社会」の実現ができないだろうかと考えるようになったのだと、このプロジェクトの根幹となった思いを明かしてくれた。こうして立ち上がったのが、トークンエコノミーに向けたプロジェクト「GameDays」であるという。

 「GameDays」では、ゲームに関するさまざまなデジタルアセットを「mijin」でトークン化して可視化し、ゲームを遊んだユーザーが得をするトークンエコノミーの構築を目指す。「GameDays」の中核となるスマートフォン向けアプリを使ってトークンを発行し、「インサイド」「Game*Spark」と連動をさせるという。

 「GameDays」のコンセプトは、ゲームに対する熱量の可視化だ。ゲームをプレイした時間やそのゲームがどれだけ好きかなど、ゲームに対する熱量を可視化し価値に変えていく。プレイ時間のほかにも、ゲーム記事へのリアクション(いいねや共有のようなもの)にもトークンを発行したり、手に入れたトークンでいい記事を書いたライターに対して投げ銭を行うなど、ゲームで遊んでいる人、ゲームを紹介する人などを対象に、これまで価値として伝えにくかったものを、トークンエコノミーによって価値を付けていくという。

2種類のトークンを発行

 プロジェクト「GameDays」では、「Super Gamers Coin」と「Super Gamers XP」といった2種類のトークンが発行される。いずれも有償での販売や、法定通貨や他のトークンとの交換を実施する予定はないと、土本氏は断言をする。

 ゲーム記事へのリアクションなどで手には入る「SuperGamersCoin」は、貯めることによってサイト内の特典コンテンツ(トークン限定の特典マンガなどを予定)と交換が可能だという。また、投げ銭として利用できるほか、譲渡も可能になるという。

 一方の「Super Gamers XP」は、ゲーマーとしてのランクを表すトークンで、ゲームでいう経験値のようなものだそうだ。ユーザーがどれだけゲームに愛情を注ぎ込んできたかを可視化するものだという。こちらは譲渡不可であり、一定の保有数に達するとレベルが上がり、あるレベルに達すると参加できるイベント等を実施する予定だそうだ。

 すでに配信中の「GameDays」アプリでこれらは実現しており、PC向けのゲームプラットフォーム「Steam」と連携することで、ユーザーが遊んだゲームタイトルやプレイ時間を管理することもできるようになっている。アプリは、記事の閲覧やゲームプレイの記録によって2種類のトークンを受け取ることができるウォレットも兼ねている。トークンと交換できる特典等については今後公開の予定だが、トークンによってユーザーのゲームに対する熱量を可視化する機能は、すでに備えている。

「GameDays」のシステム構成

プラットフォーム開発本部の日高秀穂氏

 これらの「GameDays」アプリの開発やシステムの構築を担当したプラットフォーム開発本部の日高氏は、今回のプロジェクトでは、「mijin」を導入することでブロックチェーンを一から開発する必要がないことが大きなメリットであったという。「mijin」は、トークンの発行や取引など各機能がすべてAPIで提供されているため、設定から起動まで数分でできたという。ただし、どういうトークンを設計するか、どんなふうにトークンを使用するなど、その構想を設計する部分は大事だという。むしろ、ここに時間が費やされたそうだ。それさえ設計できてしまえば、エンジニアはブロックチェーンに関する開発をGET、POSTのみで作成ができるので、開発負荷も大幅に下げることができたという。

「GameDays」システム構成図

 日高氏は、システムの構成についても触れた。「GameDays」のシステムは、イードBC(ブロックチェーン)と呼んでいる部分と「mijin」の組み合わせで構成されており、ユーザー管理の部分をイードBCで行い、ユーザーとウォレットをひも付けている。イードBCと「mijin」間のアクセスは、外部からのアクセスができないような方法でセキュリティをあげているそうだ。またシステムは、現在、「mijin」のノード5台で運用中だが順調であるという。順調な運用状況の中で、今後はノードの処理限界を見極めるなど、どうチューニングをしていくかが課題だという。

 最後は、「GameDays」のロードマップについて明らかにして、トークンエコノミー部会は終了した。「GameDays」は、今冬、スマートフォンアプリのゲームプレイ時間に対するトークンの付与を予定しているという。また春までには、ゲーム情報閲覧画面にコメント機能を実装するそうだ。そして春には、他のゲーム機のプレイ時間についても対応する予定を打ち出している。宮崎氏は今回の登壇で、とにかく構想を広げすぎずに、まずはできることを確実に行っていきたいといっていたのが印象的だが、プロジェクトはその通り一歩一歩着実に歩み出しているようだ。

「GameDays」ロードマップ

高橋ピョン太