イベントレポート

セミナーでトークンエコノミー体験、登壇者や質問者に「いいね」トークンを送る体験会

見えない定性的評価を「いいね」数で可視化した「BCCC 第3回トークンエコノミー部会」

 一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)は2月4日、第3回トークンエコノミー部会を開催した。部会は、「トークンエコノミーを考えよう!〜体感して学ぶトークンで形成される経済圏〜」をテーマに、株式会社カイカ(以下、CAICA)の奥達男氏が講師を務める。今回は、部会の参加メンバーにトークンを発行し、セミナーの登壇者や質問者のディスカッション内容を評価し合い、「いいね」という意味のトークンを送り合う疑似的なトークンエコノミーを体験する。トークンを介し参加者の熱量を流通・可視化する簡易的な実験によるトークンエコノミー体験で、今後のビジネス展開の可能性を探る実験的な部会になった。

株式会社カイカの奥達男氏

 80年代より情報サービス事業を展開するCAICAは、2016年に「AI」「ブロックチェーン」「仮想通貨」を柱とするフィンテック事業を拡大。ブロックチェーン事業としては、仮想通貨交換所「フィスコ仮想通貨取引所」を軸とした仮想通貨事業のサポートを始め、トークンやブロックチェーンを利用したプラットフォーム事業を展開。同年、BCCCの発起メンバーとして参画するなど、CAICAを紹介する。トークンエコノミーという考え方を大上段に掲げると、経済学やマネタイズ、マーケティングといったさまざまな知識が必要になってしまうが、奥氏はそこまでの専門家ではないが、すでに100社を超す企業に対してトークンエコノミーやブロックチェーン関連の事業提案を行ってきた実績があるという。奥氏いわく、トークンエコノミーはまず体験してみることが大事だと話す。

「いいね」トークンの仕組みについて

 セミナーを開始するにあたり、今日の「いいね」トークンの仕組みについて解説が行われた。「いいね」トークンは、この部会の中で「いいね」と思った相手に「いいね」の気持ちを表すトークンを送り、みんなの「いいね」という気持ちが形に残る仕組みだという。これはトークンエコノミーの入り口に過ぎないが、トークンエコノミーとはどういうことなのかを体験することができると、奥氏は解説する。今回のシステムは、Webブラウザが起動できる環境があれば、PCに限らずスマートフォンでも参加が可能とのこと。

 まずは参加者に向けてQRコードが配布された。QRコードに書かれたURLにアクセスをすると「いいねトークン」サービスのログイン画面が表示される。参加者はここで、会社名とユーザー名を登録し、ログインをする。今回は、実験なので会社名もユーザー名も任意だが、「いいね」をしてもらうために、あとで自分のユーザー名をセミナー参加者に向けてアピールしなければならないので、ここは無難な名前にしておいたほうがいいだろう。

 「いいねトークン」サービスのログインが完了すると、自分以外の他のユーザーがカードになって現れる。今回ユーザーは、ランダムで何かの動物になっているが、自分のカードは表示されないため、自分がどんな動物カードなのかは不明だ。ただし、自分自身のID番号と設定したユーザー名は分かるので、「いいね」を送ってもらえるように何かを発言する際には必ずID番号とユーザー名を発言するのがルールになっている。

 あとは、参加者は「いいね」と思ったタイミングで、該当者のカードをタップして「いいね」をするだけ。今回は、どんなタイミングでも「いいね」をしても良いルールだ。ちなみに自分はパンダが好きなので、パンダになった人のカードに「いいね」をしてみた。

会場にてログイン中の「いいねトークン」サービス

 今回は、このような仕組みを使ってセミナーに参加し、その都度「いいね」をタップしながら講義を聞くことになった。「いいね」はリアルタイムで集計が行われているが、誰が一番「いいね」をもらったかは、部会の最後に発表される予定になっている。

「いいねトークン」サービスの仕組み

 今回の仕組みは、スマートフォンやPCの入り口となるWebブラウザ部分には、WebアプリケーションなのでAPサーバーを使い管理をしているという。「いいね」トークンの管理はブロックチェーン、ユーザー管理は通常のデータベースで行っているとのこと。ちなみにブロックチェーンについては、パブリックチェーンでは手数料が発生する問題があるのと、テストネットでは停止することがあるので、Ethereumのプライベートブロックチェーンを使用しているとのこと。ユーザーにひも付いているウォレットにはたくさんトークンが入っているので、遠慮なく「いいね」を押してほしい。ぜひ私にも「いいね」してくださいとアピールをする奥氏が印象的だった。

 ちなみにシステムは、この日のために突貫で一週間で作ったという。ただし、ブロックチェーンの部分は、とても簡単にできたという。どちらかというとカードのデザイン等、画面表示にとても時間がかかったという。

トークンエコノミーの定義

 セミナーは、このあと「トークン」や「トークンエコノミー」についての解説を奥氏が行った。それに対する質問などがある人は、その都度、ID番号と名前を発言前に付けてアピールをする方式で、セミナーは進んだ。

 トークンは、広義の意味においては「独自に発行された、価値ある何か」だと奥氏はいう。かなり抽象的な表現になってしまうが、例えばテーマパークに入れるチケットもトークンであるといえるし、電子マネーのようなものやポイントサービスのポイントもトークンといえるだろうとのこと。さまざまな専門家の「時間」をリアルタイムに売買できるサービスがあるが、この事例は「時間」をトークン化したトークンエコノミーサービスだという。

 電子マネーやポイントサービスもトークン、ブロックチェーン上で発行される仮想通貨もトークンだが、トークンエコノミーにおけるトークンはそれらではなく、既存のブロックチェーンを利用して発行されるものを指してトークンと呼ぶことが多いという。今回のセミナーで語っているトークンもそれを指すという。

トークンエコノミーのトークンは3を指すという

 今回の「いいねトークン」サービスの仕組みは、トークンエコノミーの入り口であるという奥氏。目指すのは、今まで可視化されていない定性的な評価を「いいね」の数で可視化し、これまで評価しきれていない社会への貢献度を透明・明確化し、その貢献度を証明することによって、人の価値を向上させ、人の可能性を広げることにあるという。そのためにトークンを使って経済に貢献することが、トークンエコノミーがもたらすものだと解説をする。

 では、「トークンエコノミー」の定義は何か? 実はトークンエコノミーの定義は、まだ定まっていない状態だと奥氏はいう。前述のようにこれまで明確になっていないものがトークンを発行し流通させることによって、なんらかが可視化され評価することができる状況がトークンエコノミーの1つだろうとのこと。

結果発表

 セミナーは最後に、お約束の「いいね」トークンの結果発表となった。結果は、やはり奥氏がトップという結果になり、安堵の表情を見せた奥氏の姿に笑いが起きた。奥氏は、今回のトークンエコノミー体験をいかし、次回以降でワークショップのようなことをやりたいと抱負を語り、部会は終了となった。今後、さまざまなトークンエコノミーが登場することに期待したいという。

結果はバルーンの大きさで表された。グレーが奥氏

高橋ピョン太