イベントレポート
ブロックチェーンを使ったサービス「cheerfor」で応援が飛び交う世界を作りたい
イーサリアムのプライベートチェーンで不正防止。JBA定例会議にて開発中サービスを解説
2019年7月30日 06:00
日本ブロックチェーン協会(JBA)は7月23日、東京で定例会議を開催し、株式会社ガイアックスの峯荒夢氏がブロックチェーンを活用した応援プラットフォーム「cheerfor」(チアフォー)を紹介した。
cheerforは、Ethereumのプライベートチェーンを利用した「お金を使わない投げ銭サービス」だ。投げ銭で個人や団体を応援する。峯氏は「まだ開発中なので変わる可能性がある」としながら、同サービスの詳細を説明した。
cheerforは応援を力に変えるプラットフォーム
英語の「cheer for」には応援する、声援を送るといった意味がある。峯氏は「成長する過程においては応援が必要」とする一方で、「行動に移すのは実際難しく、応援したい気持ちがあってもなかなかできない」と説明する。
たとえば対象者がクラウドファンディングで資金を募っていれば協力するのは簡単だが、そうでなければ金銭を贈るのは難しい。対象者が発表している商品を購入することも支援につながるが、間にいろいろな会社が入ると個人(対象者)に入るお金が少ないこともある。こうした課題を解決するのが「cheerfor」だ。
cheerforはTwitterアカウントと連携して動作する。応援対象のTwitterアカウントを選択し、メッセージを書いて送信すると、自身のTwitterアカウントに対象者へのメンションを含んだ応援メッセージが投稿される。同時にcheerforのブロックチェーンにも応援したことが記録され、対象者に「チア」という単位のポイントが貯まっていく。チア自体に貨幣としての価値はないが、貯まったチアを使ってライブ機材の貸し出しや写真撮影などの支援を受けられるというわけだ。
「応援したい気持ち」を流通させる
チアと交換できる支援は、企業から提供されるものだけではない。個人でもたとえば「ロゴ作るよ」「機材貸せるよ」「イベント運営手伝えるよ」など、自分のできることを提案し、対象者がそのなかから支援を選んで実行する。多くのチアを集めている人は企業から見ても魅力があり、より大きな支援を受けられるようになる。
「従来の投げ銭だと実際何に使ったのかよくわからなかったが、cheerforではチアを何の支援に使ったかも公開されるので、自分が送ったチアがどう役に立ったかがわかる」と峯氏は説明する。
「ブロックチェーンが普及して手続きがスマートコントラクトで自動化されたら、プラットフォーマーではなく個人が主役になるといわれています。たとえば民泊サービスなら、サービス提供者ではなくホストとゲストが主役になる。そうした“輝く個人”を応援する時代になってきます」(峯氏)
ブロックチェーンで信頼と安心を担保する
こうした善意で成り立つサービスは、不正への対策が欠かせない。cheerforは「応援」に価値を持たせてブロックチェーンに載せることで流通をオープンにし、悪意ある改ざんや削除が行えないようにしているという。もしボットを使って不正にチアを集めても、その行為自体がすべてブロックチェーンに記録されるので対策が可能なわけだ。
cheerforはEthereumのプライベートチェーンを利用している。峯氏は「承認型なので処理が速く、プライベートチェーンなのでGAS代(Ethereumの手数料)もゼロ。ユーザー体験の向上を重視してこの形を選んだ」と説明する。
応援が飛び交う世界を作りたい
支援を提供する企業にはどんなメリットがあるのか。ひとつは「応援」というポジティブな空気のなかで自社のサービスを提供できることだ。SNSはときおりフォロワー数の水増しなどの不正が話題に挙がるが、ブロックチェーンは改ざんなどの不正が困難なため、実在しないフォロワーに向けてマーケティングを行う心配もない。
「企業は、機材やスペースなどの遊休資産を使ってブランディングやマーケティングに活用できます。たくさん応援されている人を支えて、多くの人が喜ぶ意義のある活動ができることもモチベーションになるはずです」(峯氏)
cheerforは5月16日にプレスリリースを出してから現在も開発が続けられている。8月から9月ごろにオープンテストを行い、2019年末までに本格稼働する予定だ。峯氏は「人を応援するハードルを下げて、SNSに応援が飛び交う世界を作りたい」と期待を見せて説明を終えた。