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金融庁「高齢社会における金融サービスのあり方」を発表 〜資産寿命が生命寿命に届かないリスクなども

 金融庁は7月3日、高齢化が急速に進行する日本における金融に関する現状や、退職世代を取り巻く状況や抱える課題などについて、これまで金融庁が整理・分析をしてきた内容を公表した。「高齢社会における金融サービスのあり方」と題した、中間的な取りまとめを公開した。仮想通貨とは直接的な関係はないが、知っておくべきお金の話として、本稿ではその内容の一部を紹介する。

 金融庁は、2017年11月に「我が国の高齢化率は世界の中でも最も高い水準となっており、退職世代等に関する取り組みが重要な課題であることから、退職世代の金融資産の運用・取り崩しをどのように行い、幸せな老後につなげていくか、金融業はどのような貢献ができるのかについて、外部有識者の知見を活用しながら、検討を進める。」と、平成29事務年度「金融行政方針」を策定している。

 上記方針を踏まえ、金融庁は継続的に高齢社会が抱える課題などについて、学識経験者、シンクタンク、金融機関、業界団体などへのヒアリングを行いながら、整理・分析を進めてきた。今回公表された資料は、その中間的な取りまとめとなる。

 高齢社会における金融サービスのあり方を検討するにあたり、金融庁は始めに「高齢社会の現状とリスク」を分析している。

 日本は、現在60歳の人の約4分の1が95歳まで生きるなど、長寿化が進展しているとのこと。長寿化が進む中、我が国の高齢の各世帯が保有する金融純資産は、過去20年間横ばいで金融資産の伸び悩みが見られるという。ちなみに米国では、退職世代等の金融資産は過去20年で約3倍に増加しているとのこと。直近では、日本は退職世代等の保有する世帯あたりの金融資産は米国の半分以下だという。併せて、家計金融資産の約3分の2を60歳以上の世帯が保有するなど、資産の高齢化も進展しているそうだ。

 現在の高齢社会には、すでに資産寿命が生命寿命に届かないリスクがあるという。長生きした場合、貯蓄をすべて取り崩し、公的年金のみによって生活する世帯が増加しているのが現状だそうだ。また、十分な蓄えがある世代であっても、老後の収入・支出が見えない不安から、資産の計画的な取り崩しが進まない過度な節約も見られるという。

 さらには高齢者が地方で蓄えた資産が、相続を機に都市部で生活する相続人へと移転することから、地方から都市部への資産の流出が加速しているそうだ。高齢社会のリスクとして、高齢者の認知能力、判断能力の低下などにより、資産構成を社会の状況に応じて効果的に変更できない、家計資産構成の硬直化も課題であるという。

 こういった課題を解決、克服するために、金融庁では高齢社会における金融サービスに関する基本的な考え方として、これまでの業者起点の画一的な金融商品の提供から、デジタル化を生かした顧客起点のきめ細かなサービスの提供、B to CからC to Bへのビジネスモデルの転換が重要ではないかという。

 金融と非金融の垣根を越えた連携を行い、フィナンシャル・ジェロントロジー(金融老年学)といった知見の活用や金融以外のサービス主体とも連携したサービスの提供が必要であると。また、老後の不安解消方法として、自らの老後の収入・支出の「見える化」や、金融機関が提供している商品・サービスの「見える化」を通じて、より顧客のニーズに合った商品・サービスが選択できる仕組みの実現が重要であるとまとめている。

 なお、公表中の資料では、これらの現状とリスクをより詳細に、多くの分析資料をもとに、解説を行っている。また課題解決方法についても、今後の金融商品・サービスの指針となるようなヒントが多数掲載されているので、一読してみてはいかがだろう。

 金融庁は、今回公表した考え方をもとに各方面と議論をしながら、今後もさらに検討を深めていきたいとしている。

 また余談になるが、金融庁のホームページでは、こういった現状の分析以外にも、例えば仮想通貨関連で現在話題になっている「金融商品取引法」など、さまざまな資料がアーカイブされているので、こちらも基本知識として読んでおくことをお勧めしたい。