ニュース解説

イーサリアムのスマートコントラクトが実行できるイーサミントとは?

分散型自立組織プラットフォームに実装されたEVMモジュールの採用理由

(Image: Shutterstock.com)

先日、Ethermint(イーサミント)が公開されたという記事を読んだ。まだ、あまり馴染みのないものだが、イーサミントはEthereum(イーサリアム)と深く関係のあるものだけに、非常に興味深い。イーサミントとはどのようなものなのか? 今回は、イーサミントについて、その概要を学んでみたい。

イーサミントとは

イーサミントは、複数ブロックチェーンの連携を目指す技術Cosmosベースのチェーン上でイーサリアムのプログラム実行環境EVM(Ethereum Virtual Machine)を実現する。それは簡単にいうとイーサリアムエミュレーターのようなものだ。

さて、イーサミントの詳細に入る前に、先にAragon project(アラゴンプロジェクト)について触れておきたい。

Aragonは、イーサリアムから撤退し、独自チェーンに移行したプロジェクトだという。それはイーサリアムは遅く、手数料が高いのが理由であり、それらを解決するとされるイーサリアム2.0の実現がいつになるかわからないからだという。

Aragonは、スマートコントラクトを使って分散型自立組織(Decentralized Organizations)を作り、管理することができるオープンソースソフトウェアプロジェクトである。会社レベルの複雑な組織を分散運用できることを目標にしている。ということは、当然コードベースも大きくなるため、Aragonはイーサリアムではキツイという決断を下したという。

Aragonは、Cosmos-SDKを使った独自チェーンへの移行を発表した。

独自チェーンに移行するとなると、開発を一からやり直さなければならなくなる。これまでイーサリアム上で作ってきたスマートコントラクトのコードが使えなくなってしまうことになる。しかし、今回、独自チェーンへの移行に踏み切った背景には、イーサミントの存在があったからなのだ。

前述の通りイーサミントはEVMを実装していることから、イーサリアムで開発したコードをそのままコピペするだけで動くというのだ。過去のコード資産をそのままに、独自チェーンに引っ越しができるということになる。

Aragonの独自チェーンは、Cosmos-SDKを使って開発している。コンセンサス部分は、次世代コンセンサスエンジンと呼ばれているTendermintに置き換わるので、高速であるという。秒間数千トランザクションを出せるといわれているため、イーサリアムよりも速い処理が可能になる。また、独自チェーンであることから、手数料についても調整ができるため、すべてにおいてAragonのプロジェクトにとってはメリットが大きいことがわかる。

イーサリアムに残る価値とは?

今後もこのように独自チェーンに移行するプロジェクトが増える可能性があると予測する人も少なくないようだ。Aragonのようなインフラ的プラットフォームの引っ越しが進むだろうという。

また、DAppsによるゲームなどは、イーサリアムからEOSに移行したり、最初からEOSで開発されるものも多くなってきたという。

では、イーサリアムを使うメリットは何なのか? それは比較的優位なセキュリティにあるといわれている。

速度に高速性は不要で、遅くても良いからセキュリティを重視したいというプロジェクトや、大規模なコードやインフラではなく、ごくシンプルなコードや手数料でできる契約などは、イーサリアムを使うメリットがある。堅牢さを必要とする金融系のコントラクトが最後まで残ると見られているようだ。具体的にはMakerDAO(DAI)やCompaoundのようなレンディングプラットフォーム、セキュリティトークンの発行などに利用されている事実もある。

公共版イーサミントについて

今回、公開されたイーサミントは、モジュール版だという。独自チェーン開発者が自身のチェーンに組み込むためのモジュールであり、CosmosのEVMモジュールという位置付けとのこと。Aragonチェーンでは、勝手に第三者がスマートコントラクトをデプロイするようなものではないようだ。

しかし、現在は保留になっているが誰でもスマートコントラクトをデプロイできるいわゆる公共版というべきイーサミントについても計画があったという。

公共版では、イーサリアムの現状のステータスとコイン保有残高をすべてコピーするハードスプーンという形が計画されていたようだ。そうなると、イーサリアムクローンができあがるわけだが、(良い悪いは別にして)もし計画が実現されていれば、公共版イーサミントは、イーサリアム同様、誰でもスマートコントラクトをデプロイできるようになるものになっていたかもしれない。

最後に

まだまだ情報が少ないイーサミントだが、現在公開中のイーサミントの概要を知ることで、近い将来のスマートコントラクトのあり方、新たなサービスについての展開も見えてくるのではないだろうか。興味が湧いた方は、これを機にイーサミントについて調べてみてはいかがだろう。最後に何かのヒントになるよう、イーサミント関連の情報を掲載しておいたので参考にしていただきたい。

※参考記事
ビットコイン研究所
11月12日掲載「イーサミントと、イーサリアムの未来」より