ニュース解説

イーサリアムとライトニングネットワークをつなぐ新サービスREDSHIFTとは?

ライトニングインボイスをイーサリアムでトラストレスに支払い可能に

(Image: Shutterstock.com)

Ethereum(イーサリアム)のDEX「RADAR RELAY」を開発・運営するスタートアップ企業のRADAR社が、新サービス「REDSHIFT」の提供を開始した。REDSHIFTは、イーサリアムとBitcoin(ビットコイン)のセカンドレイヤー技術Lightning Networkをトラストレス(非中央集権)にブリッジすることができるツールとなる。

RADAR社は、これまでイーサリアムとERC-20トークンのウォレット間取引を可能にするDEXサービスを提供してきた。RADAR社のサービスは、必要に迫られ誕生した印象があり、実用性の高さが垣間見られる。

REDSHIFTの特徴

新サービスのREDSHIFTは、Lightning NetworkとBitcoinブロックチェーン、そしてイーサリアムなどサポート対象となる暗号資産(仮想通貨)ネットワーク間の転送を強化する。わかりやすく説明をすると、Lightning Invoice(請求書)をビットコインまたはイーサリアムで簡単に送受信できる支払いツールなのだが、アカウント不用で資金を管理することができるのが特徴となる。

REDSHIFTを組み込むことで、誰でもLightningのInvoiceを支払うことができるようになる。企業はLightningの支払いを受け入れてチェーンでキャッシュアウトが可能になり、ノードオペレーターは資産を効率的に管理することができ、また、開発者はクロスネットワークの支払い機能を独自のアプリケーションに統合することができるというもの。

より具体的なサービスイメージは、REDSHIFTのウィジェットにLightning Invoiceを入力し、Lightning Networkの支払いの代わりにイーサリアムまたはビットコインを送ることでLightning Invoiceの支払いを実行することができるというもの。今回、公開された実際に実行できるツールは、イーサリアム対応のブラウザーウォレット「MetaMask(メタマスク)」の拡張機能として提供されたものになる。

メタマスクのウィジェットとして機能するREDSHIFTは、起動後、Lightning Invoice(仮想通貨のアドレスのようなもの)を入力し、続けて支払いに使用する暗号資産を選択する。現在は、ビットコインまたはイーサリアムを選択することができる。あとは、「SWAP」ボタンを押し、トランザクションを完了させるだけ。これでLightning Networkの支払いが完了する。

REDSHIFTは、Lightning NetworkのHash Timelocked Contracts(HTLCs)の仕組みを応用し、イーサリアムとビットコインをトラストレスにブリッジする。メタマスクのウィジェットの動作の裏では、自動的にスマートコントラクトが発動し、Lightning上の送金のためにイーサリアムの変換がアトミックに行われ、中継者であるRADAR社への信頼やカウンターパーティリスクなしで、支払いが完了する。

REDSHIFTウィジェットはオープンソースソフトウェアであるため、誰でも、自身のアプリに組み込めるという点もまた重要なポイントだろう。

REDSHIFTは、より多くの消費者、開発者、および企業がLightning Networkにアクセスできるようにするという目的のもとに開発されたサービスだとRADAR社はいう。将来的に注目されているクロスチェーンソリューションへの一歩といった技術ではないだろうか。今後は、他のブロックチェーン、アセット、機能、統合をさらに追加していく予定とのこと。

REDSHIFTの将来

REDSHIFTの機能に魅力を感じる一方で、REDSHIFTのようなサービスが本当にLightning Networkの新規ユーザー獲得につながるのだろうかという意見もあるようだ。

REDSHIFTを自身のサービスに取り込み、実際にLightning Networkでお金を受け取るには、まずサービス提供者は最初にLightning Networkウォレットをインストールし、ビットコインをウォレットにデポジット、チャネルのセットアップ(REDSHIFTをつながるノードを選択)、そして何よりお金を受け取るためのキャパシティを「事前に」用意する必要があるからだという。Lightningの場合、支払いを受け取るのに事前に受取り用のビットコインをチャージする必要があるからだ。

つまり、利用するユーザーにとっては画期的な機能に思えても、実際にサービスを提供する側は、ある程度の知識とビットコインやチャネルの準備が必要なことから、その障壁は大きく、誰でも気軽にサービスを開発できるというものでもないと指摘する意見もある。

REDSHIFTは、クロスチェーンソリューションとして先進的な技術だが、現時点では技術的というよりも、どうビジネスにいかしていけばよいか、使う側にとってはまずビジネスモデルとしてどう確立していけばよいのか、そういった難しさもあるようだ(あくまでも広く一般的に使われるにはどうしたらいいかという観点からだが)。

※参考記事
ビットコイン研究所
11月20日掲載「EtherとLightningをつなぐRedshiftとLNのユーザー獲得の課題」より