ニュース解説
4月に半減期を迎えるビットコインキャッシュ。何が起きるのか?
採掘報酬の減少が市場価格に与える影響を解説
2020年に入って、仮想通貨マイニングの半減期が話題だ。まもなくBitcoin(BTC)が3回目の半減期を迎える。また、それよりも早くBitcoin Cash(BCH)にも初めての半減期が到来する。本稿では、これまで仮想通貨 Watchで取り上げてきた記事を元に、半減期とはどういうもので、何を目的にいつ実施されるのか、仮想通貨の利用者にはどのような影響があるのかをまとめる。
半減期とは、仮想通貨マイニングの報酬が半分(半減する)になるタイミングを指す。半減期は意図的なものだが、その仕組みと理由については後述する。先に、半減期の実施される時期について説明すると、Bitcoin Cashは、Bitcoinを起源とする仮想通貨であることから、どちらも半減期のタイミングは、同じブロック番号63万ブロック目で実施される仕様になっている。しかし、その実施日は仮想通貨のグローバルランキングサイトCoinGeckoの「Bitcoin半減期カウントダウン」「Bitcoin Cash半減期カウントダウン」サイトによれば、Bitcoinは5月11日前後、Bitcoin Cashは4月7日前後に迎えると予測される。Bitcoin Cashのほうが1か月近く早い(2月25日現在)。
予定ブロックが同じであるにも関わらず、Bitcoinよりも先にBitcoin Cashに半減期が訪れるのは、ブロックの平均生成時間が異なっているためだ。BitcoinとBitcoin Cashには、ブロックの生成時間が10分に1回となるよう、マイニングの難易度を調整する仕組みがある。だが、両者のマイニング難易度の調整方法は異なる。
Bitcoinは、2週間に1回(2016ブロックに1回)の頻度で、その難易度を調整する。それに対してBitcoin Cashは、は直近1日程度(144ブロック)のハッシュレートに合わせ、ブロックごとにマイニング難易度を調整する仕様を持つ。そのため、取引量の増加が続くと、Bitcoinのほうが、ブロック生成時間により遅延が生じやすいのだ。
ちなみに前述の半減期カウントダウンサイトは、ブロックチェーンのこれまでのブロック生成時間を平均化し、独自の計算方法を用いて63万ブロック目の到来時期を予測するものとなる。カウントダウンサイトによって、予測時期は異なる。参考までに、仮想通貨交換所Binanceの「Bitcoin半減期カウントダウン」サイトを紹介すると、同サイトではBitcoinの半減期を5月10日前後と予測する。
半減期とは
半減期とは通貨の発行総量を制御するための仕組みだ。BitcoinとBitcoin Cashは、発行総量の上限が2100万枚に定められている。それ以上は、一切発行しない決まりになっている。新規に発行されるBitcoinもしくはBitcoin Cashは、どこから来ているかというと、マイニングによって生み出されたマイナーへの報酬分がそれにあたる。マイナーが得るブロック報酬を、特定の周期で段階的に減少させていくことで総発行量の制御を行うというのがBitcoinやBitcoin Cashの考え方だ。
Bitcoinの2009年1月のリリース当初のブロック報酬は50BTC。2012年11月28日に最初の半減期を迎え、25BTCになった。その後、2016年7月9日の半減期で12.5BTCとなり、現在に至る。2017年8月1日に誕生したBitcoin Cashも、現在のブロック報酬は12.5BCHだ。半減期は4年に1度訪れると説明する文献も見られるが、それは間違いだ。正しくは、21万ブロックごとに半減期を迎える仕様になっている。次回の半減期を迎えることで、両者のブロック報酬は6.25BTC、6.25BCHとなる。なお、マイナーはマイニングによって、ブロック報酬に加えて利用者が支払う取引手数料も報酬として得ることができる。
Bitcoinの仕組みでは、この段階的なブロック報酬の減少が、都度半減と定められているため、そのタイミングを指して「半減期」と呼んでいる。
半減期後、Bitcoin Cashの報酬はどう変わる?
予測通りにブロック生成が進めば、Bitcoin Cashは4月7日前後に半減期を迎え、マイニング報酬は6.25BCHとなる。また、Bitcoin Cashはマイニング報酬の5%を徴収し、インフラの持続的な開発資金としてエコシステムへ分配する仕様を発表しており、マイナーの同意が得られた場合、本仕様を導入するとしている。最新版のノード運用ソフトウェアには、その仕様は実装されている。適用開始時期については未定だが、マイナーの同意が得られれば、適用されることになる(関連記事)。
半減期が起きるとどうなるか
半減期はその仮想通貨の市場価格に大きな影響を与える。過去の半減期で、Bitcoinに何が起きたかというと、半減期が近いことに起因する市場価格の値上がりがあった。これは、半減期が訪れるとマイニングにより新規に生成される単位時間あたりの通貨量が半減するため、通貨の希少性が向上すると見られているからだ。通貨の希少性が高まれば通貨単位あたりの価値は高くなる。よって、それを目当てに通貨の買い手が殺到する。結果として、半減期の実施前に市場価格の上昇が起きるのが通例となっているようだ。
これまでに半減期のあったBitcoinやLitecoinなどの仮想通貨は、半減期による市場価格の上昇は、およそ2か月から数週間前までの間にピークを迎える。その後、暴落し緩やかに価格が低下。半減期の実施日以降も一定期間価格が減少し続ける傾向があった。
では、Bitcoin Cashはどうなのか。2月25日の時点においては、半減期による市場価格の上昇らしき動向は見られていない。この傾向は今回、Bitcoinにおいても同様だ。
一方で、市場価格が下がる可能性を示唆する意見もある。ビットコイン研究所が1月5日に掲載した記事「BCHの半減期について」によると、半減期によるマイナー報酬の減収は収益性が悪くなることを意味しており、マイナー視点からすると、より収益性の高いものにこぞって移行してしまうタイミングにつながる可能性があるという。Bitcoin Cashのマイナーの例でいえば、同じASICを使ってマイニングができるBitcoinに移行してしまうマイナーもいるのではないかという見方だ。Bitcoin Cashの半減期時点では、まだBitcoinの報酬は半減していないため、なおさらだろう。
マイナーが減ってしまうと、PoWをコンセンサスアルゴリズムとする仮想通貨は、ハッシュレートが下がる可能性が出てくる。ハッシュレートの低下はセキュリティの低下にもつながるため、その影響を受け市場価格が下がる可能性もある。
つまり、これらの動向を予測するのは難しく、結論としては半減期というキーワードで過去の通例をうのみにするのは危険であるということ。あくまでも個人の意思によって決断を頂きたい。しかし、半減期というタイミングを経験するには、いい機会となりそうだ。ここ数か月は、半減期に注目したい。
2020年2月28日 06:00