イベントレポート

GMO、Ethereum採用のPaaSによるクラウド型ブロックチェーンサービス概要を解説

ブロックチェーンの3つの問題を「Z.com Cloud ブロックチェーン」で解決

このセッションは12Fのプラネタリウムで行われた

 9月10日、渋谷区文化総合センター大和田(東京都渋谷区桜丘町)で、テックカンファレンス「BIT VALLEY 2018」が開催された。BIT VALLEY 2018は、渋谷を本拠地とする株式会社サイバーエージェント、GMOインターネット株式会社、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社ミクシィという、IT企業4社が立ち上げたプロジェクト「SHIBUYA BIT VALLEY」によって企画されたものだ。BIT VALLEY 2018では、20以上のセッションが行われたが、ここではレポート第2回として、GMOインターネットの折田尚久氏によるセッション「『Z.com Cloud ブロックチェーン』における、ブロックチェーンサービス開発で取り組んできたこと」について紹介する。

 なお、イベントレポート第1回として「GMOインターネットが北欧に構築した仮想通貨マイニングファームの詳細が明らかに」についても紹介しているので、そちらも合わせて読んでいただきたい。

GMOインターネット株式会社の折田尚久氏による講演

より使いやすく安心なブロックチェーンを開発

Bitcoinの価格の推移。1BTCが一時期1万8000ドルに迫るほど高騰したが、今はピークの半分以下に落ち着いている

 折田氏はまず、Bitcoinの価格の推移やブロックチェーンの特徴を解説した。ブロックチェーンの特徴は、暗号学的ハッシュ関数と経済的インセンティブを巧みに利用し、互いに信頼することがない分散ネットワークでも信用を担保できることにある。Bitcoinが誕生したのは2009年だが、その後ブロックチェーンへの注目が高まり、2015年には、あらゆる目的のために使えるブロックチェーン「Ethereum」が登場した。Ethereumは、分散型アプリケーションやスマートコントラクトを構築できるプラットフォームであり、金融や保険、著作物管理、トレーサビリティ、ゲームなどさまざまな実証実験が行われている。

GMOインターネットは、2015年12月からブロックチェーンの研究を開始し、2016年12月にPaaS型ブロックチェーンプラットフォームのβ版を提供開始。2018年1月には正式版としてZ.com Cloud ブロックチェーンをリリースした

 GMOインターネットは、2015年12月からブロックチェーンの研究を開始し、2016年12月にPaaS型ブロックチェーンプラットフォームのβ版を提供開始。2018年1月には正式版として「Z.com Cloud ブロックチェーン」をリリースした。Z.com Cloud ブロックチェーンは、Ethereumを利用してブロックチェーン上に分散型のアプリケーションを構築できるPaaS型サービスであり、Z.com Cloud ブロックチェーンを利用して、セゾン情報システムズやGMOグローバルサインと宅配ボックスの実証実験を行ったほか、OSS(Open Source Software)提供プロジェクトなどにも取り組んでいる。

セゾン情報システムズやGMOグローバルサインと宅配ボックスの実証実験を行ったほか、OSS提供プロジェクトなどにも取り組んでいる
GMOのZ.com Cloud ブロックチェーンは、Ethereumを利用してブロックチェーン上に分散型のアプリケーションを構築できるPaaS型サービス

 ブロックチェーンで課題となるのが、バージョンアップ問題、エンドユーザー問題、アクセスコントロール問題の3つである。バージョンアップ問題とは、コントラクトはバージョンアップできないため、バグにどう対処したらよいのかということであり、エンドユーザー問題とは、ブロックチェーンにアクセスするにはノードが必要であり、さらに手数料として仮想通貨が必要なため、エンドユーザーには高いハードルとなることだ。また、アクセスコントロール問題とは、ブロックチェーンのデータはすべて公開されるため、個人情報などの公開に適さないデータはどうすれば良いのかという問題である。Z.com Cloud ブロックチェーンは、データストアとブロックチェーン、APIを用意することによって、これらの問題を解決していることが特徴だ。

Z.com Cloud ブロックチェーンの提供イメージ。データストアとブロックチェーン、APIから構成されており、さまざまなサービスに利用できる

 エンドユーザー問題は、GMOがトランザクションを代行し、GAS(Ethereumの手数料)も負担する(手数料は後で請求)、GAS代払い機能により解決。アクセスコントロール問題は、ブロックチェーンとは別にアクセスコントロールされたデータストアを用意し、機密情報はデータストア内に保管することで解決した。

Z.com Cloud ブロックチェーンではGMOがトランザクションを代行し、手数料も負担する(手数料は後で請求)

 バージョンアップ問題については、インターネットのDNSに似たCNS(Contract Name Service)を導入することで解決した。CNSは、コントラクト名とそのアドレスをマッピングして保持しており、コントラクト名に対して対象のアドレスを返す。ある特定のコントラクトを呼び出す際に、必ずCNSにコントラクト名をもとにアドレスを聞いてから、ユーザーが対象のコントラクトを呼び出すようにアプリケーションを構築することで、コントラクトにバグがあった場合も、別のコントラクトへその呼び出し先を変えることが可能になるという。

バージョンアップフレームワークについて。コントラクトはブロックチェーンに書き込まれているトランザクションなので、変更ができない
そこで、DNSに似たCNS(Contract Name Service)を導入することで、バージョンアップを可能にした

石井 英男