イベントレポート
GMOインターネットが北欧に構築した仮想通貨マイニングファームの詳細が明らかに
1か月に568BTCの報酬を得るなど「BIT VALLEY 2018」にて報告
2018年9月13日 17:20
9月10日、渋谷区文化総合センター大和田（東京都渋谷区桜丘町）で、テックカンファレンス「BIT VALLEY 2018」が開催された。BIT VALLEY 2018は、渋谷を本拠地とする株式会社サイバーエージェント、GMOインターネット株式会社、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社ミクシィという、IT企業4社が立ち上げたプロジェクト「SHIBUYA BIT VALLEY」によって企画されたものだ。BIT VALLEY 2018では、20以上のセッションが行われたが、ここではその中から、GMOインターネットの秋山拓也氏によるセッション「-10℃の世界でマイニングファーム構築やってみた」の内容を紹介する。
北欧の厳しい気候により予期せぬトラブルが続々
GMOインターネットは、インターネットサービスを中心とする企業であるが、2017年9月からビットコインなどの仮想通貨のマイニング事業を開始している。GMOインターネットのマイニング事業は、マイニングファームの運営、クラウドマイニング事業、次世代マイニングボードの販売、グループ会社であるGMOコイン社への仮想通貨供給の4つに大別できる。今回のBIT VALLEY 2018のセッションでは、詳細が公開されていなかったマイニングファームの構築について、実際にマイニングファームの構築に携わった担当者が解説するということで、仮想通貨に興味を持つ来場者が多数集まっていた。
秋山氏はまず、「マイニングとは何か」から説明を始めた。マイニングとは、仮想通貨の取引台帳の正当性を維持する仕組みであり、計算能力を提供する見返りに報酬が得られる。ただし、他社との計算力勝負になるため、事業として成立させるには、大規模なマイニングファームを構築する必要がある。GMOインターネットは、北欧にマイニングファームを構築したが、北欧のどこかということは明らかにはされていない。北欧を選んだ理由は、気温が低く冷却に有利なことと、再生可能エネルギーが豊富で電気代が安いためである。
マイニングファームを構築した場所の平均気温は0℃で、天気は曇りか雨か雪がほとんど、吹雪で前が見えない時や豪雨の時もあるという。また、風が強く、足首の上辺りまでの積雪がある。凍り付いた路面の上に雪が積もると運転が危険になる。マイニングファームは、2棟の倉庫を借りて構築し、トータルで1万5000台ものマイニングマシンが使われている。1万5000台のマイニングマシンの消費電力は一般家庭3万3500戸分に相当する。このマイニングマシンには、Bitcoinの報酬を得るのに必要なハッシュ関数SHA256の計算を高速に実行するために設計されたASICが多数搭載されている。
作業はまず、マイニングマシンと電源モジュールの開梱から始まり、ラックへの設置、ケーブリング、ネットワーク環境の構築の順で進む。現地スタッフと一緒に、そうした作業を行ったが、完成までにはさまざまなトラブルがあったそうだ。例えば、データセンターなのに屋根のファンの周りの木板から雨漏りするという、日本では考えられないトラブルや、気温が低すぎることでケーブルが固くなり、ケーブリングが困難になるほか、そもそも気温が低すぎて、マイニングユニットの動作保証範囲を下回っているため、うまく起動しないというトラブルもあった。温度の問題に対応するために、ヒーターで温めながら作業を行うことにし、2017年12月に構築が完了した。倉庫内が寒すぎるため、秋山氏が体調を崩してしまうというトラブルもあったという。
2017年12月以降のマイニングの報酬実績も公開された。それによると、最初はあまり性能が出ていなかったものの、機器の追加などにより、ハッシュレートはどんどん上がっていき、現時点では384PH/sに達している。直近の2018年7月には568BTCの報酬を獲得しており、7月末のレートで換算すると約4億9000万円に相当する。ただし、講演では、マイニングファーム構築にかかったコストや電気代などは明らかにされなかっため、電気代などを引いた利益の額については不明である。
