イベントレポート
社内仮想通貨やIoT宅配ボックスなどブロックチェーン活用による取引の利便性向上へ
セゾン情報システムによる取組みを「BIT VALLEY 2018」にて紹介
2018年9月19日 06:30
9月10日、渋谷区文化総合センター大和田(東京都渋谷区桜丘町)で、テックカンファレンス「BIT VALLEY 2018」が開催された。BIT VALLEY 2018は、渋谷を本拠地とする株式会社サイバーエージェント、GMOインターネット株式会社、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社ミクシィという、IT企業4社が立ち上げたプロジェクト「SHIBUYA BIT VALLEY」によって企画されたものだ。BIT VALLEY 2018では、20以上のセッションが行われたが、ここではレポート第3回として、株式会社セゾン情報システムズの開発グループ長・吉村豊和氏によるセッション「ブロックチェーンの可能性」の内容を紹介する。
なお、同イベントレポートとして第1回「GMOインターネットが北欧に構築した仮想通貨マイニングファームの詳細が明らかに」、第2回「GMO、Ethereum採用のPaaSによるクラウド型ブロックチェーンサービス概要を解説」についても紹介しているので、そちらも合わせて読んでいただきたい。
ブロックチェーン実証実験の多くが事実上失敗していると指摘
吉村氏はまず、ブロックチェーンの基本的な仕組みについて解説した。ブロックチェーンでは、いくつかの取引情報をブロックという塊にまとめ、ブロック単位で参加者が合意形成を行い、合意されたブロックを確定データとして各参加者が自分の台帳(ノード)を更新する。ブロックチェーンは、一方向性ハッシュ関数を利用したデジタル署名により、なりすましを防止できることや、ハッシュの連鎖構造により内容の書き換えが極めて困難であるといった特徴がある。さらに、台帳が分散されているので、全てのノードがダウンしない限り、データは永続的に残る。そのため、ブロックチェーンはBitcoin以外にも広く応用可能である。
ブロックチェーン技術は破壊的イノベーションである(と言われている)が、実際には現存するほとんどのサービスはブロックチェーンでなくても実現できるし、多くの実証実験が行われてきたが、ブロックチェーンである必要性を見いだせず、事実上失敗していることも少なくない。しかし、ブロックチェーンは「共通的な仕組みを構築するフレームワーク」であり、参加者全員で「信用」を担保する仕組みなので、その信用を共同利用しうまく活用することで、各社のサービスレベル向上やコスト削減などのシナジーを得ることができるという。
セゾン情報システムズは、2017年7月にブロックチェーン特化組織として「ブロックチェーンラボ」を設立し、その研究開発に取組んできた。これからの時代、新しいサービスを生み出すためには、テクノロジーがオープンかつエコ(みんなが共感できる)であることが必要であるという。ブロックチェーン技術の展開が有望な事例としては、サプライチェーンや取引の全自動化の実現などが挙げられる。セゾン情報システムズは、ブロックチェーンとIoT宅配ボックスの組み合わせやConnected Keyなどに取り組んでいるほか、社内専用の仮想通貨を発行し、社内カフェなどでの実証実験を行っているそうだ。
さらに、ブロックチェーンと既存システムを「つなぐ」汎用部品であるブロックチェーンアダプタの開発も行っている。ブロックチェーンアダプタを利用することで、CSVやExcel、既存システムのデータベースのデータなどを簡単にブロックチェーンと連携できるという。セゾン情報システムズのブロックチェーンアダプタ「DataSpider Servista」は、2018年5月現在、「Ethereum」「Bitcoin Core」、「Hyperledger Fabric v1.0」、「Ripple ILPコネクタ」の各ベータ版が提供されているとのこと。