イベントレポート

NEMエキスパートらが経験による知見を交えNEMの魅力を披露した「NEM Bootcamp」

NEMブロックチェーンをより身近に感じた技術解説セミナー

 一般社団法人NEM JAPANは1月20日、東京・渋谷にてブロックチェーンに興味のあるエンジニアを対象としたセミナーイベント「NEM Bootcamp - Hello Blockchain! -」を開催した。有料セミナー(懇親会込み)であるにも関わらず満席となり、世間のNEMブロックチェーンへの関心の高さがうかがえた。本稿では、イベント内容について報告する。

 「NEM Bootcamp - Hello, Blockchain!」は、『ブロックチェーンで何か挑戦しよう』と考えるエンジニアを対象にした、NEM JAPANが主催するセミナーイベント。コイネージ株式会社が共催し、日本マイクロソフト株式会社が協力に名を連ねる、同法人設立後初となるNEMイベントだ。

 イベントでは、基調講演としてマイクロソフトのエバンジェリスト西脇資哲氏が「ブロックチェーン、未来を創る新しいテクノロジーの可能性」をテーマにブロックチェーンのこれからについて語るほか、NEM JAPANの代表理事・古賀大喜氏を始めとするNEMに精通するエキスパートが自らの経験による知見を交えて、NEMの魅力を披露する。

まずはごあいさつ

NEM JAPAN・代表理事の古賀大喜氏

 始めにNEM JAPAN・代表理事の古賀氏より、あいさつを兼ねてNEM.io財団が取り組む活動について報告する。

 シンガポールを拠点とするNEM.io Foundation(NEM.io財団)の日本法人として昨年11月に誕生した一般社団法人NEM JAPANは、日本におけるNEMブロックチェーン技術の普及支援活動や、導入のためのコンサルティング活動を実施していくほか、NEMに関する勉強会、ブロックチェーン初心者向けのイベントなどを開催していくという。まさに、このイベントがその活動の一環だ。

 NEMはNew Economy Movementの頭文字を取ってNEMとしているように、これからの経済活動を担うブロックチェーンであると、古賀氏は解説する。NEMにはブロックチェーンに関する強力なAPIが標準機能として備わっているため、ブロックチェーン初心者のエンジニアでもすぐに使えるのが特徴だという。技術に裏付けされた多目的ブロックチェーンだからこそ実ビジネスなどで広く使われているということを、これから積極的に紹介していき、エンジニアからNEMが広がるよう活動していきたいという。

 2019年のNEM.io財団の上級理事会および評議会(総称して「評議会」という)は、選挙によって代表、副代表、評議員が新たに選出され、現在、新しいメンバーが職務に就き、前評議会から業務の引き継ぎ等を行いながら、すでにNEMコミュニティにて広くコミュニケーションを取り始めているそうだ。古賀氏自身も評議員であるという。

 ここでNEM.io財団・代表のAlexandara Thinsman氏からNEM Bootcamp参加者に向けたビデオメッセージがあった。日本は新しいテクノロジーを実装することに意欲的な人が多いという感想を述べたAlexandara Thinsman氏は、「何よりも日本のNEMコミュニティは活力があること」「NEMにコミットする人たちは才能にあふれ、温かい気持ちを持っていることで有名」だと語る。今後は、「目標を共有し力を合わせて達成しましょう」という力強いメッセージだ。ビデオメッセージはWebにて公開されているので、NEMに興味がある人は、一度視聴してみてはいかがだろうか。

【NEM.io財団代表ビデオメッセージ】
Message from Alex Thinsman - NEM Bootcamp #1

基調講演

 イベントは、セミナーに入る前にマイクロソフトのエバンジェリスト西脇資哲氏による基調講演が行われた。講演では、「ブロックチェーン、未来を創る新しいテクノロジーの可能性」をテーマに、ブロックチェーンのこれからについて語られた。

日本マイクロソフト株式会社・業務執行役員・エバンジェリストの西脇資哲氏

 ブロックチェーンの技術は、仮想通貨だけではないという西脇氏。また、ブロックチェーンは、今の経済を狙っているものではなく、それらを代替えする技術でもないという。ブロックチェーンは、次のビジネスや経済となる「新しい経済活動」を築き上げるものであると断言をする。先ほど古賀氏が述べたNEMの語源となる「New Economy Movement」が、まさにそれを表しているではないかという言葉が印象的だった。

 マイクロソフト以前、日本オラクルに務めプロダクトマーケティングに従事していたという西脇氏は、リレーショナルデータベースを経験し、時代はクラウドへと移っていったことを目の当たりにし、そして今、クラウドからブロックチェーンの時代になりつつあることを身をもって経験しているという。ブロックチェーンの登場は、生まれるべくして生まれた、ある意味必然ではないかと力説する。

記録・管理の歴史(セミナー配付資料より引用、以下同)

 すべては「サトシナカモト」氏の論文から始まったブロックチェーンは、「改ざんされない安全性」「正確な取引の記録と、高い信頼性と可用性」を保証しているものだと解説する。西脇氏は、ブロックチェーンによって誕生した仮想通貨は、より便利に高速処理ができ、社会に浸透すれば、将来の主要通貨にもなり得るだろうという。

 現在の通貨は、銀行などの金融機関を使わないと取引できないことが課題だという。日本には、銀行を信用する文化があるが、諸外国は、通帳はその時点のスナップショットであり、コピーであることから、本当に残高が確保されているかどうかは、銀行といえども信用はおけないという意識のほうが大きいという。また、さまざまな理由で銀行口座を持っていない人が世界には25億人以上もいるそうだ。送金については金融機関を経由しなければならず、手数料も高い上に、金融機関の営業時間にしか取引できない。国際送金ともなると時間もかかる。海外取引では手数料や為替レートを気にする必要があるなど、問題だらけであるという。そのほかにも、現状のクレジットカードや電子マネーでは個人間取引ができないことなどを課題として挙げている。

 ちなみに世界中で働くインド人は、多くの人が稼ぎを母国へ仕送りとして送金をするという。インド人は、年間8兆円を超える金額を仕送りしており、その手数料はすべて金融機関に渡るそうだ。送金できる国はまだ幸せで、途上国においては銀行網が整備されていないため、送金手段が限られるという。また、ジンバブエのように、自国通貨自体も不安定であるという現状を知るべきであるという。

 そういった通貨を取り巻く世界中の課題を解決するのが「仮想通貨」であることは、間違いないと、西脇氏は語る。

さまざまな課題を解決する仮想通貨

 資料の写真は「ビットコイン難民」で画像検索をすると表示される実在するネパールの被災者の写真であるという。被災者が写真で示すQRコードは、実際にBitcoinを送金することができるアドレスであり、24時間、世界中のどこからでも仮想通貨による寄付ができるというのだ。しかも、被災者の名前や住所がわからなくても、仮想通貨であればダイレクトに募金ができてしまうという。これらは、今までの通貨ではできなかったことであり、次の時代の経済を築き上げるものの1つであるという。

 しかし、単なるデジタルデータを人々は価値として認めていいのか? と、西脇氏は自問自答する。もっとも「もちろん、いいんです」と即答する。西脇氏いわく、歴史は繰り返すという。

歴史は繰り返す

 かつて人々は物々交換をしていた。石器時代になって物々交換から、なかなか手に入らない大きな石や貴重な鉱物をお金とし、石のお金と物を交換するようになったという。石にはなんの価値もなかったものが、希少であることと物と交換できることで、価値の減らない長期保有が可能な財産になったという。また、紙幣という単なる紙切れを国が価値を保証し、偽造できない技術が登場することで、やはり何の価値もなかったものが価値を持つようになったという。紙幣のみならず、株式証券も同様、単なる紙切れであったものが市場にて価値が決まり、株価が決まることで、価値を持つのだという。株券は、もはや紙から電子データで管理される時代にもなっているという。

 ブロックチェーンによる仮想通貨、暗号通貨は、論理的な希少性と参加者が価値を決めることで、当然ながらデジタルデータでも価値が生まれるのだという。そう、歴史は繰り返すと、西脇氏はいう。

 では、ブロックチェーンによる「新しい経済活動」とは、どういうことなのか。

 それは爆発的にトランザクションが増えることで生まれるものだと、西脇氏はいう。インターネット接続が当たり前の時代になり、大容量取引が行われたり、世界中の人が同時に起こす取引が増える、そんなところに今までにない「新しい経済活動」は生まれるのだと。

 そしてまだ価値が定まっていないものがポイントだという。恐らく、コーヒー600円を仮想通貨で買う時代は来ないかもしれない。しかし、今、みんなが「いいね!」していること自体に価値が付けられるのがブロックチェーンだという。「動画の再生回数」や「スポーツ選手の好プレー」など、まだ価格が決まっていないようなものに価値が付き、それが新しい経済になると西脇氏はいう。多くの人が参加するにも関わらず管理されていないものが、ブロックチェーンによって可視化され、価値が付けられる。そしてそれらが経済に発展したとき、ブロックチェーンの時代になるというのが結論だ。それは今までの通貨やテクノロジーでは確立させることは難しい状況の誕生だという。

 西脇氏はここで「新しい経済活動」のヒントとして、すでに稼働中のNEMブロックチェーンによるサーヒスをいくつか紹介した。

 たとえば「FiFiC」は、歩数計とブロックチェーントークンを使ったヘルスケアするアプリ。歩くことでトークンを獲得し、提携の店舗にてサービスと交換することができるアプリだという。トークンをきっかけに、人と店をつなぎ、運動不足の解消と店舗への集客力向上を図るというのだ。「歩き」を見える化し、トークン化することによって新たな経済を生むという。見える化されたデータは、ブロックチェーンによって保証されているものだと考えれば、たくさん歩いている人ほど生命保険の料金が安くなるなど、そういったサービスに応用してもいいだろうというアイデアを語る。

 西脇氏は、ここにいる皆さんには、ブロックチェーン時代の到来に備えて、これからの10年を創る技術を学んで、そしてブロックチェーンを使った新しいエコノミーの実現、社会貢献にチャレンジしてほしいと感想を述べた。西脇氏いわく、これまでのビジネスやリレーショナルデータベースを使ったシステムをブロックチェーンに置き換えるのはナンセンス。ブロックチェーンは、新しい経済活動を創る技術であることを念頭に、誰かにブロックチェーンについて聞かれたら、ぜひみんなを説得する立場になってほしいと、改めて今回のコンセプトを強調し、基調講演が終了した。

セミナーは、NEMブロックチェーンの「いろは」から

 イベントは、本日の本題となるNEMの魅力を伝えるセミナーセッションとなった。セミナーは、NEM101からNEM501の全5セッション。有料セミナーということもあるので、ここでは概要を報告していきたい。

LCNEM株式会社・代表取締役の木村優氏

 最初のセミナーは「NEM101 NEMブロックチェーンの「いろは」」と称し、NEMについて初心者にもわかるよう、詳しい解説を聞くことができた。講師は、LCNEM株式会社・代表取締役の木村優氏だ。木村氏は、この後の「NEM401」についても講師をすることになっている。木村氏は、NEMをベースにした「LCNEM」という価値か変動しないいわゆるステーブルコインと呼ばれるコインの移転システムの開発や、ブロックチェーンウォレットアプリ「LCNEM Wallet」、ブロックチェーンを応用した転売防止チケット「ちけっとピアツーピア」を開発するスタートアップ企業の代表だ。

 木村氏は、ブロックチェーンといえば日本ではEthereumが人気だが、NEMを選んだ理由は、Ethereumのスマートコントラクトは素晴らしい機能だが、いったんプログラムが動き出すと改ざんできない上にアップデートもできないという点において事業には使いづらいと考えたという。これは経済学的に見ると、不完備契約の問題が生じやすいのだという。また、それに関する交渉コストについて考えると事業では扱いづらいというのだ。一方、NEMは再設定可能なマルチシグを使ってブロックチェーンを活用するアプローチであることから、これは完備契約であるという。NEMは学習コストも低く事業にもしやすいとも。

 NEMは、2015年3月にNEMの最初のブロックが作られて以来、ブロックチェーンプロトコルが原因でアセットの流出が起きたことは一度もないというダウンタイムゼロの安全性、堅牢性が担保されており、かつ開発者の利便性や拡張性に焦点をあてて構築されていることから、導入も簡単である点が選択理由だという。

 使用方法は、Web APIコールにより自分の「スマートアセット」を定義し、取り扱えるとのこと。これは、開発者が普段から使い慣れているJavascript(TypeScript)、Java、C#、PHP、Go言語その他、多数のプログラミング言語から、NEMのテスト済みで安全なオンチェーン機能をダイレクトに使用できることを意味している。それは、サービスを市場へ投入するまでの時間を短縮することができるという優位性でもあるというのだ。

NEMの導入速度

 木村氏はさらにNEMの合意形成アルゴリズムPoI(Proof of Importance)や、NEMの基本機能「NEMアカウント」「ネームスペース」「モザイク」「メッセージ送信」「マルチシグネチャ」についても詳しく解説をする。これらが簡単に設定できるという説明は、エンジニアにとっては非常にインパクトがあったのではないだろうか。

 また、NEMは近い将来公開されるであろう最新版Catapult(NEM v.2)によって、さらにパワフルになることについても聞くことができた。セミナーでは、「NEM開発はじめの一歩」として、開発するにあたっての方法や、カタパルト・デベロッパー・プレビューへの参加方法などについても詳しく紹介された。

カタパルト・デベロッパー・プレビューへの参加

NEMブロックチェーンのユースケース

 続いてのセミナー「NEM201 NEMブロックチェーンのユースケース」は、NEM JAPANのPartner Developmentの山口薫氏より、NEMのユースケースが多数紹介された。

NEM JAPAN・Partner Developmentの山口薫氏

 国内におけるユースケースでは、政治というイノベーションが遅れている分野にイノベーションを起こす「PoliPoli」や、自分の好きなスポーツチームや選手をトークンによるギフティングを行い支援する新しいコミュニティの形「エンゲート」、歩数計と連動し歩くことでトークンを獲得できる楽しみながらダイエットする「FiFiC」、仮想通貨がもっと楽しくなる使いやすさを追求したウォレットアプリ「Raccoon」などが、多数紹介された。

国内におけるユースケース

 また海外においても、アラブ首長国連邦(UAE)のコミュニティ開発省(MOCD)が、完全な電子政府を目指すためにNEM.io財団と協定を締結したことや、虚偽の学位証明書を排除する、マレーシア教育省による学位証明システム「e-Scroll」など、こちらも多くのユースケースが紹介された。

 なお、NEMのユースケースについては、以前、弊誌記事「NEM JAPAN、日本仮想通貨ビジネス協会勉強会にて社会実装に選ばれるNEMについて解説」にて詳しく紹介しているので、併せて一読いただきたい。

Catapultに関する実験と報告

 セミナーNEM301 Catapult 実験室「4,000トランザクション・チャレンジの報告と募集」では、NEM v.2 technical advisor(Catapult)のplanet★箒星(プラネットほうきぼし)氏による実験とその結果が報告された。

EM v.2 technical advisor(Catapult)のplanet★箒星氏

 普段、会社では、とあるブロックチェーンゲームのエンジニアやっているというplanet★箒星氏は、2018年5月からCatapultのリサーチを始め、「Qiita」に記事を投稿しているという。

 planet★箒星氏は、「NEMは、Catapultになれば、4000TPS(1秒間のトランザクション数)の処理性能が実現します」といううわさを聞いたことがありますか? と質問を投げかけた。世間では、このような「4000TPS」のうわさの独り歩きが起きていたという。Catapultはオープンソースなので自分で試せるのではないか? と思ったのが実験をするきっかけだったそうだ。

 実験は、4000トランザクションのためにそれだけのマシンを用意するのは個人で実験するにはお金がかかると思っていたが、1マシン複数Dockerコンテナならできそうだと判断をしたという。実験による4000TPSの検証をきっかけに、議論が次のステップに発展できればいいなぁと思ったとplanet★箒星氏はいう。そこで、「2018年12月にやってみました」というのが今回の報告であるとのこと。

カタパルト起動

 実験の方針は、再現性を上げるためにできるだけ簡単な方法になるよう心がけたという。たとえば、1台のマシンに複数ノード(ネットワーク帯域の考慮はしない)、設定ファイル類の変更はしないといった条件を設定する、また、誰でも試せるようハードルを下げるためにできるだけ安価な方法を考える。今回は、時間課金で仕様できるVMを使用する。そして、4000TPSを目指し、それ以上はあえてやらないという。あくまでも、誰でも再現できる実験を目指したというのが、今回の最大のポイントとなる。

 結果を先に伝えると、本実験でCatapultは「4000TPS」を達成している。この実験では、「4000TPS」を実現させるために用意したトランザクションの作成と送信について、工夫と苦労をされているので、ぜひその結果について、「Qiita」の記事を見ていただきたい。planet★箒星氏は、「4000TPS」を実現させるために、256万トランザクションを前もって作成している(32万×8ファイル)。また、送信については、Node.jsのloadtestライブラリを使用し、複数プロセスでトランザクション送信処理を起動しているという(8プロセス)。その結果、4040tx/sの速度で送信ができたという(各ノード505tx/s)。

 実験では、トランザクション作成に約2時間かかるため、Deadlineの指定は必須であることや、またノードは始めに1txを投げてから、続いて500txを投げることで安定することを発見したという。DBの負荷も高く、マシンスペックか、チューニングが必要であることもわかったようだ。

 しかしこれは、今回はあくまでも単一マシンでの話であることから、次回は複数マシン・複数拠点でやってみたいというplanet★箒星氏。実験については、実際に使ったスクリプトも公開している。自分の手で経験してみることが重要であることから、ぜひ、一緒に実験をしてくれる人を募集したいそうだ。

募集概要

経済学的観点から見たNEMブロックチェーンのコンセンサス・アルゴリズム

 「NEM401 NEMプロトコル講座」では、「経済学的観点から見たNEMブロックチェーンのコンセンサス・アルゴリズム」と称し、NEMの合意形成アルゴリズムについて解説が行われた。講師はNEM101に登壇したLCNEM株式会社の木村優氏。

LCNEM株式会社・代表取締役の木村優氏

 セミナーでは、NEMの合意形成アルゴリズムであるPoI(Proof of Importance)のほか、BitcoinでおなじみのPoW(Proof of Work)、多くのアルトコインに採用されているPoS(Proof of Stake)についても解説する。

 また、アルゴリズムの解説だけでなく、「PoS、PoIよりもPoWに有効な攻撃」「PoWよりもPoS、PoIに有効な攻撃」「PoIよりもPoSに有効な攻撃」など、各アルゴリズムが抱えている問題点についても言及する。このあたりは、非常に勉強になったのではないだろうか。

 NEMに採用されているPoIは、暗号資産の保有量そのものではなく、「重要度(Importance)」が多いほど、ブロックを作ってチェーンに接続する権利を得やすいという。ブロックを作ってチェーンに接続するプロセスを、マイニングではなくハーベスティングと呼ばれている方法で合意形成しているなど、他のブロックチェーンとは大きく違うことが紹介された。ちなみに重要度は、Google検索と同じページランクアルゴリズムであるグラフ理論を使って計算されているという解説が印象的だった。

ページランクアルゴリズム

 まとめると、PoIを採用するNEMブロックチェーンは、ネットワーク攻撃をするインセンティブを排除し、ネットワーク攻撃をするコストが非常に高くなるように設計されたパブリックブロックチェーンであるとのこと。

セミナーの最後はバウンティプログラムについて

NEM JAPAN・代表理事の古賀大喜氏

 セミナーの最後は、NEM JAPAN・代表理事の古賀大喜氏により、NEMのバウンティプログラムについて、その参加方法が紹介された。バウンティプログラムとは、その働きや成果によって報酬(報奨金など)が得られるシステムだ。他でもよくあるのがバグバウンティなど、開発者に協力し、バグの発見、解決などを行うといったものがよく聞かれる。

バウンティプログラムの参加条件

 NEMにおけるバウンティプログラムの参加条件は、ますNEMberであること(membership 登録+500XEMが必要)。必ずKYC(本人確認)プロセスを通ること。日本での手続きは、NEM JAPANまでご一報の上、顔写真付きの身分証明証をNEM JAPAN所定のメールアドレスに送付することが条件とのこと。

Development Bounty

 プログラムの詳細については、たとえば「Development Bounty」(プロジェクト開発バウンティ)では、250から5000米ドル相当のXEMが受けられるという。「Development Bounty」は、「ES6 Javascript」で開発され、Node.jsで作動するプロトタイプに限るとし、ただしプロジェクトの内容によりPython、C++、C#、PHP、JavaとGOのコードも受け入れられるそうだ。

 「バグ修正バウンティ」では、「NEM Walletのバグ修正バウンティ」「NISサーバーのバグ修正バウンティ」「Android OS・iOSに関連するバグ修正バウンティ」が用意され、それぞれバウンティ額が決まっている。

 またMarketing Bountyとして「NEM101バウンティ」が用意されている。NEM101を開催すると、「会場費と飲食費」として200米ドル相当までのXEM、「イベント開催者」として200米ドル相当のXEM、「NEM101スピーカー」(開催者と同じでも可)として100米ドル相当のXEMをそれぞれ申請できるという。これについてはNEM101バウンティの獲得条件等が決められているので、詳しくは公式サイト等で確認してほしい。

 バウンティプログラムについては他にもいくつか紹介された。こちらも詳しくは公式サイトをチェックしてほしい。これまでバウンティプログラムに関する情報や申請はすべて英語で行われていたが、NEM JAPANでは、日本語での問い合わせが可能であるというので、興味がある人は、問い合わせされてみてはいかがだろうか。

 以上で、イベントすべての催し物は終了となった。この後は、開催者、登壇者、そしてセミナー参加者による懇親会が開かれ、さらに有意義な交流が行われた。セミナーによって、よりNEMを身近に感じることができたのではないだろうか。

懇親会風景

高橋ピョン太