イベントレポート

「マイニング事業は一時的な失敗。必ず取り戻す」GMO熊谷社長は事業の継続性を強調

GMOインターネット2018年12月期通期決算説明会

 GMOインターネット株式会社は2月12日、同社2018年12学期「通期決算説明会」を開催した。グループの連結業績概況についてはGMOグループ代表の熊谷正寿氏が、各セグメントの業績については取締役副社長の安田昌史氏が説明した。

 グループ全体として、昨年12月に行ったマイニング事業の再構築を損失の主要因に、207億円の赤字となった。一方でマイニング事業を除いた業績は好調で、その営業・経常利益は3割超の増加であったという。自社マイニング事業は、より電気代の安い拠点をすでに確保しており、すべてのマシンを移設して今後も継続するとした。熊谷氏は「マイニング事業を継続し、損失を取り戻す」という強い意志を見せた。

連結業績概要

 グループの売上高は対前年同期比20%増の1851億円、営業利益は23.5%増の217億8000万円、経常利益は10.5%増の191億3000万円となり、いずれも過去最高業績を更新した。一方で、仮想通貨事業内マイニング事業の再構築による特別損失を主要因として、最終損益は207億円の赤字となっている。

GMOインターネット・代表取締役会長兼社長 グループ代表の熊谷正寿氏

 マイニング事業の再構築により多大な特別損失が生じたものの、マイニング事業を除外した場合の営業利益、経常利益は共に前年比約35%の成長を記録したという。増益の内訳は、インフラ事業が初の営業利益100億円超え、金融事業ではFXの収益率改善により、共に過去最高業績を更新している。他方、広告・メディア事業は、ネット広告に対しbot等で不正な水増し請求を行うアドフラウド問題の影響で収益性が悪化、仮想通貨事業と共に減益となった。

 同社の仮想通貨事業の収益は、仮想通貨交換事業とマイニング事業により構成される。仮想通貨交換事業は収益基盤が安定化し、黒字となったものの、マイニング事業の再構築に伴う損失をカバーすることができなかったという。マイニング事業の純損失は290億7000万円に上り、仮想通貨事業における営業利益は13億6000万円の赤字となった。

連結業績サマリー
連結業績サマリー(マイニング除外)
営業利益増減
セグメント別の業績

仮想通貨事業について

 同社の仮想通貨事業はマイニング事業と仮想通貨交換事業、準備中の仮想通貨決済事業により構成される。2018年12月にマイニング事業の再構築を決定し、自社マイニングについては大きな方針転換を実施するとしている。仮想通貨交換事業と、現在準備を進めているステーブルコイン「GYEN」の発行を含む仮想通貨決済事業は方針に大きな変更はないとのこと。

GMOグループ 仮想通貨事業の大方針

 継続方針について説明する。仮想通貨交換事業は、口座数の増加や基盤の安定化を背景に、収益構造が安定化したという。今後も取り扱い仮想通貨の種類を増やすなどで、さらなる収益の拡大を目指すとのこと。また、ステーブルコイン「GYEN」については、2019年中に海外で発行予定とし、質疑応答の中で熊谷氏は「近日中に提供国など詳細を公開できるだろう」と語った。

GMOグループ 仮想通貨交換事業の業績推移

 自社マイニング事業の再構築に至った要因として、想定を上回るグローバルハッシュレートの上昇と、それに伴うBitcoin(BTC)価格の低調が、収益の低下につながったという。さらには、高値掴みをしたマイニングマシンの減価償却費が負担となり収益を圧迫し、マイニング事業全体の収益性を悪化させたとしている。

 同社は、マイニング事業の収益悪化への対策として、自社マイニング事業のために保有するすべてのマイニングマシンについて、116億円の減損処理を実施。マシンの償却費が削減されたことで、今後の収益性改善につながるとし、事業の継続性をアピールした。

 また、マイニングマシンの設置拠点をスイスから、より電気代の安い場所へ移設予定だという。移設に関して、質疑応答の中で熊谷氏は「電気代が北欧の半分以下になる場所を確保し、現在移転作業中。移転は年内に完了するが、その影響が数字に現われてくるのは夏頃になるだろう」と進捗状況を報告している。

GMOグループ 仮想通貨マイニング事業の業績推移

 マイニングマシンの開発・製造・販売事業については、先に挙げた外部環境の変化に加えて、競合マシン価格の下落、部材調達の難航などにより、2018年12月に停止を決定。事業資産を全額損失処理し、236億円の損失とした。同事業は完全に撤退とする方針を改めて示した。

GMOグループ 仮想通貨事業全体の業績推移
GMOグループ 仮想通貨マイニング事業の業績推移

まとめ

 説明会のまとめとして、熊谷氏はマイニング事業で生じた損失を「一時的な失敗」と評した。氏は、「同事業では減損が生じたものの、事業そのものは丸々残っている。コスト問題を解決して、最も有利な状態で今後も継続していくことができる」と前置く。そして、「必ず(損失分を)取り戻す」と述べ、マイニング事業継続への強い意志を示し、発表を締めくくった。

日下 弘樹