イベントレポート

国内でICOを成功・完了した仮想通貨c0banのこれまでとこれから

LastRoots小林社長が語る、仮想通貨交換業者として正式認可に向けた取り組み

株式会社LastRoots・代表取締役の小林慎和氏

 ブロックチェーン総合スクール「FLOCブロックチェーン大学校」を運営する株式会社FLOCは3月7日、同社コミュニティスペース丸の内vacansにて特別セミナーを開催した。『ブロックチェーン革命の未来 〜この技術の社会浸透と広告・メディアへの応用〜』をテーマに、株式会社LastRoots・代表取締役の小林慎和氏が講演を行った。広告やメディア領域へのブロックチェーン活用に関心を持つビジネスパーソン向けのセッションとなる。

 LastRootsは、JVCEA第二種会員のみなし仮想通貨交換業者として、仮想通貨交換所c0ban取引所を運営する。同交換所では、同社独自の仮想通貨c0banを扱う。c0banは同社の動画広告プラットフォーム「c0ban.tv」でも利用される。

ブロックチェーンのメディア広告への応用

 LastRootsは2016年7月にICOを実施し、仮想通貨c0banを発行して6億円を調達した。その後9か月でウォレット、Androidアプリ、仮想通貨取引所、Webアプリのリリースを完了。資金調達時に計画したサービスのすべてを導入し、自前の交換所にc0banを上場していると小林氏は語る。一連の取り組みは「ICOの実施」「ICO後のサービスリリース」「ICO後の取引所での通貨の取り扱い」の3点において、日本初であったという。

 講演のテーマにもあるとおり、動画広告へブロックチェーンを応用したものが同社の提供するc0ban.tvである。従来の動画視聴サービスにおける広告は、ユーザーが望まないCMを強制的に見させられるという問題があった。c0ban.tvでは動画広告のみを配信し、広告視聴の見返りとしてc0banを配布する。従来、広告主がプラットフォームに支払っていた広告料を、ユーザーへ直接支払う形となり、その需給がマッチするという。

 c0banのシステム全体像は、c0ban取引所を運用するデータセンターと、API経由でアクセスするクラウド上のc0banアプリとウェブウォレット、c0banブロックチェーンで構成される。これらを連携し、単一のアカウントで仮想通貨交換所とc0banアプリを利用することができる。この仕組みをデータ処理特許として出願済み(出願番号:2017-133589)とのこと。

 2017年2月にリリースされたc0ban.tvは、2018年7月以降で急激に利用数が増加したという。ピークとなる2018年9月には月間のトランザクション数(広告が再生されc0banが付与された回数)が、600万を越えたとのこと。数値は実需であり、サービスとしての仮想通貨利用においては世界最大級のトランザクション数であると小林氏はいう。

仮想通貨交換業者としての業務改善への取り組み

仮想通貨交換業における業務の区分

 仮想通貨交換業は、簡単に言うと「銀行とFXを合わせたようなもの」と小林氏はいう。口座を預かる金融的な業務と通貨の取引を行うFX業務で構成される。コインチェック社の流出事件では、取引所のウォレット機能に含まれる送金システム、すなわち金融機関的な業務において問題が生じたのだという。事件以来、金融部分の規制が特に厳しくなり、「地方銀行よりも厳しいかもしれない」というのが氏の見解だ。こうして、金融とFXの両方の規制をクリアしなければならないため、新しく仮想通貨交換業の認可を取得するのが難しいとのことだ。

 規制に関して、2018年には国内のほとんどの仮想通貨交換業者が金融庁から業務改善命令を受けている。LastRootsは2018年4月に業務改善命令を受け、現在ガイドラインに沿った運用を実施するため、対策を進めているという。

 LastRootsはSBIグループより出資を受けていたが、2月末に株式会社オウケイウェイヴによる株式取得を受け、オウケイウェイヴ社の持分法適用関連会社となっている。業務改善に向けて、同社からのエンジニア派遣などを受け、体制の強化を精力的に進めているという。

小林氏「仮想通貨交換業は銀行とFXを合わせたようなものだ。両方のハードルを越えなければならない」

 業務改善について、小林氏に現在の状況を伺った。氏は、金融庁の指示により詳細な部分を明かすことはできないと前置き、開示できる進捗状況を語った。まず、システム的な部分は改善が完了しており、現在は金融機関としてのガバナンスの強化、組織体制の改善に務めているとのこと。「システム作りには自信があるが、金融機関的な管理体制の構築は難しい」と小林氏は語る。その点を補うため、金融機関出身者などを雇用することで改善を進めているとのことだ。

 全体的な改善の進み具合は伺うことができなかったが、今後も業務改善に努め、事業を継続していくとしている。業務改善の後には、金融サービス面でのさらなる事業展開、仮想通貨交換所での取り扱い銘柄の増加といった今後の展望も示した。

日下 弘樹