イベントレポート

「パートナー企業のSuica含む電子マネー、ステーブルコイン、ICOやSTOをサポート」とディーカレット時田社長は語る

既存金融インフラとは別に新たな金融インフラを構築、デジタル通貨のメインバンクを目指す

株式会社ディーカレット・代表取締役社長の時田一広氏

 金融庁認定の仮想通貨交換業者として登録された株式会社ディーカレットは3月27日、メディア向けに「ディーカレット事業発表会」を開催した。認定登録完了に伴い、同日より口座開設申込受け付けを開始した仮想通貨交換所「DeCurret」のサービス概要や同社の目標とする「新しい金融プラットフォーム」について、代表取締役社長の時田一広氏が解説をする。「すべての価値をつなげて、シンプルに交換する」をコンセプトに、安全性と利便性を備えた「デジタル通貨のメインバンク」を目指すという。

 同社は仮想通貨交換所の開業を目標に2018年1月、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)を筆頭に、国内大手企業19社の出資によって設立された。準備期間1年2か月を経て、晴れて金融庁に認定された国内19社目の仮想通貨交換業者となる。「ディーカレット事業発表会」にて、新しい時代の金融プラットフォームサービスについて今後の事業計画の発表と共に、新規口座開設の受け付けを開始した。併せて「DeCurret開業記念キャンペーン」の実施を発表し、ベーシックアカウント開設でもれなく2000円相当のBitcoinが、口座開設後に仮想通貨取引を行うことで最大3500円相当のBitcoinが贈呈されることを明らかにした。仮想通貨の取引サービスについては、4月16日より開始予定とのこと。BTC・BCH・LTC・XRP・ETHの現物取引に対応する。

パートナー企業との連携について

 ディーカレットは、設立当初、出資する国内大手企業19社の顔ぶれに注目が集まり、各方面からの期待が高まっていた。会社設立後に、他社の仮想通貨流出事件が複数発生し、業界全体が運営体制の見直し、特にセキュリティ面において一層の強化が求められるなど、周知の状況となり、当初予定されていた2018年内の仮想通貨交換業開業が大幅に遅れたという。時田氏いわく、そのような状況から、みなし業者ではない新規の仮想通貨交換業者が初めて金融庁の認められたのは、同社の運営・セキュリティ体制が確かなものであると判断されたものと理解しているという。

ディーカレットのパートナー企業(出資会社)

 名だたる企業が出資をするディーカレットは、各社をパートナー企業とし紹介をする。そのことからあらゆる臆測が流れるも、今回、事業発表会にてその多くを明らかにしている。たとえば、既存の電子マネーで仮想通貨でチャージができるサービスを展開する予定だという同社だが、パートナーとして参入するJR東日本の電子マネーSuica(スイカ)への対応については、「検討しているものの現時点での具体的な計画はまだない」と述べている。ただし時田氏は、電子マネーについては年内に少なくともひと桁台の電子マネーへの対応は予定していることを明らかにした。サービスについては、6月または7月あたりの開始を目指しているとのこと。

 また、STOやICOについて扱うことも否定はしていないが、しかし同社が率先をしてトークンを発行することはないと時田氏は語る。あくまでも、他社が発行し、推進をするものを、仮想通貨交換業者としてサポートをしていくという。これについても、その道のプロであるパートナー企業が参加していることから、しっかりと連携をしていく道は用意されている。

 仮想通貨や法定通貨のデジタル化、ステーブルコインの取り扱いについても同様な内容であることも明かしている。ステーブルコインについても、同社が発行するのではなく他社が発行したものを、仮想通貨交換業者としてサポートするとした。パートナー企業として参加しているメガバンクがそれぞれ推進しているプロダクトがすでにあることも明らかになっていることから、その連携も視野に入っている。

 あくまでも仮想通貨交換業者としてサポートをするという同社の狙いは、既存の人気サービスや推進中のプロダクトと連携をすることで、これまで仮想通貨に興味のなかった人を容易に取り込むことができると時田氏は話す。同社が新たに仮想通貨の新サービスを開発し提供しても、現状では仮想通貨に興味がある一定数の人々にしか刺さらないという。それよりも、まずは既存の電子マネーやポイントサービス等、すでに使われているものとの連携することによって、現在、そのサービスを利用する人々を取り込みながら、より仮想通貨を一般的なものにしていきたいとのこと。

 ディーカレットは、これらを実現させるためのプラットフォームを、既存の金融システムに平行するような形で、新たに構築するという。従来のシステムに縛られることなく、新しいことが実現できるよう、これまでのシステムとの連携を取りながらIIJの技術力によって新たな金融プラットフォームを新構築していく。これが多くの大手企業パートナーを参入させる原動力になっている。インターネット事業で信頼のおけるIIJだからこそ、多くの企業を納得させたようだ。

パートナー企業の一員として野村ホールディングス株式会社・執行役員副会長の尾崎哲氏が祝辞とともにICO、STOについて語る

具体的な事業とロードマップについて

 まずはディーカレットのステージ1として、仮想通貨を中心としたサービスを確実なものにしていくという。その一歩が、仮想通貨の交換業務。プラットフォームのコアとして、仮想通貨の交換、保管、そして送受を確実に実行し、サービスを提供していく。4月16日から、BTC/JPY・BCH/JPY・LTC/JPY・XRP/JPYとBCH/BTC・LTC/BTC、XRP/BTCの通貨ペアによる現物取引の開始、6月または7月に新規にETHを追加する。ちなみにETHが後から追加されるのは、単にウォレットの開発都合だという。ETHのみやや遅れているとのこと。この後に、証拠金取引の開始、仮想通貨による電子マネーへのチャージサービスを予定している。いずれも年内には実現させたいという。

 また現在、すでにiOS版のアプリを公開しているが、この後、Android版も追って公開予定とのこと。

 ディーカレットは、仮想通貨や法定通貨のデジタル化、ステーブルコイン、トークン、電子マネー、デジタルポイントなどすべてを含めてデジタル通貨と定義する。ステージ2では、さらにプラットフォームを進化させて、法定通貨と仮想通貨の交換業務に留まらず、あらゆるデジタル通貨、デジタル資産が交換可能なサービスを目指すとしている。これらのサービスは、キャッシュレス化を進化させたものと位置付けをする同社は、「リアルとデジタルの橋渡し」と称した決済サービスとして将来的に展開していく予定であるとした。ステージ2については、仮想通貨を取り巻く今後の法規制や環境を鑑みて、その実現は2020年以降であることも語られた。

高橋ピョン太