イベントレポート

VALU、飲食店向け開業資金調達サービス「Fundish」を今夏開始

開業資金を“会員権”で調達。会員権は売買することも可能

株式会社VALU・代表取締役の小川晃平氏(写真右)、「Fundish」事業責任者の村上守氏(写真左)

株式会社VALUは11日、飲食店の資金調達を円滑にするためのプラットフォーム「Fundish」(ファンディッシュ)を発表した。飲食店を開業したい個人・法人が“会員権”を発行し、これを売却して資金を調達。また会員権は第三者との間で売買することもできる。2019年夏のサービス開始に先駆けて、現在はティザーサイトを公開中だ。( 編集部注: Fundishは仮想通貨・ブロックチェーンに関連しない資金調達サービスとして提供予定)

クラウドファンディング感覚で飲食店を支援、取得した会員権は売買も可能

起業家、クリエイターなどさまざまなジャンルの“個人”を、仮想通貨によって支援できるSNS「VALU」の運営元が、新たに立ち上げた事業が「Fundish」である。

Fundishでは、飲食店の開業に必要な資金をクラウドファンディングに近い形式で募ることができる。出資者には、出資額に応じて会員権が発行され、例えば店を優先的に予約できる等の特典が得られる。

Fundishの特徴は、この会員権を売買できるようにすること。一例としては、地元の店に投資して会員権を得たものの、引っ越しの都合で店に通えなくなったので会員権を売却する……といったことが可能。「一度買ったら終わり」のクラウドファンディングとの差別化が図られている。

Fundishでは、会員権を発行し、資金調達する
会員権を売買できるのが、クラウドファンディングとの大きな違い

11日には都内で記者会見が開催され、「Fundish」の事業責任者である村上守氏が登壇した。近年の飲食店経営にあたっては、人口減に伴う市場縮小、原価率の高騰など課題が多いという。

その一方で「予約待ちに数カ月」のような人気店は、飲食代以上の価値を生み出せているにも関わらず、それを資本化できない。そこへ会員権を媒介として、店主とファンが継続的にコミュニケーションできるようにし、店舗運営を活性化させようというのがFundishの狙いだ。

会員権の売買にあたっては市場が形成され、時価で取引される。Fundishでは、会員権をストックオプションのようなかたちの従業員報酬として活用することも想定している。

会員権は時価で売買されるため、ストックオプションのような形で従業員に割り当てれば、給与とはまた別の報酬になる

飲食業界では近年、ITサービスを活用して業務効率化を図る「レストランテック」という言葉が生まれている。また、Uber Eatsのようなデリバリーサービスを用いた無店舗型営業「ゴーストレストラン」も増加中という。

村上氏は「VALUは、(大企業に集中しがちな)お金や評価(信用)を個人へシフトさせようという観点から立ち上がったサービス。Fundishではそれの飲食店版」と説明。飲食店開業の難題である資金調達を、VALU流の発想でサポートしていきたいとアピールした。

掲載店舗は厳選、支援は日本円でOK

Fundish上で出資を募りたい業者に対しては、VALU社が徹底してサポートを行う。このため、夏のサービス開始以降、2019年内に会員権販売を行うのは5社程度となる見込み。Webからの簡易な手続きだけですぐ会員権販売ができるといった運用は想定していない。

会員権の売買システムも充実させる。例えば、会員権を取得してすぐに転売されては困ると言った声が出た場合、ロックアップ条項を盛り込む。取得から一定期間は会員権を売却できないようにするなど、案件別に対策を行える。

Fundishの仕組みを説明する村上氏

また、SNSのVALUでは支援に仮想通貨(Bitcoin)を用いていたのに対し、Fundishは日本円(JPY)のみをサポートする予定。仮想通貨は法律をめぐる状況がめまぐるしく変化しており、純粋に「飲食店を開業したい」「飲食店を支援したい」と考えてくれるユーザー層の心理的障壁にならないよう、配慮した。また、運営側のサーバーなどにもブロックチェーン技術は使わない予定だ。

発表会に同席した株式会社VALU・代表取締役の小川晃平氏は「Fundishで、飲食業界にイノベーションの風を吹かせられたら面白いと考えている。新事業として力を入れていき、最終的には『レストラン業界の東証』のような存在を目指したい。(スタートアップ企業が株式上場を目指すように)良いレストランが集まる場になってくれれば」と述べた。

森田 秀一