イベントレポート

SNS「VALU」が路線変更? 支援手段をビットコインから日本円へ切り替え検討

小川晃平代表が報道関係者向け説明会で発言

起業家・クリエイターらへの経済的支援を仮想通貨で行うSNS「VALU」が、新しい方向性を模索しているようだ。運営元である株式会社VALUの代表取締役である小川晃平氏は6月11日、SNS「VALU」における支援手段を、これまでのBitcoin(BTC)から将来的に日本円(JPY)へ切り替えるか検討中だと語った。年内に対応を明らかにしたいという。

株式会社VALUの代表取締役の小川晃平氏

「VALU」サービス開始から2周年、社として初の報道関係者向け説明会を開催

VALU社は6月11日、同社としては初となる報道関係者向け説明会を開催。飲食店の資金調達をサポートする新事業「Fundish」の概要説明に加え、小川氏が登壇してVALU社が目指すビジョンなどを示した。( 編集部注: 「Fundish」については別稿で紹介する予定です)

「VALU」のTOPページ

 VALU社は2016年12月創業。翌2017年5月に、SNSとしてのVALUがベータ版サービスを開始した。事業を立ち上げたい、作品をアピールしたい等、何らかの目的をもった個人が疑似株式「VA」を発行し、資金調達できるサービスである。VAはユーザー間で時価売買でき、そのバックエンド処理にはBitcoinのOpen Assets Protocol、取引の決済自体にもBitcoinが用いられている。

 VALUを巡っては、ローンチから間もない2017年夏、人気YouTuberがVAの値を意図的につり上げて売り抜けたのではないかと疑われる事件が発生。VALUはその対応に追われた過去がある。その後もVALUの運営は続けられ、VALU社は2019年1月、投資段階シリーズAラウンドにおいて、5億円の資金調達に成功した。

VALU社のビジョン

「VALU」誕生のきっかけはクレジットカードの限度額!?

小川氏がVALU社を創業したきっかけの1つに、自身のフリーランス時代の経験がある。小川氏は大学院卒業後、グリー株式会社に入社。米国支社でサーバーエンジニアを務めていたのだが、仮想通貨・ブロックチェーンへの関心が湧いたことからフリーランスに転身した。

しかし、転身した2015年頃はまだブロックチェーン関連の仕事が少なく、収入が減少。「お金の節約のために実家へ戻ったり、飲み会の数も減らした」(小川氏)

その後収入は回復していったため、再度自分で不動産を借りようとしたところ、入居審査に通らない事態が4~5回連発。さらに、クレジットカードを新しく作ったところ、限度額は30万円にとどまった。新入社員時代に作ったカードでは限度額が150万円だったにも関わらず、である。

クレジットカード限度額で感じた“理不尽”が、VALU誕生のきっかけの1つという

「ぺーぺーの新人だった頃より、むしろエンジニアとしての経験を積んだのに限度額は下がった。昨今はYouTuberやインスタグラマーといった新しい職業が生まれているにも関わらず、社会の評価とは結局のところ、大きな企業に勤めているか、資産を沢山持っているかで決まってしまう。こうした、おかしな状況をシフトさせるのがVALU社のミッションだ」(小川氏)

評価・信用は資金集めにも関わってくる。日本では、金融緩和の一環で紙幣(日本銀行券)の発行量が増えているにも関わらず、人々の年収は上がっていない。つまり、資金の流入先が、信用面で手堅い大企業への投資だけに偏っていると小川氏は指摘。株式を上場していない個人・中小企業の資金集めをサポートするのが、SNSとしてのVALUの位置付けという。

紙幣の発行が増えているのに、平均年収は上がっていない。これはつまり、お金が大企業への投資ばかりに集中していることを意味する

新事業は当初からJPYだけでスタート~カストディ業務規制が影響か

2年前にスタートしたVALUは、仮想通貨を全面的に使っているのも特徴だった。だが2019年夏にスタート予定の飲食店向け資金調達プラットフォーム「Fundish」はJPYでの利用を前提としており、仮想通貨決済には非対応となる予定だ。純粋に飲食店の開業・支援だけを行いたいユーザーにとって、仮想通貨を用意するのはハードルがまだ高いと判断した。

加えて、仮想通貨に関する法規制対応の煩雑さも背景にあるようだ。この件について小川氏は、2020年にも施行される予定のカストディ業務関連規制へ対応するより、JPY対応だけで進めた方が、事業の立ち上げが素早くできるだろうとの見解を示した。

またFundishだけでなく、VALUについてもJPYへの転換を考え、議論している最中という。

「VALUのほうでもカストディ業務への対応が出てきていて、そこを正面突破するのか。あるいはブロックチェーンを使うのか、それとも収納代行を使うのか。いろいろ検討しているが、この件については年内にアナウンスしたい」(小川氏)

記者からの質問に答える小川氏

森田 秀一