イベントレポート
「仮想お墓ゲーム」がグランプリ受賞。オンライン御供養で墓地不足や無縁仏の問題を解決する発想
ブロックチェーン技術のハッカソンイベント「Decrypt Tokyo 2019」より
2019年6月13日 06:00
ブロックチェーンやスマートコントラクト領域におけるセキュリティ監査企業のクォントスタンプジャパン合同会社は、6月8日と6月9日の2日間、東京・港区でブロックチェーン技術のハッカソン「Decrypt Tokyo 2019」を開催した。
同ハッカソンは主に初中級者を対象としており、ブロックチェーン技術者の活性化と育成を目的にしたもの。会場に100名近くのエンジニアが集結し、2日間で本格的なブロックチェーンアプリの企画立案から開発に挑戦した。
2日目である6月9日の午後から、全20チームの成果発表を兼ねたプレゼンと審査が行われた。審査のポイントはオリジナリティ、技術、ユーザビリティ、インパクトの4つ。本稿では上位を受賞したチームのプレゼンを紹介する。
優勝は「仮想お墓ゲーム」。トークンを用いた投げ銭でオンライン御供養を実現
審査の結果1位に輝いたのは、ブロックチェーンを利用した「仮想お墓ゲーム」。ブロックチェーンに故人の情報をNFT(Non Fungible Token)で記録して、仮想的なお墓を構築するというものだ。
同チームは解決すべき問題として「お墓の土地不足」「管理者がいない無縁仏の増加」「物理的なお墓の管理コスト」を挙げ、持続可能かつブロックチェーンに永久保存したい情報の1つは故人情報ではないかと説明する。
生前の登録情報にもとづいて、死亡した際に親族にトークンが分配される。仮想のお墓には親族、友人、他人という属性ごとに「オンライン御供養」として投げ銭を入れることができ、投げ銭に応じて「汚れ具合」が改善していくという。集まった投げ銭は親族のみが回収できる仕組みだ。
プレゼンに対する会場の反応も良く、審査員からも「お墓をトークンで管理するという発想が面白い。故人がもつ資産の分配・相続という視点も大事なこと」と高評価を得て、優勝を勝ち取った。
働き方の多様化に対応して契約・支払いをスマートにする「MYPAYPAY」
準優勝となる「1st Runner Up」を獲得したのは、ブロックチェーンで複数の仕事の契約・支払い・実績すべてを行う仕組みである「MYPAYPAY」だ。
政府が「働き方改革」を掲げていることもあり、人の働き方は多様化している。しかし仕事ごとに毎回契約をするのが面倒だったり、報酬を受け取るまで時間がかかったり、短期間の仕事の実績は外から見えづらく評価されづらいという問題がある。MYPAYPAYはそうした問題を解決するという。
スマートコントラクトを利用することで契約書を作成する負荷を軽減するだけでなく、契約内容がブロックチェーンに長期的に保存される。また、報酬を仮想通貨で支払うことで締め日や給料日の概念がなくなり、終えた仕事の報酬をすぐに受け取れるようになる。さらに仕事の実績と評価が誰でも見られる情報としてブロックチェーンに記録されるので、発注側も安心して仕事を依頼できるという。
審査員からは「履歴は他人がどこまで見られるのかが気になる。分給や秒給を実現するならそれを計測する外側の仕組みも必要」としながらも「可能性を感じる」と評価する声が挙がった。
オンライン懸賞の信頼性をブロックチェーンで担保する「COME-ON!!」
3位の「2nd Runner Up」を受賞したのは「COME-ON!!」。SNSでしばしば見られる「○○名に○○円差し上げます」といった懸賞ツイートが「本当に信頼できるのか?」という不安を、ブロックチェーンでトラストレスにして解消する仕組みだ。
YouTubeやSNSで行われる懸賞は、内部が見えないので信頼性について懸念がある。同サービスは、「EVENTER」と「JOINNER」に分かれ、EVENTERが開催した懸賞イベントにJOINNERが参加する。両者ともGoogleアカウントで認証することで「チャンネルをフォローして懸賞に参加」という仕組みを実現している。懸賞参加者に対して、簡易的なKYC(Know Your Customer:本人確認)としての役割も兼ねるという。
懸賞はブロックチェーン上で行われるので、本当にお金が支払われたのか、フェアに抽選されたのかを確認することが可能だ。特徴的なのは「1行実装」で、開催側はYouTubeの説明欄などに1行のコードを貼り付けるだけで懸賞イベントを実現できる。
審査員からは「懸賞が終わったらチャンネルを抜けてしまう人もいそう。それを継続してもらうところまでフォローできたら開催側のメリットは大きい」とコメントが寄せられた。
ほかにも受賞多数。参加者の4割以上が意欲ある学生
上位3チーム以外にも、審査の4つのポイントそれぞれで4チームに特別賞、そして3チームに審査員特別賞が贈られた。それぞれ簡単に紹介しよう。
- オリジナリティ特別賞「Cashapon」
ブロックチェーンの仮想ガシャポン(ガシャポンはバンダイの登録商標)。QRコードで読み込んで2タップで簡単に遊べる。 - 技術完成度特別賞「Encrypt My Data」
各種パスワードをハッシュ化してブロックチェーンで管理する。データベースを使わないことで高いセキュリティが得られる。 - ユーザビリティ特別賞「Clowd Insurance」
物損保険を保険会社を通さずブロックチェーンで実現する。物損の事実確認は多数決(Vote)制。スマートコントラクトを用いて、結果に応じて自動的に支払いを行う。 - 社会的影響力特別賞「D-Media - Decentralized Social Media」
記事を投稿する人とレビュアーに分かれて、投票制でフェイクニュースに対抗する。投票結果がブロックチェーンに保存され、信頼性を積み重ねられる。 - 審査員特別賞「IVoS」
アイドルの声やささやきをトークンとして発行してETHで販売する。発行数量を限定することでファンは所有欲を満たされる。 - 審査員特別賞「AiPlus」
交際状態を可視化することでマッチング業界を健全に活性化する。QRコードでカップル登録し、記念日などのイベントで浮気がないか知人が確認できる。 - 審査員特別賞「RushHour Reduction」
都心の通勤ラッシュを緩和する。鉄道会社が登録した混雑時間を避けた人にインセンティブとしてETHを自動で配布する。
審査は、後述のスポンサー企業から参加した11名の審査員が協議して行われた。主催者によると、同イベントの参加者は40%以上が学生で、20代と30代を「若手」として合わせたら全体の94%を占めるという。イベントの狙いである「ブロックチェーン業界の未来を牽引していく若手に、学びと開発の機会を提供する」という目的は十分に果たされたようだ。
- Quantstamp
- OmiseGO
- 株式会社Datachain
- 株式会社Speee
- Curvegrid株式会社
- 株式会社メタップス
- 株式会社Sun Asterisk
- 444株式会社
- 日本マイクロソフト株式会社
- LayerX Inc.
- 株式会社モバイルファクトリー
- KYUZAN Inc.
- 株式会社リクルート
- Blockstack Inc.
- Kyber Network
- Web3 Foundation
- 株式会社フィナンシェ
【「Decrypt Tokyo」スポンサー企業】