イベントレポート

テレビのIoT化は災害対策にもなる。INDETAILが挑戦する3つの次世代プロジェクト

スマートエネルギー、スマートテレビ、スマートチェックインをブロックチェーンで実現

INDETAILの坪井大輔氏は8月7日に開催された「Oracle Modern Cloud Day Tokyo」で、同社が取り組むブロックチェーンを活用した3つのプロジェクト「RISO ENERGY」「RISO TV」「スマートチェックインサービス」について紹介した。ビジョンに「Upgrade the World!」を掲げている同社らしく、いずれも未来を感じさせるものばかりだ。なお、午前中の基調講演で同氏が紹介した「ISOUプロジェクト」は別の記事で触れている。

INDETAIL代表取締役の坪井大輔氏

次世代のガソリンスタンドの形。EVスタンドプラットフォーム「RISO ENERGY」

「RISO ENERGY」は、EV車(電気自動車)の充電スタンドプラットフォームだ。坪井氏は「ガソリン車からEV車になると、スタンドのビジネスモデルががらっと変わる」と説明する。

現在のガソリンスタンドは資源としてガソリンを輸入して、敷地内で自動車が順番に給油するモデルで成り立っている。これがEV車になると、資源が電力になるのでプレーヤーが輸入業者ではなく電力会社に変わる。そしてEVスタンドの充電は10~30分ほど時間がかかるので、現在のように自動車が並んで順番待ちをするモデルは成り立たなくなる。

坪井氏は「例えばスーパーやコンビニ、道路のちょっとした空きスペース、駐車場などバラバラの場所にEVスタンドを設置して、ユーザーが都合のいい時間に充電するモデルに変わる」と指摘する。

北海道電力と協力してプロジェクトを進めている

そうすると、バラバラのEVスタンドをどう1つのプラットフォームにつなげるかが課題になる。そこでブロックチェーンを利用したEVスタンドプラットフォームが登場するわけだ。RISO ENERGYでは、EVスタンド(IoT)やアプリケーションから送られるトランザクションをイーサリアムのチェーンで管理して、セキュリティを確保しながら支払いの処理や利用状況のモニターなど各種サービスを統合的に提供する。

バラバラのEVスタンド(IoT)をブロックチェーンで管理して、オーナーとユーザー両者の利便性を向上

家庭のテレビにトークンを配る「RISO TV」

「RISO TV」は、家庭のテレビをデバイスとしてネットワークでつなぎ、マーケティングやテレビ側からの情報発信に活用するいわゆる「スマートテレビ」サービスだ。

「大きな台風が来ると、地方では役場の人が避難してくださいと放送します。でも住民が放送をきちんと受け取ったかはわからない。例えば村をブロックチェーンでつないで、避難を勧める放送にdボタンで『はい』『いいえ』を送れば、誰が避難したか、誰が放送を見ていない可能性があるのかがわかるかもしれません。過疎地域はスマホの普及率が低いので、スマホだけに依存してはいけない。そこでテレビを使えないかと提案しています。」(坪井氏)

家庭のテレビをIoTデバイスとしてブロックチェーンで接続する

坪井氏がもう1つ想定しているのは、広告だ。テレビをブロックチェーンにつなげると、何時から何時までテレビをつけていたか、つまりそのデバイスにどの広告が流れていたかのデータが正確にわかる。さらにテレビの利用に応じてトークンを配れるので、広告主からすると放送局をまたいだマーケティングが可能になるだけでなく、テレビゲームを遊んでコインを貯めるといった方法も考えられる。仕組みはRISO ENERGYと同じで、IoTデバイスのテレビをイーサリアムのブロックチェーンにつなげるという発想だ。

「スマホが普及していない家庭にもテレビはあります。バラバラのテレビをつなげることで、自治体の防災対策や、新しいマーケティングに利用できないかと考えています。」(坪井氏)

防災や広告に活用することを想定している

外国人旅行者向けの無人スマートチェックインサービス

同社が拠点を置く北海道は「インバウンドの観光客が多い」と坪井氏は説明する。しかしホテルにとっては外国語ができるスタッフの準備は大きな課題になる。同氏が最後に紹介したのは、タブレットデバイスとスマートロックを連携して、チェックインやキーの発行、顧客情報の管理などをすべて無人で行う多言語に対応したサービスだ。

多言語に対応した宿泊施設向けの無人チェックインサービス

仕組みは次のとおり。利用客がWebサイトから予約するとQRコードが発行され、顧客情報がクラウドに保存される。当日に受付のタブレットでチェックイン手続きを行うと、ブロックチェーン上の宿泊台帳に顧客情報が記録され、部屋に入るためのスマートキーが専用アプリに発行される。宿泊予定が完了したら、スマートキーは無効になるというわけだ。このサービスではHyperledger Fabricを採用している。

Webサイトの予約から当日のチェックインまですべて無人で行える

ここで紹介したサービスはすべてOracleのクラウドサービスとブロックチェーンプラットフォームを利用している。その理由について、坪井氏は「ブロックチェーンのテクノロジーは目的ではなく、あくまで手段だから」と説明する。

「ブロックチェーンを活用して何かを作ろうとすると、エンジニアは『自分たちでもできますよ』とよく言います。でも、そこに多くの時間を割くのは良くない。手段であるブロックチェーンの部分をいかに簡略化してコストを下げるか、本来の目的である事業に集中できる環境を作れるかが重要だと考えています。」(坪井氏)

西 倫英

インプレスで書籍、ムック、Webメディアの編集者として勤務後、独立。得意分野はデジタルマーケティングとモバイルデバイス。個人的な興味はキノコとVR。