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国連WFPがブロックチェーンと虹彩認証による難民への食料支援の実証実験 〜「見えない」人々に身分証明手段を与える方法

 国連計画の1つで、飢餓と闘う世界最大の人道機関である「世界食糧計画(WFP:World Food Programme)」は、公式サイトなどでブロックチェーン技術を活用した難民支援の取り組みを紹介している。最新の記事は6月4日に公開されており、興味があればぜひ参照していただきたい。

 また、アメリカのニュース専門放送局CNBC(Consumer News and Business Channel)は、“This Is How Blockchain Can Give ‘Invisible’ People An ID(これはブロックチェーンが「見えない」人々に身分証明手段を与える方法だ)”という映像を5月13日(現地時間)に公開した。

This Is How Blockchain Can Give ‘Invisible’ People An ID | CNBC

 CNBCによると、世界の難民約6500万人のうち80%以上は身分証明書を持っていないという。また、アイデンティティー危機は難民だけではなく、身分証明書を持っていない人々は世界で約10億人におよぶ。支援があっても難民自身が身分証明できなければ、銀行で現金を引き出したり、クレジットカードを作ったりすることは難しい。詐欺など不正行為の恐れや、銀行やクレジットカード会社などの仲介業者による高価な検証が必要となるためだ。

 そこでWFPは、現金送金をより効率的かつ透明かつ安全にするため、まずパキスタンのシンド州でブロックチェーンを用いた実証実験を2017年1月に開始した。その際に得られた教訓を踏まえ、ヨルダンのシリア人難民キャンプでより頑強なブロックチェーンシステムを構築した。このシステムには、国連難民高等弁務官(UNHCR)のバイオメトリック技術が用いられている。ヨルダンの難民キャンプでは、2018年1月時点で10万人以上の虹彩認証による身分証明が可能になっている。つまり、現金、クーポン券、クレジットカードの代わりに、目をスキャンすることによって、難民キャンプ内のスーパーマーケットから食料が購入できる。

 これにより、不正行為やデータの管理機会を減らしつつ、取引処理の高速化が実現した。ブロックチェーン(分散型取引元帳)には、変更できない安全な方法で取引が記録されている。小売店と難民が直接取引できるため、銀行などの仲介業者が不要となり、手数料は最大で98%削減できる見込みという。WFPはこの実証実験の結果に応じ、デジタルID管理やサプライチェーン&オペレーションなどの分野にブロックチェーン技術の利用を拡大する予定だ。