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EEA、エンタープライズ・イーサリアムの新バージョンを発表

V3クライアントとAPIの仕様書を更新し公開

(Enterprise Ethereum Allianceの発表資料より引用)

 Ethereumの企業利用を進める団体Enterprise Ethereum Alliance(エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス、略称:EEA)は5月13日、2つの文書を公開した。1つ目はEnterprise Ethereumの新バージョン(V3)の仕様書。もう一方は、Enterprise Ethereumにおいて、オフチェーン上でTrusted Computingを実現するためのAPIについて解説した仕様書だ。いずれもEEAの公式サイト上で無料公開されている。

 「EEA Client Specification V3」として公開されたEnterprise Ethereum クライアントV3の仕様書は、同ソフトウェアの全仕様を網羅する。同書はEEAの中枢メンバーであるPegaSys社を中心に、インテルやJPモルガン、マイクロソフトをはじめとしたEEAの中核をなす多数の企業が編集に協力している。Enterprise Ethereumは2018年にその最初の安定版であるV1をリリース以来、約6か月ごとにクライアントを更新している。今回公開されたV3は、その3番目のバージョンとなる。

 V3では、認可制ネットワーク(Permissioned Network)の構築に関して、認可システムの単純化と柔軟性の向上が行われた他、エコシステムからのフィードバックに基づいて、パフォーマンスと相互運用性を改善したとのこと。前バージョンからの代表的な変更点は下記の通りだ。

  • 認可システムの大幅な簡素化
    新システムにより、認可制ネットワークを異なるクライアントが同じ手法で作成し運用することが容易になる。柔軟性が向上し、個々の企業のニーズを満たす幅広い認可システムを構築できる。
  • 実装と適合テストを簡素化するための要件の明確化
  • 第一の標準仕様として合意形成アルゴリズム「Clique Proof of Authority」(クリークプルーフオブオーソリティ)の採用
    2019年10月リリース予定のV4では、「Byzantine Fault Tolerant」(ビザンチンフォールトトレラント、BFT)を2番目の標準仕様として追加予定。

 「EEA Off-Chain Trusted Compute Specification V1.0」はオフチェーン上にアクセスする端末同士で信頼関係を構築するTrusted Computingの仕組みを実現するAPIについて、その仕様をまとめたもの。Trusted Computingにより、ブロックチェーン間でのプライバシー保護や、メインブロックチェーンにアクセスする際のスケーラビリティと遅延の改善、外部情報を取り込むオラクルシステムへの対応が可能だという。

 同書では、アプリケーションの安全な実行環境「Trusted Execution Environment」(TEE)や「Zero-Knowledge Proofs」(ゼロ知識証明)、「Trusted Multi-Party-Compute」(MPC)などのTrusted Computing手法に対して、互換性のレビューを実施したとのこと。下記のような企業ニーズに対応するよう設計されているという。

  • 相互に信頼していない関係者間におけるブロックチェーン上のプライベートなトランザクションで、ブロックチェーンへのアクセス権を持つ他の関係者にトランザクションの詳細を開示しないもの
  • ブロックチェーン上の選択された当事者に対して部分的に情報を開示する。同時にその当事者に対して他の情報の機密性を維持する
  • 選択したトランザクションをメインのブロックチェーンから信頼できるコンピューティング環境にオフロードして、パフォーマンスを向上する
  • 一部のエンタープライズのユースケースで必要とされる、信頼できる外部情報を提供するオラクルシステムの実現