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Basset、FATFの仮想通貨トラベルルールを分析

仮想通貨交換所に向け対応手法提案する文書を公開

(Image: Shutterstock.com)

FATFがマネーロンダリング・テロ資金供与対策(AML/CFT)として各国に示す指針「40の勧告」には、仮想通貨に関連したものも含まれる。2019年6月に正式に課されたガイドラインの中で、通称「トラベルルール」と呼ばれる制度が議論を呼んでいる。

このトラベルルールについて、Bassetが仮想通貨交換所に向け、制度そのものに対する分析や、どのような対応を実施するべきかを記したディスカッションペーパーを公開した。同社は、仮想通貨交換所や行政機関、警察、司法機関向けにブロックチェーン上の取引分析・監視ソリューションを開発するスタートアップだ。

仮想通貨に関するトラベルルールは細かいところを省くと、高額の仮想通貨の送金について、仮想通貨交換所は送り手と受け手の個人情報を取得し、送金に関わる交換所間で相互に情報交換する必要があるというものだ。この体制を、各国は2020年6月までに法制度として整備しなければならないとされている。これら情報の交換は、制裁対象として指定された人や組織による資金移動を阻止するためだという。

このルールによって、仮想通貨交換所は入出庫のそれぞれの業務において、間にリスク判断の工程を追加する必要が出てくる。入庫においては、トランザクションの確定後に顧客への取引目的の確認などのリスク判断を行う。出庫では、トランザクションの発行前に同様のリスク判断の工程を踏む必要があるという。

このように取引のリスク評価が義務づけられる中で、そのための個人情報の取得と、取得した個人情報をどのように送信、共有するのかが課題になるという。取得する情報の要件やフォーマットを含め、国際的に対応が可能な形式が求められる。

トラベルルールへの答案

こういった課題があるトラベルルールに関して、Bassetのペーパーは3つの手法を提案。それぞれのメリットとデメリットを示している。

1つ目は、交換所間を直接的に接続する手法だ。詳細は省くが汎用性が高く技術的には比較的容易な手法だという。一方で耐障害性の低さなどの問題点も伴う。

2つ目は、交換所間を相互に接続するネットワークを構築する手法。事業者の増減に対する対応が容易で、開示要請への自動対応が可能なため、運用後の業務負荷が比較的小さいと見える。ネットワーク自体のメンテナンスでダウンタイムが存在する点、ネットワーク自体のセキュリティに対するリスク評価も必要となる点には注意が必要だ。

3つ目は、ブロックチェーンネットワークを利用して交換する手法。個人情報の交換を、Ethereumなどの既存ネットワークを用いて中継するという手法だ。前述の2つに対して耐障害性、可用性の問題点を解決した方法となる。問題点はブロックチェーン特有の鍵管理の業務が追加されること、アップデートの難しさ、高額な開発コストを挙げている。

以上、詳細についてはBassetが発行するディスカッションペーパーの原文をご確認いただきたい。同書には本稿で取り上げた内容のほか、トラベルルールの例外的な”仮想通貨交換所”対”非仮想通貨交換所”の間での送金などについても記されている。