5分でわかるブロックチェーン講座
第7回新型コロナウイルスのパンデミック宣言による市場の崩壊。一方で新たな団体の発足も
2020年3月18日 06:00
1.パンデミック宣言による影響から相場は大暴落
今週(3月10日から3月16日までの1週間)も、新型コロナウイルスが猛威を振るっている。世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界流行)を宣言した影響により、ビットコインを含むほとんどの暗号通貨市場が大暴落した。ビットコインの価格は、一時50万円前半台まで下落している。
米株式市場を中心に日経平均株価も大幅な下落をみせ、暗号通貨市場も引きずられた形だ。12日のニューヨーク株式市場では、3月で2度目となるサーキットブレーカーも発動している。
この大暴落は、暗号通貨マイニング市場における負のスパイラルを生み出した。価格が暴落したことでマイニングの損益分岐点を下回り、マイナーが軒並みマシンを停止したのだ。これにより、価格はさらに下落する悪循環に陥った。以下にビットコインマイニングの損益分岐点に関する、各データを掲載する。
- カペリオール・インベストメンツCharles Edwards氏:1BTC=8000ドル
- 中国拠点のマイニングプールf2pool:Antminer S9の場合1BTC=7518ドル
- 暗号通貨リサーチ機関TradeBlock:Antminer s17+の場合1BTC=6851ドル
- ベネズエラやウズベキスタンといった電気代が安価な国の場合1BTC=4000ドル
また新型コロナウイルスは、ビットコインが「デジタルゴールド」としての価値を有していなかったことを決定づけた。つまり、現在の価格は投機対象としての需要により形成されていたことになる。この事実に関して、年金口座に暗号通貨投資を提供するiTrustCapitalによるリサーチ結果が公開されている。アンケートによると、「現金」を安全資産と回答した人は、2月時点では回答者の18%にとどまったが、3月11日に約28%まで急増した。なお、「金(ゴールド)」を安全資産と回答した人は32%となっている。一方のビットコインは、残念ながら7%という結果だ。
ビットコインの構想が世に出たのは2008年。リーマン・ブラザーズの経営破綻を機に勃発した金融恐慌の真っただ中だ。生みの親であるサトシ・ナカモトは、ビットコインのジェネシスブロックに「財務大臣による二度目の救済措置が発動されるだろう」と記録している。このとき、巨大な金融機関の救済措置に税金が使われたことに対して、人々は政府や中央銀行への強い不信感を抱いていた。
金融恐慌を経て誕生したビットコインの「デジタルゴールド」としての真価に、引き続き注目していきたい。
参照ソース
- ビットコイン、5000ドル割れ──結局、現金が安全資産なのか
[CoinDesk Japan] - 新型コロナウイルス感染症パンデミック宣言を受け、世界同時株安
[仮想通貨 Watch] - 株の歴史的急落と相関強まる仮想通貨ビットコイン市場、意識されるマイナー損益分岐は
[CoinPost]
2.MakerDAOに400万ドルの損失が発生
新型コロナウイルスによる暗号通貨市場の暴落は、DeFi(分散型金融)にも大きな爪痕を残した。ステーブルコインDaiを発行するMakerDAOは、Daiの担保資産として採用しているイーサリアム(ETH)の価格が暴落したことで、約400万ドルの損失を負うことになった。
MakerDAOでは、Daiの価格を安定させるためにKeeper(キーパー)と呼ばれるシステムが、自動的に担保資産(ETHやBAT)の清算をオークション形式で行なっている。しかし、今回の暴落によりETHの取引が瞬間的に増発。Keeperによる自動清算がイーサリアムのトランザクション詰まりの影響を受け、価格を安定させるための清算を行うことができなかった。そのため、ETHのリアルタイム価格をDaiの価格に反映させることができず、ETHを無料で競り落とすことが可能な状況を発生させてしまったのだ。
MakerDAOは、この損失をカバーするためにガバナンストークンMKRを新規発行および販売することで資金調達を行う方針だ。
今回のような不測の事態は、MakerDAOに限らず全てのプロジェクトに発生し得る。第5回で紹介したbZxのアービトラージ事件然り、黎明期の産業において避けては通れない成長痛ともいえるだろう。
参照ソース
- イーサリアム前日比40%の暴落。ステーブルコインにも波及
[仮想通貨 Watch] - ビットコイン大暴落で数億ドルの「マージンコール」発生、大手仮想通貨ローン企業で
[CoinPost] - Black Thursday Response Thread
[MakerDAO Forum]
3.Libra対抗馬Celoのアライアンス同盟が始動
米シリコンバレー発のCeloが、初期プロジェクトの加盟メンバーを発表した。Celoは、2019年4月にa16zやPolychain Capitalから総額3000万ドルを調達している注目のプロジェクトだ。Facebook主導のLibraと同様、世界中に金融システムを届けることを目指している。
今回Celoの発表した「Alliance for Prosperity(A4P)」と呼ばれる同盟には、a16zやPolychain Capitalはもちろん、Coinbase VenturesやBlockchain.com、ハードウェアウォレットのLedgerをはじめとする計60以上の企業・団体が集まった。
Celoは、金融・経済全般をプロジェクトの対象領域とし、送金や人道支援、マイクロレンディングなどにおける活用を探求するとしている。また、プロジェクトはモバイルファーストを軸に置き、世界中のスマートフォン利用者にオープンな金融システムを届けることを目指すという。そのために、独自通貨Celo Gold TokenとステーブルコインCelo Dollarsの開発も進めている。
4.ブロックチェーン基盤の金融ガバナンス「BGIN」
ブロックチェーン基盤の金融ガバナンスの構築に向けた国際ネットワーク「ブロックチェーン・ガバナンス・イニシアチブ・ネットワーク」が3月10日、設立された。「Blockchain Governance Initiative Network」の頭文字を取って「BGIN(ビギン)」と呼ばれる。発起人の一人であるジョージタウン大学の松尾真一郎研究教授によると、インターネット技術の標準化を行う組織IETF(Internet Engineering Task Force)を参考に、BGINは作られたという。
BGINは、ブロックチェーン基盤の金融ガバナンス構築のため、オープンかつグローバルなコミュニケーションの場を形成し、技術文書とソースコードを通じた知識の蓄積と共通理解の醸成を目的としている。
発起人には、先述した米ジョージタウン大学研究教授の松尾真一郎氏の他に、金融庁フィンテック室長の三輪純平氏、OpenID Foundation理事長の崎村夏彦氏などをはじめとする計23人の国際色豊かな個人が名を連ねる。
参照ソース
- ブロックチェーンの標準化に向けた国際ネットワークが設立【BGIN】
[CoinDesk Japan] - ブロックチェーン・ガバナンス団体"BGIN"が発足
[仮想通貨 Watch]