イベントレポート
金融庁、仮想通貨交換業みなし業者について本登録の見通しがないまま長期化を指摘
みなし業者の経過措置について討議「仮想通貨交換業等に関する研究会」第7回
2018年10月19日 21:34
本稿では、10月19日に開催された金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」第7回のイベントレポート第2弾として「仮想通貨信用取引に係る規制の要否・内容」について、また、みなし業者に対する「経過措置のあり方」についてそれぞれ討議の内容を報告する。
なお、金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」第7回イベントレポート第1弾「金融庁、国内の仮想通貨取引約8割がデリバティブ取引、その規制の要否について議論」では、「仮想通貨デリバティブ取引に係る規制の要否・内容」についての討議内容を報告しているので、そちらも併せて読んでいただきたい。
第7回「仮想通貨交換業等に関する研究会」の議題は、仮想通貨を原資産とする新たに登場し始めている取引について、仮想通貨「デリバティブ取引」および「信用取引」に係る規制の要否など、それぞれの取引をテーマに議論を行った。また、みなし業者に対する「経過措置のあり方」についての報告も行われた。
仮想通貨信用取引を行う交換業者は2社
仮想通貨信用取引とは、顧客が業者に保証金として金銭や仮想通貨を預託し、業者指定の倍率を上限に業者から借り入れた仮想通貨を元手として売買・交換を行う取引をいう。現在、仮想通貨交換業者16社のうち2社が仮想通貨信用取引を行っている。なお、仮想通貨の売買・交換を業として行うことは資金決済法の規制対象となるが、仮想通貨信用取引に関して金融規制は設けられていないのが実情である。
仮想通貨信用取引は、元手資金(保証金)にレバレッジを効かせた取引を行うことから、仮想通貨デリバティブ取引と同様の機能やリスクを有する取引であると考えることもできるという。仮想通貨信用取引も機能やリスクを有する取引とした場合は、仮想通貨デリバティブ取引と同様に仮想通貨信用取引についても規制の対象とすることが考えられるが、この点についてはどうかという課題が挙げられた。
仮想通貨信用取引に関する議論については、ほぼ仮想通貨デリバティブ取引と同様の意見であることも明らかになった。特に、証拠金に対するレバレッジ倍率についてはいずれも高いのではないかという見解は変わらず、現在、仮想通貨デリバティブ取引におけるレバレッジ倍率最高25倍という仮想通貨交換所がある中で、一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)による自主規制案の上限を4倍とする案については評価されているものの、EUが上限2倍のいった規制であることも報告されたことから、「4倍でも高いのではないか」という意見も聞かれた。
また、仮想通貨デリバティブ取引同様に、顧客の資力に応じた取引制限をかけるべきではないかという意見も聞かれた。まだ学生であり収入がないのにも関わらず取引を行っている例も聞くというメンバーからの意見もあり、資力に関する意見は多数見受けられた。
さらには、仮想通貨に関するデリバティブ取引や信用取引については、他の金融商品と比較してボラティリティ(価格の変動性)が高いことから、より投資家の理解度を確認する必要があるのではないかという声も聞かれた。
こういった意見に対してJVCEAの奥山泰全会長は、自主規制案であるレバレッジ倍率4倍というのはあくまでも暫定的なものなので、今後「何倍が適切なのかを検討していきたい」という回答を述べた。
みなし業者に対する「経過措置のあり方」
今回の議論では、みなし業者に対する「経過措置のあり方」についても討議が行われた。仮想通貨交換業への規制導入時に、法施行前から業務を行っていた業者に対して登録されるまで業務を認めないことは、利用者に混乱や不利益を生じさせる恐れがあることから、いくつかの経過措置が設けられている。
法施行の際にすでに規制対象となる業務を行っていた者は、施行後6か月間は登録なしに当該業務を行うことができる、いわゆるみなし業者と呼ばれる、当該者を規制対象業者とみなして行為規制を適用するものとしている。また、期間内に登録の申請をした場合において、その期間が経過したときは、その申請について登録又はその拒否処分や業務廃止命令を受けるまでは、みなし業者と同様の取扱いとするという措置が行われている。
しかし、これについて登録審査が未完了のみなし業者が積極的な広告を行って事業を急拡大させたとの指摘や、多くの顧客が当該業者がみなし業者であることやその意味を認識していなかったとの指摘があるという報告が行われた。
このような指摘を踏まえ、仮に、今後、仮想通貨デリバティブ取引等において業規制を導入するような場合は、その経過措置において対象となる業者に対しては、業務内容や取り扱う仮想通貨等の追加を行わないなど、何らかの方策が考えられるのではないかという。たとえばみなし業者の間は、新規顧客の獲得を行わない、もしくは新規顧客の獲得を目的とした広告・勧誘を行わない、Webサイト等に、登録を受けていない旨や、登録拒否処分等があった場合には業務を廃止することとなる旨を表示することを義務付けるなどが考えられるのではないかという。
また、みなし業者として事業を行う期間が、見通しがないまま長期化しているとの指摘もある。これに対する何らかの対応も必要ではないかという課題も挙げられている。
みなし業者に関する議論では最初に、みなし業者はWeb上ですぐにわかるようなマークを付け、Webに訪れる者にはっきりとわかるような何らかの手段を義務付けるのはどうかという意見が挙った。また、みなし業者というくくりが顧客に当局のお墨付きであるというような勘違いを起こさせてしまっているのではないかという声も聞かれた。みなし業者の期間が長期化しないよう、事業を行える期限を定めることも考えてみてもいいのではないかという意見も挙るなど、みなし業者に対する「経過措置のあり方」については、やや厳しめの意見が多かった印象を受けた。