イベントレポート

金融庁が「仮想通貨」の呼称について議論、G20など世界的には「暗号資産」という名称に

JVCEAの名称は仮想通貨交換業協会で継続「仮想通貨交換業等に関する研究会」第9回

 本稿では、11月12日に開催された金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」第9回のイベントレポート第4弾として、「仮想通貨の呼称」について討議された会議内容を報告する。

仮想通貨の呼称について

 第9回「仮想通貨交換業等に関する研究会」は、3つ目の議題として「仮想通貨の呼称」について討議を行った。

 昨今、G20等の国際的な場において仮想通貨は「暗号資産」(crypto assets)という表現が用いられつつある。また、仮想通貨交換業者に法定通貨との誤認防止のための顧客への説明義務を課しているが、仮想通貨の呼称の使用は誤解を生みやすいとの指摘もあるということから、今回、改めて「仮想通貨」の呼称について議論する場が設けられた。国際的な動向等を踏まえ、仮想通貨の呼称を「暗号資産」に変更することも考えられるが、この点についてどのように考えるべきかという議題が挙っている。

 ちなみに当局における「仮想通貨」という呼称については、仮想通貨交換業への規制導入時、資金決済法では、FATFや諸外国の法令等で用いられていた「virtual currency」の邦訳として、また、日本国内において「仮想通貨」という名称が広く一般的に使用されていたことから、「仮想通貨」を呼称として使用することとしたという。

研究会メンバーによる意見交換

 「仮想通貨」という呼称を議論するに至ったのは、前述のように国際的な場において仮想通貨という言葉が使われなくなってきていることもあるが、研究会メンバーの中にも違和感があるという意見も少なくないようだ。あるメンバーは、「仮想通貨の登場当初は通貨として機能するといった考えもあったが、現在、あまり通貨として使われているような実態はない」という意見が印象的だった。

 しかし、「仮想通貨」を「暗号資産」と言い換えることで、「また新しいものが出てきたというような誤解を与えるのでは?」と心配をする声もあった。さまざまな事件が起きたあとに「名前を変えて新たに売り出したというようなことにしたくない」といった意見も聞かれた。

 メンバー間での意見交換が行われたあと、最後に研究会にオブザーバーとして参加する金融庁認定の仮想通貨自主規制団体である一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)会長の奥山泰全氏は、仮想通貨の呼称に関しては、法定通貨「fiat currency」ではないものという認識で「virtual currency」という総称が対外的には使われているという。法定通貨外のものという範囲が「virtual currency」、いわゆる仮想通貨だったと思っているとのこと。当時、資金決済法が制定される頃も「crypto currency」であったり「crypto assets」という言葉は使われていたが、そこの中で、仮想通貨があえて法律で定められたのは、そういう意図があると認識しているので、我々としては「仮想通貨交換業協会」のまま走らせていただきたいと考えていると意見を述べた。法定通貨外のもの「仮想通貨」であるという前提の中で、その一部に「crypto currency」「crypto assets」いわゆる「暗号通貨」「暗号資産」というものをどう考えていくのかという認識で進めさせていただきたいとした。

 なお、金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」第9回イベントレポート第1弾「金融庁、ウォレット業者・不公正な現物取引・仮想通貨の呼称・ICOに関する規制要否を討議」では、金融庁が提案をする今回の討議すべき論点および資料について報告しているので、そちらも併せて読んでいただきたい。

高橋ピョン太