イベントレポート

金融庁が仮想通貨交換業等に関する研究会報告書草案を公開、第11回会議を最終討議とする

ICOまとめや「ウォレット業務を仮想通貨カストディ業務と定義」など全10回の会議を総括

 金融庁は12月14日、霞ヶ関・中央合同庁舎第7号館にて「仮想通貨交換業等に関する研究会」の第11回会議を開催した。金融庁が事務局を務める本会議は、学識経験者と金融実務家などをメンバーに、仮想通貨交換業者などの業界団体、関係省庁をオブザーバーとし、仮想通貨交換業などをめぐる諸問題について制度的な対応を検討してきたが、前回の会議をもって仮想通貨に関する一通りの議論が交わされたのを機に、今回は「仮想通貨交換業等に関する研究会 報告書」をまとめる上で、まずは「報告書(案)」として草案がまとめられ、それを基に最終議論を行うとした。

 「報告書(案)」には、4月10日の第1回会議からこれまで10回におよぶ会議を重ねてきた討議内容が総括されており、仮想通貨交換業者を巡る課題への対応について、研究会からの報告書として提出を行うための草案として、今回、議題に挙げられた。研究会は、第11回会議を最終討議とし、草案に対して挙がった意見を反映させて、最後に研究会を統括する神田秀樹座長がまとめた上で、会議メンバーの合意を取り、最終報告書とするとした。

 草案については、今回の会議の資料として公開されているが、要約をすると仮想通貨交換業者を巡る課題への対応として、顧客財産の管理・保全の強化として受託仮想通貨の流出リスクへの対応や仮想通貨交換業者の倒産リスクへの対応などついてまとめられている。また、仮想通貨交換業者による業務の適正な遂行の確保のために、利益相反の防止や過剰な広告・勧誘への対応、自主規制規則との連携など、詳細な意見も報告されているほか、問題がある仮想通貨の取扱い方や、仮想通貨デリバティブ取引等への対応、ICOへの対応についても記載されている。

 さらに、特筆すべきは、第10回会議で討議されたウォレット業務を行う業者について、草案ではそれを仮想通貨カストディ業務と定義した点だ。ウォレット業務を行う業者は仮想通貨の売買等は行わないため仮想通貨交換業には該当しないが、顧客の仮想通貨を管理し、顧客の指図に基づき顧客が指定する先のアドレスに仮想通貨を移転させるなど、顧客の仮想通貨の流出リスク、業者の破綻リスク等、仮想通貨交換業と共通のリスクがあると考えられることから、一定の規制を設けた上で、業務の適正かつ確実な遂行を確保していく必要があると考えられるとし、その対応についてまとめている。今回、証券取引において有価証券投資の際に、証券の保管、管理を行う業務のことをカストディ業務と言うことから、それにならいウォレット業務については、仮想通貨カストディ業務と呼称についても定義をした。

 また、国際的な議論の場において、仮想通貨は「crypto-asset」(「暗号資産」)との表現が用いられつつあることから、こうした国際的な動向等を踏まえ、法令上、「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に変更することが考えられるといった意見についても最後に記載されている。

 なお、本稿は第11回会議開催の要約として報告した。今回の討議内容や資料の解説については、別稿にて報告する予定であるため、併せて一読いただきたい。

高橋ピョン太