イベントレポート

FATF新規制「トラベルルール」VASP間での個人情報の共有手段をV20で議論

GDPRに対応し非中央集権制を保った手法を提案=JBA加納代表

株式会社bitFlyer Blockchain・代表取締役の加納裕三氏

一般社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)は7月9日、定例会議を開催した。同協会代表理事へ新しく就任した株式会社bitFlyer Blockchain・代表取締役の加納裕三氏が登壇し、6月末に大阪で開催されたG20と同日開催のV20での会合についてまとめた。V20では各国から参加した各人がFATFの新規制にどのように対応していくかを提案し、活発に議論が行われた。JBAの代表として参加した加納氏も「トラベルルール」に対する手法を提案し、好意的に受け入れられたことなどを語った。

V20は6月28日から29日にかけて、大阪で開催されたG20の公認会合として開催された。頭文字はバーチャルアセット(Virtual Asset)を意味する。FATF(金融活動作業部会)が定義する各国の仮想通貨関連事業者VASP(Virtual Asset Service Provider)らが一堂に会し、FATFによる新たな規制について、今後どうやってルールを守っていくかを議論した。意思決定の場というよりは、国際的な検討会のような会合となる。

FATFは、マネーロンダリング(資金洗浄)およびテロ資金供与対策(AML/CFT)に対する国際的な勧告(FATF規制基準)の策定および見直しに取り組む。各国の規制当局に対して法整備などのレギュレーションを作る機関である。6月21日に新たな規制として、VASPにおける仮想通貨の送受金に際して、送り主と受取人の個人情報を記録すること(トラベルルール)などが追加されている。

FATFの新規制概要

V20では、複数のグループに分かれてトラベルルールを含むFATFの新規制を遵守する方法について議論した。ゼロ知識証明を用いて個人情報をやり取りする手法などが提案されたという。加納氏は個人情報をハッシュデータに置き換え、受け手側のVASPが送り主の個人情報について照合する手法を提案した。データの中に送り主が利用したVASPを特定する記号を入れることで、送り主の所属も明確にすることができる。この手法はヨーロッパのデータ保護規則GDPRとFATFの新規制の双方に対応するもので、提案時には好意的に受け取られたという。

トラベルルールの遵守は、個人情報を管理する中央機関を設置するなど、中央集権的な手法を取れば解決することは簡単だ。しかし、非中央集権性を維持したままその解決策を模索することに意義がある。加納氏は「VASPを含め世界中の人が一つになって問題を解決し、よりよい業界を作っていくことが必要だ」と述べ、今後も各国と協調して積極的に対応を進めていく姿勢を示した。

日下 弘樹